グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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米国の医療保険改革の陰

 オバマ大統領の歴史的な医療改革法案の下院通過は、数千万人の米国の無保
険者が大きく減る可能性があるという意味でも、オバマ大統領のリーダーシッ
プが発揮されたという意味でも、非常に良いことだったと思います。

 ただし、医療改革に反対した人々の意見の中にも、傾聴すべき指摘がありま
す。今日はそのことを書いてみます。

 米国の医療制度の問題が国民皆保険になれば問題がすべて解決というわけに
いかないのは、米国の医療費がなぜバカ高いのかという問題が残るからです。

 米国では医療費がGDPの16%もかかっていて、これは世界でも突出して高い数
字です。OECDの2007年の統計によれば、2位のフランスが11%、日本は主要国
では最も低い部類で8.1%です。

 米国に在住した経験のある知人からは、驚くほど高い医療保険のことや、盲
腸の手術で200万円以上の費用がかかる話をよく聞いていましたが、統計上の
数字でも明確にそれが反映されているわけです。

 当然一人当たりの医療費も世界で突出して高いので、これが大量の無保険者
を生む大きな要因になっています。

 どうしてこれほど医療費が高いのか?という問いへの答えの一つは、他の
国々に自由競争を説く米国なのに自国の医薬品については製薬会社の強力なロ
ビー活動もあり、ほとんど競争にさらされていないからだそうです。

 薬品を買うには隣のカナダまで出かけていった方が遥かに安いのだそうです。

 保険会社も独占的な地位を利用して、値上げを続けて来ました。

 医療改革に反対する共和党の議員の一部は、過去100年の医療に対する国家
の介入が積み重なって独占・寡占を許し、今のような異常に高い料金が形成さ
れたという主張をしています。

 彼らは、これ以上の医療費拡大をする前に、医療のコストを低下させて、国
の助けがなくてもより多くの人々が医療を受けられるようにすることが先決だ
というのです。

 しかし今回の医療保険改革によって、製薬会社はさらに売り上げを伸ばすこ
とが見込まれてホクホク顔のようです。それからオバマ大統領は高い保険料を
値下げさせたいと期待しているようですが、実際には一人あたり平均で10%以上
の値上げになるのではないかとの見方もあります。

 医療保険改革はただでさえ強力なロビー活動で稼いでいる医療関連業界を更
に太らせることになりかねないわけです。

 こうして見ると、米国の医療の問題は、金融界並みの強い政治力を発揮して
異常に高い医療費を国民に押し付けている医療業界の問題と、無保険者の問題
の両方が非常に重要な問題であったのです。

 今回の改革で後者の問題は改善されることは期待できそうですが、一方で巨
額の税金がさらに医療業界流入にするという事態になりかねません。

 米国という国家は金融、医療、軍需、エネルギーの4つの産業に牛耳られて
いるという指摘がありますが、その状況をますます悪化させることにならなけ
ればよいのですが。

 というわけでオバマ大統領のリーダーシップは素直に評価したいのですが、
これはなかなか複雑な問題で、もう少しじっくりと様子を見ないといけないよ
うです。
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