グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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アメリカは変われるのか?(TPP問題に関連して)

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 新年早々なのですが、また筆者の本業が多忙になりつつあり、しばらくの間はブログの更新が不規則になりそうなので、ご連絡しておきます。

 さて、年初に見たブルームバーグ(web版)に印象深いコラムが有りました。数年前まで競ってウォール街への就職を希望していた米国東海岸アイビーリーグの名門校の学生たちの間でウォール街への反乱が起こっているというのです。(「1%層が怒れる若者を説き伏せるための戦略的提言-ルイス」ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LWY2YI1A1I4H01.html

 数年前までウォール街の採用担当者達が簡単に手なずけることが出来た若者達の中から、今や金融機関の悪事のリストを読み上げるものや、「金融機関で働くことが名誉なこと」と言うこれまでのカルチャーを変えると宣言する若者達が現れたというのです。

 99%の人々の反乱は昨年夏からOWS運動として広がったわけですが、この記事によればこれまで「1%の富裕層の卵」だった若者達からも、あまり行儀のよいやり方でなく富を独占する1%層への攻撃が始まったわけです。

 50年代、60年代に日本人が憧れを抱き続けたアメリカの豊かな中産階級がどうして99%の「非裕福層」に落ちぶれてしまったのか。9.11事件を目の当たりにしたことで米国野村証券の職を辞してジャーナリストになった堤未果さんが2006年に岩波新書から出した「ルポ 貧困大国アメリカ」はその問題を考える上で大変に参考になる本です。

 この本は2006年に出版されたものですが、そこで描かれているのは、例えば、90年代に締結されたTPPの前身であるNAFTA(北米自由貿易協定)によって農地と職を奪われたメキシコのトウモロコシ農家の人々の末路です。彼らは政府の補助金を得ているアメリカ産トウモロコシによって農地と職を奪われ、その後、職を求めてアメリカに密入国すると言う運命を辿りました。

アメリカのポップコーン工場で働く密入国したメキシコ農民の娘が自分の立場を皮肉って、次のように発言します。「だってメキシコで私の父親を失業に追い込んだのはアメリカのトウモロコシなんですよ、それで今はその娘がポップコーン工場の床をモップがけしているのですから」と。

こうした貧困層の若者や、高騰を続ける学費により学生ローンが払いきれなくなった若者たちが、そうした厳しい状況から脱出するために最終的に行きつく先は軍隊です。彼らはイラクに送られ、それまでとはまた別の厳しい現実に直面することになります。

これはTPP問題を考える上でも非常に重要なのですが、アメリカではほとんどあらゆる分野で「自由化」や「効率化」という名のもとに、民間企業の利益が優先されるシステムが出来上がっています。

医療の自由化によって保険会社は大きな利益を得る一方で、医療費は跳ね上がり一部の大都市では盲腸の手術に200万円以上かかり、病気によって中産階級層の人が簡単に破産に追いやられるケースもあります。その一方で、株式会社化され極度な利益重視のスタンスをとる病院経営によって現場の医師や看護婦などは疲弊し精神的にも肉体的にも追い込まれ、医療過誤も急増します。

アメリカでは戦争遂行も民営化され、イラク戦争において、ハリバートン社はアメリカ人だけでなく第三国からの出稼ぎ労働者を大量にイラクに送り込み潤いました。いわゆる戦争ビジネスです。

大企業が、ロビー活動によって自己の利益に都合のよいように、パートナー国との間のルールを変えてしまおうというTPPは、堤氏がレポートしているようなアメリカを歪んだ社会構造に変えて来た原動力をそのまま「パ-トナー国」に輸出・拡大しようという戦略にしか見えません。


しかしながら、最初にご紹介したブルームバーグのコラムは、アメリカの内部で企業はどんな手段を使っても利益を上げること優先するという、過去数十年の文化に明確な変化が起こり始めている兆しがあることを示しているのかもしれません。

近年のアメリカのビジネス中心の路線が多くの人々の生活をこれほど破壊するのであれば、大きな変化が起こるのは必然と言えるかも知れません。

 昨年はこうした大きな変化というか、人々の心の化学変化が非常に明確になった年でした。そして、今年はその流れが一段と大きなものとなるのでしょう。

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