グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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米住宅金融の手続き不備問題

 2年前に、世界中の経済を大混乱に導いた直接的な原因は、米国の住宅ローン
市場に蔓延した、目先の手数料に目がくらんだずさんなローンの組成でした。

 モーゲージ・オリジネーターと呼ばれる住宅ローンの最初の貸し手は、すぐ
に証券化商品の担保資産として、そのローンを売却してしまうために、いい加
減なローンを量産してしまったのです。

 たとえば、借り手の状態をきちんと把握しなかったり、ひどい場合はウソを
ついて書類の形式を整えたり、そういった輩達が、あちこちにはびこっていた
わけです。

 このような、米国の住宅ローンのいい加減な組成が、最初に表面化したのは
2007年夏の、パリバ・ショックと呼ばれる混乱ですが、それから3年経った今
でも、2005年から2007年の住宅ブームの負の遺産が、亡霊のように影を落とし
ています。

 ずさんな証券化によって造成された住宅バブルがはじけた今、米国の住宅市
場は、記録的な「差し押さえ」ブームに転じましたが、バブル期のモーゲージ
関係者の仕事ぶりは事務的処理という面でもずさんなもので、差し押さえに大
きな支障が出始めています。

 今月に入って、差し押さえ手続きに不備があるのではないかという疑惑が急
に拡大し、一部の金融機関が差し押さえを自主的に停止したり、全面的に停止
するように政府に要請する動きがあったりしました。この疑惑はさらに広がり
を見せています。
 
 NYタイムズ紙などの報道によれば、手続きの不備には大きく分けると2つの
パターンがあるようです。一つは、ローンの組成から転売に至る手続きの間に
どこかで問題があり、不完全な書類や、書類自体が紛失してしまったというも
のです。
 
 米国にはMERS(Mortgage Electronic Registration System)という、住宅所
有記録の追跡(トラック)サービスを行う最大規模の会社がありますが、記録
を紛失するなどの不備が報道されています。
 
 もう一つのパターンは、差し押さえ手続き自体の不備で、本来手続きは州ご
とに異なるのに、その違いをロクに確認しないで盲目的にサインをしまくった
というものです。こちらはロボットのようにサインだけする担当者を雇って手
続きを処理したという意味で“Robo-Signing”問題と呼ばれています。
 
 この米住宅ローン市場のあらたな火種は、少しずつ広がりを見せています。
先日、世界最大の債券ファンドであるピムコは、バンク・オブ・アメリカなど
に対し、書類の不備を理由に証券化商品の買取を要請しました。

 Robo-Signingの問題に関しては、解決は時間の問題であると見る楽観的な向
きもあるようですが、米住宅金融に関する最近のあらたな懸念は注意してもよ
いでしょう。

 思い出せば、サブプライム問題が表面化し始めた時、バーナンキFRB議長な
どはリーマン・ショックが起こるまでは「大した問題ではない」と事態の過小
評価を続けて、危機への初動が大きく遅れました。

 米金融当局は「インフレ・ターゲット」という魔法の杖で、問題を一気に解
決してしまおうなどと考えるより、経済のミクロな部分に蔓延した「ずさんさ」
という病巣を地道に取り除くことも大事なような気がします。
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