グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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BISからの新たな衝撃

 先月の末にBIS(国際決済銀行)がサイトで公表したレポートはかなりショッ
キングなものでした。

 レポートの題名は“The future of public debt: prospects and implication”
です。

 それは、欧州諸国と米国と日本の将来の公的債務残高の対GDP比率を、各国
それぞれ3通りのシナリオで予想されているグラフです。

 それによれば、先進国の公的債務残高は今後すさまじい勢いで増加を続け、
今後10年で日本はGDPの300%、英国は200%を超え、米国やフランスなど多く
の国で150%を突破することが予想されます。

 ちなみに、日本の債務は計算上の二重計上で過大評価されている一方で、米
国の債務レベルは公式の数字よりずっと巨額であるという試算があります。

 さて、問題が深刻なのは、この財政悪化傾向が一時的なものでなく、20年、
30年年後までその勢いで増え続け、仮に巨額の債券発行によって債券調達コス
トが跳ね上がればさらに赤字は醜い姿になってしまうことです。

 このような赤字の最大の要因は、高齢化に伴う財政支出の増加であり、一部
の国では、もし歳出削減や社会福祉費の増加を抑制することが出来れば財政悪
化を少し穏やかなものに出来る可能性ですが、日本や米国、英国、フランス、
スペインなどはそのような対応では全く不十分であるとしています。

 ご興味がある方は実際にBISのHPでレポートを探してご覧ください。時間の
ない方は能書きの部分は読まずに、レポート後半のグラフが沢山あるページだ
け見るだけでも問題の深刻さはすぐに理解できます。
 
 このグラフをみて分かることは、高齢化の進行とそれ自体が一因である経済
成長の低迷という構図に関して、日本はある意味で世界に10年か20年ほど先
駆けていたということです。

 これまでの国の財政や経済運営、あるいは世の中の仕組みは、人口ピラミッ
ドの形状に大きな変化がなく、それなりに成長を続けることを前提としていま
す。

 政治家や経済学者がいくら「成長戦略」や「成長路線」について口角泡を飛
ばしながら叫んだり、日銀を叩いたりしてみせても、若者の比率が多かった時
代のような活力が容易には戻らないことを、われわれは十分経験してきました

 この構造が、これから先進国全般に広がって行くと考えると、少しぞっとす
るところがあります。

 われわれは「経済成長」という幻想を捨てて、現実を見直すべき時が来てい
るのかも知れません。

 このBISの予想はあくまで予想であり、人間の将来予想能力はかなり怪しい
のですが、一方で豊かな生活環境にどっぷり漬かってしまった人間の危機感知
能力はもっと大きな問題がありそうです。

 そういう意味で、今回のBISのレポートは、醜い現実を直視した重大な警告
であると言えるのではないでしょうか。
 
 この話題は「世界潮流」4月12日号で取り上げられています。
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