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医療制度改革にまで手をつける英キャメロン政権

  英国の保守党・自民党連立政権のキャメロン首相は、教育費の大幅削減に続いて、医療費の大幅カットに着手しました。

 先日、キャメロン首相は「自由裁量」と「競争原理」を導入することによって、英国の医療制度を改革(という名目の歳出カット)すると発言しています。実は英国の医療はサッチャー政権以来、規制緩和や市場原理の導入などさまざまな「改革」を繰り返し、一時は医療制度崩壊寸前の状況に追い込まれた経験があります。

 今回の、キャメロン首相の「競争原理」というキャッチフレーズに対して、サッチャー、メージャーと続いた保守党政権時代に大きく質の低下した英国のNHS(National Health Service)制度が今度こそは本当に崩壊してしまうのではないか、といった懸念の声が早くも聞こえてきています。

 医療費削減の話をする前に、まず英国の医療制度について簡単に説明しましょう。英国の医療制度は、国民が無料で医療を受けられるNHSと、全額自己負担のプライベート医療で成り立っていて、さらに無料のチャリティ医療もあります。

 国民が公平に医療を受ける為に設立されたNHS制度は当然国の負担が大きく、1970年代には「英国病」と言われた当時の財政を大きく圧迫する要因の一つになりました。

 このHNSにサッチャー政権が大きなメスを入れました。それまでは、HNSの仕事に従事する医師はプライベート医療に関わることが制限されていましたが、サッチャー首相は、医師が自由にHNSとプライベート医療の両方を出来るように「規制緩和」を行ったのです。

 この政策の持つ意味は当初は医師や国民には十分に理解されていなかったようですが、実際には英国の医療に甚大な影響を及ぼすことになりました。その後もサッチャー政権と1990年にそのあとを継いだメージャー政権はさらに新自由主義的な改革を続けました。

 国の税金で賄っているHNSのコスト削減の為、プライベート医療費に対する税制優遇などを行ったうえに、NHSには「内部市場化システム」と呼ばれる制度を導入して、医療の現場を「金の尺度」で染め上げるような策を取ったのです。

その結果、政府の歳出は減ったものの、NHSの医師たちの待遇は大きく悪化し、結果として医師や看護師や病床の大幅な不足を招き、医療の現場は滅茶苦茶に混乱状態して、国民にとっては大幅な医療の質の低下となりました。当時の英国の医療は先進国最低と言われるような状況でした。

 筆者は、90年代前半からロンドン駐在生活をしていましたが、この頃の英国の医療の惨状は同僚から、しばしば聞かされました。バカ高い費用を払ってプライベート医療を受けることが出来る一部の人間は良質な医療を迅速に受けられるのに対し、大多数の国民が使うタダのNHSは医師や病床不足で、かなりの重い病気やケガでも迅速で適切な医療受けられない事態が、しばしば発生したようです。(すみません、筆者も会社の支出でプライベート医療を受けていました。)

 1997年に労働党のブレア政権が誕生すると、軌道修正が図られ、医療の質も改善の方向に向かったようですが、現在、再び時計の針は逆に回り始めたようです。もし今回のキャメロン政権の策が現実のものとなれば、お金に余裕のない英国民は、教育も医療もまともに受けることが出来ないと言う厳しい状況に追いやられてしまうのでしょう。

 現在英国で起こりつつあることは、けして他人ごとではありません。日本の財政の惨状を考えれば、現在の英国は数年後の日本の姿かも知れません。
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