グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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SECのゴールドマン訴追

 先週、米証券取引委員会(SEC)はようやく重い腰を上げて、サブプライム商
品の販売に関してゴールドマン(GS)の従業員を訴追しました。

 80年代から90年代初めに700以上のS&L(貯蓄貸付組合)が倒産した危機の
場合は多くのS&L経営者が投獄させられました。しかし今回の危機の方がはる
かに大きな経済への損失でありにもかかわらず、ほとんど誰も罪に問われてい
ません。

 まず、4月16日のSECのプレス・リリースから事実関係を簡単に整理してみ
ます。

 問題の取引は2007年4月にGSのFabrice Tourre氏が中心になって組成した
アバカス2007-AC1という、サブプライム住宅ローンを寄せ集めて作ったCDO(債
務担保証券)です。(実際はシンセティックCDOと呼ばれるタイプです)。

 当時、ポールソンという大手のヘッジ・ファンドは、サブプライム・ローン
の空売りに興味を持っていました。(ちなみにこのポールソン社は、サブプライ
ム危機によって莫大な利益を上げたことで非常に有名なファンドです)。

 SECの指摘は以下のようなものです。このGSの従業員はポールソン社が値下
がりすると信じて選定した住宅ローンのプール(集合)をわざわざ使ってCDO
を組成しました。

 一方投資家には第三者が選定したような情報を与えるだけで、ポールソン社
の空売りの意向とプール選定のプロセスについてCDOの投資家に知らせません
でした。(実際はもう少し複雑な部分もあるのですがここでは省略します)。

 そして、今回の訴追は、投資家に虚偽の表示(misstate)と重要な事実の隠
匿をしたという容疑で訴追したのです。

 少し解説しますと、サブプライム・ローンを売りたい人(=ポールソン社)
と、買いたい人(=CDOの投資家)がいて、GSはその両者を仲介することによ
って、サブプライム・ローンのリスクを取ることなく、(恐らく)巨額の手数料
を稼いでいたようです。

 今回問題になっているのは、GSが有力なヘッジ・ファンドとぐるになって、
腐りかけたサブプライム・ローンを、あたかもヒカピカの商品のように思わせ
て買わせ損失を与えたということです。

 このような取引をする場合、本来証券会社は中立的な立場で利益相反を避け
なければならないにもかかわらず、重要な情報を投資家に偽ったり隠したりし
て、投資家に被害を与えたという容疑です。

 実際問題とすれば、「客を騙して腐れポジションを引き取らせる」行為はウォ
ール街の証券会社も、日本の証券会社も同様にほとんど日常茶飯事と言っても
よいのではないでしょうか。

 ただし、その行為の規模や悪質さに関しては多少の違いもあるかもしれませ
ん。

 今回のアクションは、「投資家保護」というSECの使命を果たすという意味で
は評価してもよいと思われますが、いくつか疑問や懸念があります。

 今回訴追されたFabric Tourreは30そこそこのバイス・プレジデントですが、
この肩書きは日本の大手企業では「係長」か「主任」ぐらいのポジションです。
要は「ザコ」なのです。

 こんなザコの行為を追及することで、もっと大きな不正を見逃してしまうこ
とにならないか、というのが疑問です。

 それから今回のケースは、スキームはやや複雑な部分もあり、SECの訴追自体
がやや正確さに欠けるという指摘も出ています。

 これできちんと立証できるかどうかが懸念です。

 是非とも、単なるトカゲの尻尾切りに終わらせてほしくないと思います。
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