グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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中東のオイルマネーは何処に行く?

 動乱が続くリビアの映像から垣間見えるリビアの都市の暮らしぶりは、先日まで動乱が続いていたエジプトのそれとさして違いがないように見えます。

 しかしながら、リビアとエジプトの経済規模の統計を比較してみると驚かされます。人口はエジプト7千5百万人に対し、リビアはたったの6百万人でエジプトの1/12に過ぎません。それに対してリビアのGDPはエジプトの55%もあり、経済規模はさして違いが無いのです。

 リビアの一人当たりGDPは1万4千ドル強(2008年)で原油を産出しないエジプトの7倍あり、金持ちのイメージが強いサウジの3/4もあります。

 リビアは、人口が少なく原油産出量が多い(世界第12位)という意味では、本来エジプトよりはむしろ金ピカの街ドバイで有名なUAEに近いはずなのです。(一人当たりの産油量ではUAEの4割強)。しかし、街並みを垣間見る限りは、ドバイとトリポリには大きな違いがあります。

 実際、リビアの外貨準備は1,400億ドル(11兆円超)と言われますが、これは一人あたり2万3千ドルで、一人当たりでは日本の3倍近い巨額な金額です。

 リビア政府(すなわちカダフィ一族)は巨額な資産を海外に持ち、米国はリビア政府関係の海外資産300億ドルを凍結したと発表、英国も推定300億ユーロ(約410億ドル)の資産、さらにスイスやオーストリアも資産凍結に動いています。

 トリポリの街並みがドバイと違うのは、この辺に事情があるようです。原油輸出で稼いだ外貨のほとんどを、独裁者が海外資産や外貨準備という形で保有し、さらに一人1日場合によっては何万ドルもする傭兵や美女達を雇うことに費やされて、自国の経済の発展のためにはほとんど使われてこなかったということなのでしょう。

 リビアは極端なケースなのかも知れませんが、中東のオイルマネーが一部の特権階級の(事実上の)個人資産として海外の金融資産や秘密口座、さらには不動産に流れてきたことは、程度の差こそあれ各国共通の事です。

 さて、今回の一連の中東の動乱の結果どうなるかはまだまだ不透明なのでしょうが、国民が自分たちの権利に目覚めたとすれば、一部の特権階級の資産として海外に流失し続けてきたお金の流れには大きな変調が起きるのではないでしょうか。

 実際、サウジやバーレーン政府は国民の歓心を買うために必死のバラマキ政策に乗り出し始めました。こうした動きは一時的なものでは済まないでしょう。

 そうであるとすれば、中長期的には、中東のオイルマネーは海外の金融・不動産市場などマネーゲームの場に流れるのではなく、むしろ国内のインフラ整備など、モノを中心に流れるようになるのかもしれません。

 少し気が早いかもしれませんが、これは国際金融市場にとっても、商品市場にとっても大きな変化になるのかもしれません。つまり、金融市場からオイルマネーが引き上げられて、個人消費や社会インフラ整備に回るということです。

 いずれにしても、虐げられていた人々の生活水準は改善し、食糧や商品などに対する需要はますます高まっていくのではないでしょうか。
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ブラジル経済アップデート

 1月1日、ブラジルで初めて女性として大統領選挙に勝利したジルマ・ルセフ氏が就任しました。ブラジル経済は、かつてない好調さを維持していて、昨年の成長率は8%近くになったと見込まれています。

ブラジル経済は、BRICs諸国の中では輸出に対する依存が低く、輸出はGDPの10%程度ですが、拡大する中産階級を中心とした堅調な個人消費などの内需が成長をけん引しているのです。

 コーヒー豆の市況が13年ぶりの高値を付けて話題を呼んでいますが、これまでブラジル産のコーヒーはほとんど輸出用であったのが、最近はブラジル国内での消費が急増している事なども影響しているようです。

内需拡大によって輸入が前年比二桁の伸びとなっても、商品価格の高止まりなどによって輸出も順調に伸びており、なんとか貿易黒字を維持しています。

その結果、かつてはブラジルの治療不能の持病と思われていた経常赤字も抑制された水準を維持しており、現在GDPの2%程度です。

  インフレ率は5%台ですが、政策金利はかつてのインフレ体質に戻る懸念などから現在10.75%もあり、更に引き上げられる見込みです。好調な経済と高い政策金利、それに抑制された経常赤字という好ましい環境に引き寄せられ、日本の個人投資家などからの大量の投資資金が流入しています。日本の個人のブラジルの金融商品に対する投資額は累計で6兆円を超えるそうです。
ブラジル政策金利
ブラジルの政策金利:ブルームバーグより

 このような資金流入の結果、ブラジル・レアルの相場も堅調に推移していて、現在世界で最も強い通貨の一つである円に対しても、2009年大幅に上昇したあと、昨年一年間1レアル50円前後で比較的安定して推移しています 

 このような良好な経済状況ですが、ルセフ新大統領は、レアルが強くなり過ぎることの抑制や、5%以上あって他の主要国に比べて高い実質金利(インフレ率調整後の金利)を2%程度まで引き下げることに言及するなど、浮かれていない様子です。

 そして、早速就任直後の先週、「レアル高を容認しない」として、ブラジル国内の金融機関による投機的なレアル買の抑制策を打ち出しました。最近ブラジル国内の銀行は、ドル売り(ドル・キャリー)ポジションを急激に積み増して、ポジションの総額が168億ドルにも達したそうですが、今後はそういった投機的なポジションに対して60%の準備預金を積むことを義務付けるというのです。

 今回の政策は短期的なレアル投機には打撃を与えるかも知れませんが、長期的な視点では過度なスペキュレーションを抑制するという意味では、歓迎すべきものであり、ブラジルの投信を長期投資として買っている個人には逆に朗報といえるのかもしれません。

 先日、日産自動車はデトロイトのモーターショー参加を取りやめて、新興国のモーターショーに重点を置くと発表しました。世界の自動車販売のなかでBRICs諸国のシェアは35%程度に達していて、今後はさらにその割合が増加する見込みです。

 好調なBRICsのなかでも中国にはいろいろ心配なことが多いのですが、ブラジルのような国の存在によって、世界経済全体への懸念は幾分和らげられそうに思えます。

ブラジルの大統領選挙

アフリカ諸国の目覚ましい発展

英エコノミスト誌に掲載された、アフリカ諸国の最近のGDP成長率と、今後の見通しです。
アフリカの過去10年の成長率は既にアジアのそれに匹敵し、IMFの今後5年間の成長率予想では、世界のトップ10の高成長国のうち7つはアフリカであるそうです。

高い経済成長は、新興国全体の傾向で中国だけの現象ではないのです。

アフリカGDP
図と表は英エコノミスト誌のもの

ブラジルの大統領選挙

 
 最近は世界中で、いろいろな出来事が次々に起こり、それらのニュースの中
に埋もれてしまった感もありますが、ブラジルで初めての女性大統領が選出さ
れました。

 次の大統領になることが決まったのは現ルーラ政権で官房長官を務めていた
ジマル・ルセフ氏ですが、ルーラ大統領の人気と知名度が高すぎるのか、各国
のメディアの報道では、あたかもルーラ氏自身が選挙に勝ったかのようにルー
ラ氏の名前ばかりが目立ちます。

 確かに、ルーラ大統領は「ブラジル史上最良の大統領」という評価が定着し
つつあります。ルーラ大統領の在任8年は平均で5%を超える成長を記録して、
特に今年は8%を超える成長率が見込まれています。
 
 さらに重要なことは、貧しい家庭に育ちかつてはバリバリの左翼であったル
ーラ大統領が、生活費補助や最低賃金の引き上げなどの施策によって貧富の差
の拡大に歯止めをかけながら、高い経済成長を維持して来たことです。

 社会福祉を充実させながら、企業活動や海外からの投資の活力も促進したこ
とがルーラ政権の人気の秘密です。こういった事情があるのでルセフ氏の大統
領選挙での圧勝は、「ルーラ氏から後継者に指名されたから」という理由が大き
かったようです。

 しかしながら、ルセフ氏はまだあまり知られていないだけで、なかなか興味
深い人物であるようです。少し前の英エコノミスト誌は、ルセフ氏は60年代に
はマルクス革命主義者で、70年代には当時の軍事政権に拷問の上に投獄された
経験もあると書いています。ルーラ政権のエネルギー相と官房長官時代は、非
常に有能である一方で、その短気さも(悪)名高かったそうです。

 非常に強い意志を持つルセフ氏は、ブラジルでは「鉄の女」と呼ばれルーラ
大統領は「彼女は世界を驚かせるだろう」と語りました。とはいえ、これまで
は実務的な役割が多かったルセフ氏にとっては、ルーラ氏がもつ交渉力や折衝
力といった経験は乏しく、手腕は未知数と考えられています。

 ルセフ氏は当選祝賀の集会でルーラ政権のあとを継ぎ「貧困撲滅に総力をか
ける」と発言しています。

 近年の中国、インド、ブラジルなどの新興国の台頭は、本当に力強くなって
いますが、貧富の差の拡大や特権階級による寡占強化という矛盾を拡大させる
中国に対して、その差を縮小させながら成長するブラジル左派政権のスタンス
とのコントラストは鮮明です。

 個人的には、ブラジル型の成長路線の方が、長期的に持続可能であるように
思えて期待したいところです。ルセフ氏は果たしてその期待にこたえてくれる
のかどうか、大いに見ものです。

 いずれにしても、日本人や日本企業は、もう少しブラジルに注目してもよい
かもしれません。

インド経済の潜在力

 インド経済は好調な成長を続けています。先月発表された今年第2四半期の
GDPは前年同期比8.8%という高水準で、今年通年でも8.5%の成長が見込まれま
す。サービス業などの内需が好調な上、製造業も高い水準の伸びを維持してい
るからです。

 このように、中国にも引けを取らない成長をしているインドなのですが、先
日テレビで興味深い報道を見ました。インドは世界有数の穀物生産国であるに
もかかわらず、生産した穀物を流通させるインフラが整備されていないために、
収穫した穀物の1割は人々に売る前に腐っているというのです。

 雨風を防ぐ程度の倉庫があれば、これほど無駄にすることはないのに、穀物
が外に野ざらしにされているために、簡単に腐ってしまうそうです。

 成長著しいインドですが、一人当たりの生活水準は依然としてかなり低く、
国民の25%以上が貧困水準以下の生活をしている一方で、毎年大量の食料が流通
できずに廃棄されていくわけです。

 これは、巨額の財政支出で過剰なほどのインフラ整備を行う中国とは対照的
な状況であると言えるかもしれません。おそらく、政治的にも文化的にも極め
て集団主義的な中国に対して、インドの個人主義的な色彩が強い風土が大きく
影響しているのでしょう。

 そういえば、何年か前に、バンガロールで行われたサッカー日本代表のアジ
ア・カップ予選の試合が、停電のために2度も中断したことがありました。い
まどき、こんな珍事はめったにお目にかかれません。

 こんなにひどいインフラなのに、高い成長率を維持していることは、逆説的
ですが、なかなか大したものです。

 インドの弱い政府の財務基盤と弱い政治的指導力、その結果としてインフラ
がいつまでも脆弱であるにもかかわらず、順調な経済成長を遂げているという
ことは、それだけ民間部門が活力に溢れているともいえます。

 インド経済を成長させている力が、政府の政策と直接関係ない草の根の民間
部門の強さであるという意味で、インドの資本主義は中国の不思議な中央集権
的な資本主義より安定性は高いのかもしれません。

 さらに、インド経済は輸出に依存していないという点においても、海外要因
や各国の政策による影響を受けにくいという強みもあります。

 もったいない穀物の状況などに分かる通り、貧弱なインフラによって、イン
ド経済のパフォーマンスは大いに阻害されているようです。ただ、逆にいえば
もう少しインフラさえ整えば、経済はさらに飛躍的に伸びる可能性があるよう
にも思われ、その潜在力は実は中国以上という見方もあります。

  日本企業もこのことに気がつきはじめたのか、2008年度は単年ですが日本
企業のアジア向け直接投資の相手として、インドが初めて中国を抜きました。

 さて、最近中国が、世界の他の国々と摩擦を起こすようになって、中国とイ
ンドのコントラストが、より鮮明になってきた気がします。まだまだ無駄が多
い民主主義国家のインドと、効率的な独裁国家の中国、10年後に、両国がどの
ような成長軌道をたどったのかを振り返ってみることが楽しみです。

ワールドカップ後の南アフリカ

 サッカー・ワールドカップの決勝が行われたのは、今から2カ月ちょっと前
の事ですが、随分昔の出来事のような気がします。

 大会の予想以上の成功という陶酔感のなかで、南アの経済も前途洋々である
かのような期待が浮かびかけましたが、現実はそれほど甘いものではありませ
んでした。実際には、大会開催によって押さえられていた南アの潜在的な問題
が、次々に爆発するような展開になっています。

 移民に職を奪われた(と思っている)人々による移民襲撃の再開や、公務員
のストライキはある程度予想されていた事態ではありますが、病院職員のスト
ライキによって、出産に対応してもらえなかった新生児や、必要な治療が受け
られなかった患者が亡くなるようなケースまで出てきているようです。

 産業界でストライキの影響を強く受けているのは自動車業界で、トヨタやフ
ォルクスワーゲン、GMといったメーカーは、ストによる操業停止に見舞われ10%
の賃上げ案を示していますが、南アの労働者たちはまだ必ずしも満足していな
いようです

 英FT紙は「こんなペースで賃上げが続くならば、長い目で見れば南アでの自
動車生産は難しくなるかもしれない」という業界関係者の声を紹介しています。

 また最近南ア政府は資源大手アングロ・アメリカ社や英国のプラチナ採掘の
ロンミン社などの鉱山資源会社の採掘権の一部をはく奪する一方で、黒人政権
の親族会社には採掘権が与えられていたことが判明するなど、権益に対する不
透明性が高まってきているようです。

 ストや、移民襲撃の背景には、国全体では順調な経済成長を続けている一方
で、腐敗体質もあって富が一部の人々にしか行き渡らないという不満が、根底
にあるようです。最近の鉱山権益の問題も、「政治腐敗」の悪化を示すものでな
ければ良いのですが。

 さて、先日、南アの準備銀行は、政策金利を6.5%から6.0%に引き下げました。
ストによる賃上げ圧力はあるものの、目先の物価が想定以上に落ち着いている
ことが利下げの理由です。

 また、鉱業や自動車産業は困難に直面しているものの、中産階級層の拡大に
伴って小売産業などは好調な業績が続いているなど、経済の明るい側面もあり
ます。

 「虹の国」南アが本当に「虹色の未来」を実現していくのかどうか、今後数
年間の歩みが非常に重要であるような気がします。

ブラジルの利上げ

 先週21日、ブラジルの中央銀行が利上げを行いました。4月、6月の会合に
続いて3回連続の利上げで、政策金利を10.75%となりました。

 過去2回は、0.75%ずつの引き上げだったのですが、今回は予想に反して、や
や小幅の0.5%の利上げでした。

 一連の利上げの背景には、インフレ懸念があったのですが、実際のインフレ
率は比較的落ち着いているので状況なので、今回は小幅な利上げにとどまった
ようです。

 最近のブラジルのインフレ率は、昨年より1%ほど高い、5%前後で推移してい
ます。

 日本の感覚からすれば、金利もインフレ率も高いような気がしますが、ブラ
ジルは80年代後半から、93年までハイパーインフレに悩まされた時があります。

 この時期、インフレ率が1000%(つまり一年で物価が10倍になること)を超
えるような年が何度もあり、93年には物価上昇が2500%近くという恐ろしい数
字まで記録しています。

 ハイパーインフレが猛威をふるった時期に、当時の通貨クルゼイロは、合計
4回に渡ってデノミが行われ、実に2兆7500億分の1に切り下げられた末に、
新通貨レアルに交代しました。

 このような凄まじいインフレの時代においては、個人も企業も、インフレに
対応するために多くのエネルギーを奪われたようです。

 1994年になって、新通貨レアルとともに「レアル・プラン」と呼ばれるドル・
ペッグ制を導入することによって、ようやくハイパーインフレの撃退に成功し
ました。

 レアルはその後、90年代後半の通貨危機の時代に変動相場制に移行されて、
現在に至っています。10%超という高めの金利は、このような歴史的なインフレ
体質と、それに対する中央銀行の警戒感が反映されているのです。

 5%のインフレ率はブラジル人からすれば、かなり低い数字なのでしょう。

 金利を高くすることには、国債の利払いの負担などが大きくなるなどのマイ
ナス面があります。しかし、インフレやそれに伴う通貨価値下落への懸念によ
って、海外への資本流出が起こることを心配するよりは、多少利払いが多くな
っても構わないという考え方のようです。

 実際、ブラジルの高金利に魅惑された日本の個人投資家の資金も、かなりの
金額がブラジルに流入して、レアルの価格を支えているようですね。

南アフリカ経済(続き)

 ワールド・カップでの日本の決勝リーグ進出を祝して、再び南アフリカの話
題を取り上げます。

 前回は、南ア経済の明るい面を中心に書きましたが、実は懸念材料も沢山あ
ります。

 南ア経済は、人口の大多数を占める黒人層から中産階級が勃興によって順調
な経済発展を続けているのですが、一方で失業率は極めて高く、こちらは治安
の悪さとともに世界トップクラスです。

 90年代に櫻井がロンドン駐在であった時、オフィスの隣の席には南ア出身の
仲の良い同僚がいて、彼からはヨハネスブルグなどの治安の悪さの話はさんざ
ん聞いていました。どうやらその状態は今でも全く変わらず、治安の悪さは世
界一といってよい水準のようです。

 失業率は2003年には30%を超えるような局面もあり、今でも25%を超えてい
る状態であることが、治安の悪さと大いに関連があります。

 前回白人の貧困層の増加による「ホワイト・プア」問題に触れました。ただ
そういう傾向はあるものの、失業者の絶対水準が圧倒的に高いのは今でも黒人
層で、黒人の30%近くが失業者です。

 南ア政府は、国内の失業率が異常に高いにもかかわらず、積極的な移民受け
入れ政策を取り、ジンバブエなど近隣の貧しい国を中心にアフリカ中から「ア
フリカン・ドリーム」を求めて移民が殺到しています。

 このような「安くて良質(まじめ)」な移民の労働力は、南ア経済を大いに活
性化させ、経済成長を促している一方で、移民に職を奪われたと考える地元の
人々の対立を生み、「黒人対黒人」問題が大きくなっているようです。

 南アには公用語が11もあり、人種のるつぼであることも、こういった混乱の
一因なのかもしれません。(ブブセラが12番目の公用語という説もあります)

 中産階級にまで這い上がれた人々の生活の質は大きく向上しているものの、
底辺にいる人々の生活は一段と苦しくなっていくという「格差拡大」の状況な
のです。

 もうひとつ、現在の南ア経済の特徴は、資源価格上昇傾向にもかかわらず、
金などの産出量が減り続けていることです。(プラチナ生産は増えています)

 これは、掘り易い場所にある金が掘りつくされ、次第に地中深く採掘が難し
い鉱区しか残っていないということが挙げられます。

 したがって鉱業に従事する人口も減り続け、伸びているのはサービス業など
の分野です。南ア経済を牽引しているのは鉱業ではなく、黒人中産階級の個人
消費なのです。

 さて、このような矛盾と複雑さを抱えた南アの経済が、ワールド・カップの
熱狂が過ぎ去ったあと、どのような軌跡をたどっていくのかかが注目されます。

インドのインフレ率

 ギリシャ危機によって、再び不安が増してきた先進国経済を横目に順調な拡
大を続けているBRICsなどの新興国ですが、中国国内で起きたストの後の相次
ぐ賃上げなどに象徴されるように、インフレの芽が少しずつ心配になってきて
います。

 少し意外かも知れませんが、BRICs諸国の中で現在一番インフレが高進してい
るはインドなのです。

 インドのインフレ率は2008年10月に10%を突破して以降、二桁以上のインフ
レ率となる月が多くなり、2009年全体では11.5%近いインフレ率となりました。
これは、3,4年前の倍近いインフレ率です。

 今回のインドのインフレ率上昇の特徴は、最近の他の国々のインフレのパタ
ーンと少し違っていて、急激に拡大する中産階級層の人々が、皆がほしがるも
のを買おうとするために値段がどんどん釣り上ってしまうことが主な原因のよ
うです。

 自動車などの需要も急激に伸びているのですが、新たに中産階級になった
人々がまず需要を増やしたのが食料品で、食品価格は月によっては年率20%近い
ペースで上昇いているようです。

 インド経済は最近飛躍的に発展しているとは言え、一人当たりの名目GDPは
たったの1000ドルちょっとしかありません。これはBRICs諸国の中でも際立っ
た低さです。

 一人当たりの所得水準が低いということは、通常はエンゲル係数が高い事を
意味します。数年前の統計ではインドのエンゲル係数は4割近い数値でした。
インドの食品価格高騰は、エンゲル係数のさらに高い貧しい人々にとっては大
きな打撃になっているようです。

 エンゲル係数の高さが、物価統計の中で食料品のウェートが高くなる要因で、
これによって物価指数全体が押し上げられます。

 そういう状況があるので、きっと「金が手に入ったら、好きなものを死ぬほ
ど食べてやるぞ!」と思うのでしょうか。

 おそらく戦後の日本にも、似たような状況のステージがあったのでしょう。

 日本の経験では、空腹感が満たされれば、次は家電や自動車に消費のターゲ
ットが移ります。

 もしインド経済が、これからも着実な成長を続けて一人当たりのGDPが大き
く上昇していくのであれば、人々の需要が集中する商品も次第に変わっていく
のでしょう。

 成熟した経済の日本にいると世界中が、需要の低下⇒デフレ、というイメー
ジを持ちやすいですが、実際には全く違う世界もあるようです

南アフリカの経済

 サッカー・ワールド・カップの開幕を祝して、今回は南アの経済について触
れてみます。

 まず基礎的なデータですが、人口は5000万人弱、GDPは日本の約17分の1程
度の2870億ドル(2009年)、一人当たりGDPはおよそ一万ドルでこれは、ブラ
ジルとほぼ同じ水準です。

 金やダイヤモンド、プラチナなどの資源大国の南ア経済は、近年、中国やイ
ンドほどではありませんが高成長が続いています。GDPの成長率は80年代は平
均2%、90年代は平均1.6%程度だったのが、2000年以降は昨年がマイナス1.8%
成長だったものの平均3.6%の成長まで加速しています。

 近年の成長は、金価格の高騰に代表されるような、資源・貴金属価格上昇の
恩恵が大きく、それによって個人消費も伸びています。

 実は、南ア経済と日本の結び付きは強く、南アにとって日本は米国とともに
最大の輸出相手国です。日本への輸出品目はプラチナやパラジウム、合金鉄な
どの資源で、これらが日本からの自動車などの輸入額を大幅に上回っています。

 好調な経済によって、最近では人口の大半を占める黒人の中産階級層が形成
され、それが拡大していて、自動車や大型液晶テレビの売り上げやビールの消
費などの拡大に貢献しているようです。このような個人消費の増加が経済成長
をさらに押し上げて来ました。

 一方で、かつての特権階級であった白人社会から没落して、全人口の1割弱
の白人層の1割、約四十万人が「ホワイト・プア」と呼ばれる新たな貧困層を
形成し、大きな社会問題になっているようです。

 もうひとつ、現在の南ア経済の特徴は、政策金利が非常に高いということで
す。中央銀行の政策金利はリーマン・ショックの時点では12%もあり、その後大
きく引き下げられましたが、今でも6.5%の金利が付いています。

 この高金利に魅惑されて、日本の個人や投資家からの資金も随分見南ア・ラ
ンドに流入しました。

 金利が高いのは資源高などに伴うインフレ体質がその背景にあり、2008年前
後にはインフレ率は10%近い水準にあったのです。

 それから、南アは資源輸出国なのですが、輸入が輸出を上回る経常赤字の状
態が恒常的に続いています。これは大規模なインフレ投資や、エネルギー価格
高騰が主因のようです。

 ただし、政府の公的債務残高はGDPの40%未満で、これは今のところ大きな問
題はない水準です。

ブラジル経済は3度目の正直?

 ブラジル経済が好調です。

 先日IMFのストロスカーン専務理事は、今年の成長率に関して「7%という数
字は明らかに現実的だ」と発言しました。

 最近のブラジル経済は、資源、農業に加えて個人消費も好調なのです。

 よく覚えている方もいらっしゃると思いますが、少し前までのブラジル経済
は、非常に好調な時期があると、その数年後には必ずといっていいほど破壊的
な危機を招くというパターンを繰り返していました。

 70年代前半までの好調な経済発展は「ブラジルの奇跡」とまで呼ばれました
が、その後米国の超高金利政策などで中南米諸国は軒並み債務返済に行き詰り、
80年代初めの「中南米累積債務危機」につながりました。ブラジルはその中核
です。

 また90年代中盤以降も為替のドル・ペック制導入によってインフレと為替リ
スクを押さえ、海外からの資本流入を招き好調な成長を続けました。しかし90
年代後半には、アジア危機やロシア危機の余波を受けて99年にはデフォルト直
前まで追い込まれます。

 そういう意味もあるので最近の好調な経済は三度目の正直か?と疑いたくな
る部分もあるわけです。

 ただ、数年前までは上手くやっているように見えました。過去の反省にたち
危機を誘発させた大きな原因である、経常赤字と財政赤字という「双子の赤字」
問題の抑制に成功してきたからです。 

 経常収支は2002年から2007年までブラジルとしては珍しく黒字が続き、対
外債務残高も非常に抑制されてきました。
 
 しかし、最近は少しずつ心配な要素が出てきています。

 2008年から経常収支が少しずつ赤字になり始めたのですが、赤字幅は次第に
拡大する傾向を強めて来ているのです。

 輸入が増えていることが原因ですが、やはりこの国はラテン系の気質で、景
気が良くなるとガンガン「景気良く」お金を使ってしまうのかもしれません。
 
 まだ、対外債務残高は心配するようなレベルでないので当面は問題ないでし
ょう。ただ、2014年にはサッカー・ワールドカップ開催を控えており、お祭り
気分で無茶な金遣いをしなければ良いのですが・・

韓国の財閥企業の強さ

 韓国経済は、1997年のアジア危機と1年半前の金融危機の2度に渡り通貨ウ
ォンの急落に見舞われ、国家のデフォルトまで心配され国民の生活は大打撃を
受ける中で、サムスン社や現代自動車などの一部の財閥企業は逆に競争力を大
きく高めています。

 特にサムスンはカーナビやフラッシュ・メモリー、DRAM、薄型テレビなど多
くの製品のシェアが世界一で、今年中にはヒューレット・パッカードを抜いて
ハイテク企業としては世界一の売り上げになる見込みです。グループで韓国の
GDPの何と2割を担っています。

 先日、サムスンのオーナーで、90年代前半まで世界の二流会社だったサムス
ンを世界最大のハイテク企業に育てた、李健煕(イ・ゴンヒ)氏が3月下旬に2
年ぶりに会長に復帰しました。

 李会長は2008年にサムスン・グループの賄賂用の巨額の裏金問題で、脱税に
ついて有罪判決を受け、さらに昨年8月には社債発行に関する背任罪などで執
行猶予付きの懲役刑の判決を受けていました。

 しかし昨年12月に、イ・ミョンバク大統領は「国益のため」に恩赦していま
した。

 先日の英エコノミスト誌に、イ・ゴンヒ氏とサムソン社をはじめとする韓国
の財閥企業に関する興味深い記事がありました。

 イ・ゴンヒは復帰の第一声をツィッターで「今回こそ本当の危機だ。10年後
にはサムスンの旗艦ビジネスや製品のほとんどは時代遅れになる。もう一度、
前だけ向いてやり直さなければいけない」と絶好調の業績にもかかわらず、強
い危機感を表明したそうです。

 このような、カリスマ的な経営者によって快進撃を続けている韓国の財閥企
業ですが、なかなか複雑な歴史を持っているようです。

 韓国の財閥はチェボルと呼ばれるそうですが、もともと戦前の日本の財閥が
モデルで、中には戦争中のゆすり屋から出発したものもあるそうです。60年代
から70年代のハク大統領時代には、国からの安い資金と海外企業との競争か
ら保護されていたそうです。

 しかし80年代には、財閥企業の多くはテクノロジー革新に付いていくために
借金を増やしたことで、韓国は経常赤字体質になり、99年の大宇破綻を始めコ
ングロマリットの上位30社の半数以上が破綻したそうです。

 この危機の後には、政府と財閥の驚くべき癒着と腐敗が次々に明らかになり、
多くの経営トップが起訴されました。しかし、サムソンのイ・ゴンヒ会長のよ
うに、経営者の多くは「韓国経済にとって重要」などといった理由で、減刑を
されています。

 こうして、財閥企業は国民から大きな批判を浴びたのですが、2008年の危機
の後のウォン安に乗って業績を拡大すると、国民からの評判は回復することに
なったそうです。通貨安で輸出企業が成長というのも昔の日本でしょうか。

 エコノミスト誌はこのような状況に一番の危機感を覚えているのが日本企業
であり、韓国企業が自分たちに追いつくのを「愕然として」見ている状況であ
るといいます。

 とはいえ、このような韓国企業にも不安材料が無いわけではなく、例えば中
国企業の追い上げや、ウォン安という特殊事情、階層的な組織によるクリエー
ティブな製品分野での弱みや、世襲経営の不安などが挙げられるようです。

 さて、韓国社会の現状は激しい格差、生産性が低く脆弱な中小企業群など、
一部の財閥企業の華々しい成功と対照的な面や多くの矛盾を抱えているようで
す。矛盾や不安を抱えると言う意味では中国も同様なのですが、これらの新し
い「東アジア型成長モデル」がどこまで耐久性があるのか、興味深いところで
す。
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