グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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ギリシャを巡る報道とギリシャ国民の利益

 今月の半ばぐらいから、ギリシャのユーロ離脱の可能性が突然高まって来たかのような報道がされていて、驚いている方も多いのではないでしょうか。
ついこの間までは多くのメディアでユーロ離脱などという選択肢はないという政治家や学者のコメントばかり報道してきたのに、最近になって突然(ユーロ導入前のギリシャの通貨)ドラクマ復活の準備を進めるロンドンの金融機関のディーリングルームの様子を報道しだしたりするわけですから、その変化の速さに驚かされる方がいても無理はありません。

個人的には、以前に南米などで国家がデフォルトした事例について時間をかけて研究した経験から、通貨の大幅の切り下げによって意外なほど早く経済の活気を取り戻すことができることを知っていたので、危機が発生した当初から、ユーロから離れると言う道も一つの選択肢ではあると思っていました。

 たしか10日程前の英FT紙の記事に、ギリシャ国民にとってこれからだらだらと10年かそれ以上の期間に渡って続くかもしれない緊縮財政を強いられるよりは、当初の痛みが大きくてもユーロを離れる選択肢を検討すべきであるという趣旨の記事があり、次のようなドイツの諺でしめくくっています。「恐怖に満ちた終わりの方が終わりのない恐怖よりまし」であると。

 ただし、このFT紙の「ギリシャはユーロを離脱すべき」と言う率直な意見は、まだまだFTの他の記事を含めたメディアのなかでは少数意見で、これまでの2年半はほとんどすべてのメディアにおいて「ギリシャ国民はユーロを離脱したらとんでもない目に会う」というトーン一色で、これらの報道からはなんとか離脱を思いとどまらせようという意図が感じられます。

 しかし、良く考えてみれば、ギリシャがユーロを離脱した上でデフォルトした場合、銀行などが持っているギリシャの国債がほぼ完全に紙切れになり、さらにスペインなどに飛び火してしまうと、銀行や企業の投資が想像もつかないほど大損するわけですが、被害を被るのは主として欧州主要国の銀行を中心とする産業界です。したがって、欧州の産業界にとってみると、「生かさず殺さず」でもよいからギリシャにユーロ圏にとどまってほしいという強い期待があるわけです。

 大メディアは各国の利権複合体の一部であって、その意向に沿った方向に動くと言うことも世の東西を問わぬことですから、報道などに「ユーロから離脱すれば大変な目に会う」というアピールが強かったことも、当然何らかの作為が働いていると考えたほうが良いでしょう。そして、おそらくギリシャの国民自身もそういった報道に誘導されてきたのではないでしょうか。

 「ギリシャの国民の80%はユーロ圏にとどまることを望んでいる」という報道もそうした意図を感じる報道です。そもそもそんなに多くの国民がユーロ圏にとどまることを、強く望んでいるのならユーロ圏からの離脱の可能性の高い政党には投票するはずはないのですが、実際の選挙ではそれとは逆の方向に向かいつつあるようです。

もちろん、ギリシャ国民にも、ユーロを離脱してしまうと、自分の保有している金融資産が弱い通貨に不利な交換レートで交換させられてしまう可能性など、離脱にはいろいろ心配事があるのは事実でしょう。

 しかしながら、ギリシャがユーロ圏にとどまっている限り、「お札を刷る」権限がない一方で、重税や低い公共サービスに失望した有能な国民がユーロ札の詰まったかばんを抱えて自由に他のユーロ圏諸国に脱出することが出来るという、ユーロの矛盾した制度のままで経済の再生が可能なのか。何よりも、ユーロ圏離脱という選択肢の持つ意味が、国民に公平に伝えられてきたのかは、とても疑問に感じます。

 そうはいっても、ギリシャの政治家や官僚にはユーロ圏をスムーズに離脱する実務能力がなさそうであることも一方の事実であります。危機発生から2年半、危機を克服するどころか国民の痛みが増し続けてしまったギリシャ。これまで、欧州の銀行などの痛みに配慮して、ユーロ圏離脱の選択肢を先送りしたことで、結果として関係者全員の痛みが増しただけだったのですが、もしこのまま、半永久的に「生かさず殺さず」の事態が続けば、それは「鎖につながれたプロメテウス」のようでもあり、本当に現代版のギリシャ悲劇と呼べるかも知れません。
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ギリシャの現状は日本の若者の未来?

 ギリシャ問題で経営破たんしたデクシア銀行は、日本ではあまり知られていませんでしたが、サブプライム・ショック以前は十分な資本と良質な資産を保有する、非常に優良な銀行であると思われていました。

 ベルギー・フランス系銀行のデクシアは、国や地方自治体、それに公的機関などのローンや債券を保有するのがその役割であり、5年ほど前には、そうした資産は事業法人に対する融資と違って、リスクは極めて限定的であると多くの人達が考えていたからです。

 しかし、サブプライム・ショックが起きたことから状況は一変します。デクシアは本体だけでなく、米国に保有する金融保証保険会社(モノライン)を通じてサブプライム関連の資産を大量に保有したことが発覚したからです。

このサブプライム・ショックに端を発した金融危機が2年前にドバイ・ショックへ、さらにギリシャ問題に飛び火して、欧州の周縁国の債券の価格が大幅に下落を始めたときには、すでにデクシアは実態的にはかなりまずい状況に陥っていたと思われます。

もともと、国や政府機関(ソブリン)部門のリスクをとるというビジネス・モデルであったわけですから、欧州のソブリン危機の拡大の影響に直撃されることは、ほとんど自明のことであったと言えます。

しかしながら、その実態は、トレーディング勘定ではきちんと評価するもの、銀行勘定でもつ債券の時価評価を回避するという、欧州の金融当局がとった方法によって、しばらくのあいだは隠され続けることになります。実際のところ、7月にEU内90行に対して行われたストレス・テストにデクシアは余裕で合格しています。その時点で不合格だったのは8行だけでした。

 どうも欧州の金融当局は、金融機関の危機が拡大することを避けるために、何度も「ストレス・テスト」と称して、はじめから破綻させても世の中にインパクトの少ない金融機関を決めて、それらだけが不合格になるようなテストを行っていたのではないかと言う疑念が湧きます。

 デクシアの経緯をみていると、筆者は1998年に破綻した長銀のことを思い浮かべずにはいられません。長銀もデクシアも、政府の強い肩入れのもとで
普通の銀行とは違うビジネス・モデルを持っていました。
 
どちらも長い間大変に優良な銀行であると信じられていましたが、時代の潮流のなかで手を出した不動産関連のビジネスでつまずき、その後当局が事実上の破綻を隠そうとしましたが、ついに隠しきれなくなって破綻したという運命が、とても似ているように思えるからです。

 バブル崩壊後、日本の当局の問題先送り体質が世界的に非難されました。しかし、こうして見ていくと、官僚や政治家の抜本的な対処能力の欠如は日本だけに限らないようです。

 役人や政治家は基本的には、その時々の自分の置かれた環境のなかで、「現実的」に選択可能な選択肢しか選べないのです。現実的な選択肢のなかから最良の方法を選ぼうとするのは、一握りの良心的な人達だけで、多くの役人や政治家は、選択可能で「自分自身にとって」一番利益のある方法を選ぼうとします。

 はじめから結論ありきの手続きで、自分の利益になる政策を選択する手法は原発行政のなかでも日常茶飯事であったことが次々と明らかになってきています。

 日本や欧州はそうであっても、アメリカは違うという声も聞こえそうですが、決してそんなことはありません。リーマン・ショック後の対応も、対応可能な部分に手を付けただけで、問題の規模が大き過ぎる不動産融資はほとんど手つかずで先送りされているように見えます。

 さて、前置きが非常に長くなってしまったのですが、今回言いたかったことは実は日本の年金問題です。少し前に日本の年金受給開始年齢を70歳まで延長する案を厚労省が出したと報道されています。

 日本の年金制度は、危機発生前のギリシャ政府と同様で、団塊の世代までは永続性のない制度の上で先にお金を浪費している状態です。今、ギリシャで起こっている緊縮財政や暴動は、ほとんど確実に日本の若い世代にふりかかってくるでしょう。

 少し長くなってしまったので、続きはまた後日書くことにします。

ギリシャ危機から1年: 結局デフォルトやユーロ離脱は避けられない?

 ギリシャの危機が急激に進展したのはちょうど1年前のゴールデン・ウィークのことでした。昨年の5月2日の日曜日、ユーロ圏のサポートと引換にギリシャ政府が厳しい財政削減策を国民に提示すると、国民から激しい抗議が起り、5月5日には、デモの群集が投げた火炎瓶で3人の銀行員が死亡するという状況にまで事態は悪化しました。

 このような混乱した状態の映像が世界中に流れ、日本の休暇シーズン中に金融市場では激しいユーロ売りを浴び、これをきっかけに急激な円高が進みました。

 さてそれから1年、ゴールデン・ウィークはギリシャの危機進行と縁があるようで、ギリシャの10年債の利回りは12%台から一時16%超に跳ね上がり、追い討ちをかけるように格付け機関のS&Pはギリシャの格付けを「BBマイナス」から「B」まで引き下げました。「B」はいつデフォルトしても全く不思議でない水準です。

 同じユーロ建ての10年ドイツ国債の利回りは現在3%ちょっとですから、ギリシャは13%も余計な金利を投資家に払わなければなりません。政府の借金がGDPの150%近くに達する国では、この上乗せ金利をそのまま適用すると、GDPの2割近くを毎年サラ金のような金利支払いに当てなければならない計算になります。これでは到底クビが回らないことは自明です。

 問題はこうした構造が、1年前から程度の差はあれ本質的には全く変わっていないことです。分かっている問題を放置したために状況がさらに悪化しただけなのです。

 ギリシャのように身の丈に合わない海外依存の借金でクビが回らなくなった国は、かつてのアルゼンチンのように、債券をデフォルトして債務の軽減してもらうとともに、自国通貨を大幅に切り下げて、自国産業の競争力を高めるしかないのです。

 そうしたことは、ユーロ圏の当事者達にとっても程度の差はあれ皆が認識していたことだと思いますが、1年も放置されてきたのは、政治的問題以外の何ものでもないのでしょう。

 政治的問題とは、政治の独立を維持したまま通貨同盟をするというユーロの壮大な実験に失敗の烙印を押したくないという事情です

 もし政治的な理由で「ユーロ離脱はリスクが大き過ぎる」として離脱の可能性を排除するのであれば、それに匹敵するような大胆な施策をひねり出す必要があったのですが、そんな代替案は初めからありませんでした。

 最近になってようやく、ギリシャの債務再編やユーロ離脱が欧州の当事者達の間で現実的な選択肢として議論に上るようになってきました。しかし、関係者の多くは率先して声を上げることを躊躇し、仮に誰かが声をあげても、建前論を並べてなかなか議論が進まない状態です。

 リーダーシップの欠如と最終的な責任関係がはっきりしないという意味では、欧州の通貨同盟は日本の官僚支配社会と相似点があるのかも知れません。

 結局のところ、ギリシャはデフォルトを選択肢に含む債務の削減策と、少なくとも一時的なユーロからの離脱は不可欠のように見えますが、欧州がいつ、どのようなプロセスを経てその結論を受け入れるのかは興味あるところです。

急激な緊縮財政を断行する英政権

 昨今の日英の政府の財政再建に対する取り組みは非常に対照的です。かたや国民から「あまりにも急激で厳しすぎる再建策」と非難されるほどの緊縮財政策を矢継ぎ早に発表し、一方は歳出削減に対する熱意は既に失ってしまったかのようで、官僚主導のまま昨年度と同額の予算規模を通そうとしています(ただし増税にはだけは興味ありそうですが・・)。

 両者を足して2で割ることは出来ないのかと考えてしまうくらいです。

 昨年10月、既に6月に付加価値税の引き上げを決めていた英国のオズボーン財務相は今後4年間で810億ポンド(約11兆円弱)の歳出削減をする案を打ち出しました。

その具体策として英政府は公務員の大幅人員削減(8%)と待遇の抑制、大学の授業料の大幅引き上げ、医療改革による医療費増加の抑制策を発表、国防費も例外ではありません。今月に入るとオズボーン財務相は、大手銀行に対して中小企業向けなどを中心に総額1,900億ポンドの融資を拡大することや、銀行から25億ポンドの税金を新たに取り立てる考えを発表して世間を驚かせました。

さらには年金の給付開始年齢の引き上げ決定や、長年多額の費用をかけて養成した戦闘機パイロットの卵たち100人を実際に任務につかせる直前に解雇したというニュースも飛び込んできています。

 英国は「英国病」と呼ばれていた1970年代に財政悪化からIMFに支援を求めました。キャメロン首相やオズボーン財務相はこのときの屈辱が再現されるのを最も恐れているようです。

 かつて英国が搾取を続けていた隣の島国のアイルランドでは、金融機関の不良資産問題から国際金融市場の攻撃を受け、国債の調達コストが大幅に上昇し、ユーロ圏諸国などからの支援なしでは立ち行かない状況に追い詰められました。

 英国国債の海外投資家保有比率は35%前後であり、同じ比率がたった5%しかない日本国債の場合と、国債価格下落に対する危機感にも大きな差があります。

 英国民が増税や、国民へのサービスの大幅な低下の政策に耐え忍んでいるのはこうした歴史的な背景や、周辺諸国の状況があるからでしょう。

 さらには、金融危機によって、金融産業頼りの成長戦略を捨てざるを得なかったことも大きいようです。ちっぽけな島国で、製造業は遥か昔に衰退しきってしまっている英国は、金融産業に今後過大な期待をすることが出来ないとすれば、当面低空飛行の成長率を覚悟しなければなりません。そうだとすれば、リーマン・ショック前の景気が良かった頃と同じ気分で政府が支出を続けることは出来ないのです。

 いずれにしても、英国人にとっては70年代のトラウマの影響は大きく、政府をこれだけ過激な緊縮財政策に駆り立てているのでしょう。

 一方日本には、別のトラウマがありそうです。第二次大戦で無謀な闘いを始めた結果形成された、アメリカにだけは逆らってはいけないというトラウマです。そちらに対する恐怖心があまりにも強く、その反動で財政悪化に対しては極度の不感症になってしまったのかもしれません。

 強烈過ぎる英国の緊縮財政と、与野党の政治家たちが危機感のかけらもなく内ゲバに明けくれる日本。どちらの対応がどのような結末を迎えるのでしょうか?

隠し資産に対する特例措置でフランスの富裕税収が急増

 フランスは、1980年代のミッテラン大統領時代に金持ちの資産に課税する「富裕税」を取りはじめました。現在はネットの資産が79万ユーロ(約9千万円)以上の部分には、段階的に0.55%から1.80%の税金がかかります。その税金を逃れるために、金持ちたちはスイスやリヒテンシュタインなどの秘密口座に資産を隠し続けていました。
 
 そこでフランス政府は昨年、特例措置として、これらの隠し資産をフランスに自主的に戻した場合は、脱税などの刑罰を免除するという策を打ち出しました。その結果、昨年のフランスの富裕層の資産は急に膨張し、富裕税の収入は予定の41億ユーロから44.6億ユーロにまで増えたと報道じられています。

 ということは、ざっくり400億ユーロ(5兆円弱)程度の隠し資産が予定より多く戻ってきたという計算になりそうです。最近は、日本人でも、一時的に香港やシンガポールに移住して、退職金や相続税逃れをする行動が増えているようですが、欧州の人たちが利用するタックスヘイブン利用は歴史も長く地理的にも近いため、その規模は桁が違います。 

 ちなみに、フランスの富裕税は、サルコジ大統領などによって廃止が検討されているようです。

医療制度改革にまで手をつける英キャメロン政権

  英国の保守党・自民党連立政権のキャメロン首相は、教育費の大幅削減に続いて、医療費の大幅カットに着手しました。

 先日、キャメロン首相は「自由裁量」と「競争原理」を導入することによって、英国の医療制度を改革(という名目の歳出カット)すると発言しています。実は英国の医療はサッチャー政権以来、規制緩和や市場原理の導入などさまざまな「改革」を繰り返し、一時は医療制度崩壊寸前の状況に追い込まれた経験があります。

 今回の、キャメロン首相の「競争原理」というキャッチフレーズに対して、サッチャー、メージャーと続いた保守党政権時代に大きく質の低下した英国のNHS(National Health Service)制度が今度こそは本当に崩壊してしまうのではないか、といった懸念の声が早くも聞こえてきています。

 医療費削減の話をする前に、まず英国の医療制度について簡単に説明しましょう。英国の医療制度は、国民が無料で医療を受けられるNHSと、全額自己負担のプライベート医療で成り立っていて、さらに無料のチャリティ医療もあります。

 国民が公平に医療を受ける為に設立されたNHS制度は当然国の負担が大きく、1970年代には「英国病」と言われた当時の財政を大きく圧迫する要因の一つになりました。

 このHNSにサッチャー政権が大きなメスを入れました。それまでは、HNSの仕事に従事する医師はプライベート医療に関わることが制限されていましたが、サッチャー首相は、医師が自由にHNSとプライベート医療の両方を出来るように「規制緩和」を行ったのです。

 この政策の持つ意味は当初は医師や国民には十分に理解されていなかったようですが、実際には英国の医療に甚大な影響を及ぼすことになりました。その後もサッチャー政権と1990年にそのあとを継いだメージャー政権はさらに新自由主義的な改革を続けました。

 国の税金で賄っているHNSのコスト削減の為、プライベート医療費に対する税制優遇などを行ったうえに、NHSには「内部市場化システム」と呼ばれる制度を導入して、医療の現場を「金の尺度」で染め上げるような策を取ったのです。

その結果、政府の歳出は減ったものの、NHSの医師たちの待遇は大きく悪化し、結果として医師や看護師や病床の大幅な不足を招き、医療の現場は滅茶苦茶に混乱状態して、国民にとっては大幅な医療の質の低下となりました。当時の英国の医療は先進国最低と言われるような状況でした。

 筆者は、90年代前半からロンドン駐在生活をしていましたが、この頃の英国の医療の惨状は同僚から、しばしば聞かされました。バカ高い費用を払ってプライベート医療を受けることが出来る一部の人間は良質な医療を迅速に受けられるのに対し、大多数の国民が使うタダのNHSは医師や病床不足で、かなりの重い病気やケガでも迅速で適切な医療受けられない事態が、しばしば発生したようです。(すみません、筆者も会社の支出でプライベート医療を受けていました。)

 1997年に労働党のブレア政権が誕生すると、軌道修正が図られ、医療の質も改善の方向に向かったようですが、現在、再び時計の針は逆に回り始めたようです。もし今回のキャメロン政権の策が現実のものとなれば、お金に余裕のない英国民は、教育も医療もまともに受けることが出来ないと言う厳しい状況に追いやられてしまうのでしょう。

 現在英国で起こりつつあることは、けして他人ごとではありません。日本の財政の惨状を考えれば、現在の英国は数年後の日本の姿かも知れません。

ギリシャ国債も利回り低下、欧州の信用不安は一旦後退したが・・・

昨日のポルトガル国債の入札結果が、事前の予想より大幅に良い(利回りが低い)結果になったため、欧州の他の財政問題懸念国の国債利回りも、一旦急低下しました。つい一週間ほど前には、民間金融機関とリスケジュール(債務返済期限延期)の交渉が始まったと噂されたギリシャ国債の利回りも例外ではありません。

ただし、ギリシャが債務返済期限延長を求めるのは、何年先のことかは分かりませんが時間の問題であることは変わりないように思われます。

ギリシャ利回り
10年物ギリシャ国債の利回り推移(過去一年)出所:ブルームバーグ

グラフの昨年5月前後の利回り急上昇が、ギリシャ危機発生の時のパニック的な動きです。

ホドルコフスキー氏、再び有罪へ

 ロシアの旧石油大手の元社長で、2003年から服役中のホドルコフスキー氏の(別の罪状の)裁判の有罪判決が下され、ホドルコフスキー氏は最長で2017年まで服役させられることになりました。

 先日もこのトピックについて簡単に触れましたが、いろいろ調べてみると、ホドルコフスキー氏とプーチン首相の対決は、ものすごく複雑で意味が深い対決であることが、(遅ればせながら)分かってきました。

 ホドルコフスキー氏は、ユダヤ系の人物で、エリツィン時代の規制緩和、民営化の流れにうまく乗って、巨額の富を築いたのですが、ユダヤ系のコネクションもあり西側の富豪やイスラエルと強いつながりがあったようです。

 当時大統領だったプーチン氏は、ホドルコフスキー氏らがロシアのエネルギー資源を、彼らのグローバルなコネンクションで牛耳るのを、ホドルコフスキー氏を牢獄にぶち込むことで阻止したことになります。西側のメディアは、ホドルコフスキー氏のコネクションに近いため、プーチン氏の専制的な手法を非難しますが、必ずしもそれらの報道を鵜呑にできない部分もあるようです。

高まるロシア国家体質への悪評

 少し前に、ウィキリークスが「ロシアの政府とマフィアは事実上区別がつかない」というスペイン高官が評価した外交公電をもらして話題になりました。その公電では、そのマフィア国家ロシアの最大の実力者はプーチン首相としています。

 英エコノミスト誌は今、ロシアの特集記事を連載していますが、最大の注目点はプーチン前政権下で投獄されたかつての石油最大手ユコスのホドルコフスキー氏の裁判の行方です。

 大富豪だったホドルコフスキー氏はプーチン首相の最大の政敵と考えらています。ボドルコフスキー氏は、現在8年間の刑で服役中ですが、現在さらに刑務所暮らしを長くするための別の裁判が進行中です。先週はその判決が出る予定だったのが、理由を明らかにしないままを27日に延期されました。

 エコノミスト誌の論評で興味深かったのは、プーチン首相の再出馬が予想される2012年のロシアの大統領選挙に向けて、プーチン首相がわざと国内に多少の混乱を起こして、「ロシアを統治できるのは自分だけだ」ということを国民にアピールしようとしているという見方を紹介していたことです。

 日本の隣国は、中国もロシアも一筋縄ではいかないようです。

ベルルスコーニ伊首相もいよいよ窮地か?

 本日の欧州時間、ベルルスコーニ伊首相の内閣不信任案が採決されます。
ベルルスコーニ首相は、奔放な発言だけでなく、大変な女好きなのに女性蔑視、闇世界との繋がりのうわさなど、よくこれまで長期間首相が務められたと、逆に関心してしまうような人物なのですが、今は強い逆風にさらされているようです。

ベルルスコーニ氏の人物を知るための参考資料として、ちょうど一年前に配信したメルマガの内容をご紹介いたします。

-- 昨年12月のメルマガ記事引用開始 --

 先日、イタリアのベルルスコーニ首相が、集会中に男にミラノ大聖堂のお土産用の置物を顔面に投げつけられ、歯を2本を折り鼻とほおにも負傷をしました。気の毒なことにテレビの画像では相当痛々しいものでした。

 73歳には見えない、ハンサムでプレイボーイな首相はイタリアのメディア王でもありますが、その女性関係だけでなく、昔から数限りない失言や胡散臭い話題に事欠かない人物です。

 しかし、最近はご難続きで先月後半には首相に「売春」された経験がある売春婦が暴露本を発行し、首相が20人もの売春婦をまるでハーレムのようにはべらせたことなどを書かれ話題になりました。このご婦人は6月に首相の売春を暴露したのですが、それ以降、脅迫や空き巣などさまざまな怖い目にあってきたと証言しています。

 かねてから女性関係のスキャンダルに事欠かないベルルスコーニ氏は離婚協議中のベロニカ夫人からは生活費50億円を請求され、現在汚職事件の被告でもあります。

 ベルルスコーニ氏は1994年以来、首相になったり辞任をしたりの繰り返しで2008年から勤める今回は3回目になります。

 そんなベルルスコーニ氏のとりわけ怪しげな過去は、80年代にイタリア政界を激しく揺るがした「P2スキャンダル」に関する疑惑です。

 以前も少し触れましたが「P2スキャンダル」はイタリア政界、マフィア、バチカンの怪しい関係が暴露された大スキャンダルで、バチカン御用達のアンブロシアーノ銀行の破綻やそのカルヴィ頭取の暗殺、ボローニャ駅の爆破事件など、さまざまな事件が関連して起こったと考えられています。

 このスキャンダルを引き起こした「ロッジP2」と呼ばれるフリーメーソン組織のメンバー・リストに、多くの大物とともにベルルスコーニ氏やのちにベルルスコーニ政権の重要閣僚となる人物の名前を連ねていました。

 そしてベルルスコーニ氏は首相になったのちに、このときのスキャンダルに関連する事件の容疑者が裁判で無罪を勝ち取るような働きかけをしたと信じている人々は大勢いるようです。

 まあイタリアではありそうな話ですが。

 先月、イタリア版ローリング・ストーン紙は、無類のライフスタイルや相次ぐスキャンダルにもかかわらず強固な支持率を保ってきた首相を「ロックスター・オブ・ザ・イヤー」に選びました。

 しかしながら、さすがに最近は支持率が落ち続けて、先日、ローマでは9万人もの人々が「首相は辞めろ」というデモをしたそうです。

 話題性は豊富なのですが、前時代的な感覚を引きずった首相は、そろそろ耐用年数が過ぎたのかも知れません。

 今回の顔面の負傷は、それを象徴する出来事のようにも見えます。ちなみに「凶器」になったミラノ大聖堂の置物は、事件後売り上げを伸ばしているそうです。


--昨年のメルマガ記事引用終わり--

アイルランドはユーロを離脱すべきか?

先日、EUとIMFによるアイルランドの救済策が決まりました。

 ただし、EUやIMFによる救済は国民に対する厳しい歳出削減と増税を意味してします。半年前のギリシャで起こったことと同様で、アイルランド国民は激しいデモで反発しています。

 さらに問題なのは、今回はとりあえずかわしたものの、これまで、過去20年に渡って、アイルランドを成長させてきた、低い法人税率の引き上げ圧力が今後何年も続きそうなことです。

 リーマン・ショック以降のアイルランド政府の対応の早さは、ギリシャとは全く対照的で、アイルランドは真っ先に銀行預金を保護し、バッド・バンクを設立して不良資産問題に対応してきました。今回のEUなどからの救済も、多くの支援資金が銀行救済に振り向けられます。

 しかし、一方でこのような政府の銀行救済の方針自体が間違っていたという考え方もあります。

先日ブルームバーグのコラムニストであるマシュー・リン氏が興味深い見解を書きました。「アイルランドは(EUなどの)救済融資を受け入れるより破産した方がよい。救済に付される条件は救われるに値しない。一度EUの資金を受け取ったら、二度と自由になれない。第一、アイルランドの銀行は救う価値がない。デフォルトは通常言われているほど恐ろしいことではない」というのです。

おそらく、かなり多数のアイルランド国民も、リン氏と同様の考えをもっているのではないでしょうか。

ギリシャの場合もそうでしたが、ユーロ圏というしがらみがなく通貨の大幅切り下げやデフォルトをした方が、危機を起こした国民にとっては、ずっと楽な対処方法である可能性が高いのです

今回の問題で深刻なのは、もともとユーロ加盟の適性に疑義がある、ギリシャでなく、真面目で有能なアイルランドでも事態がここまで悪化してしまったことです。

そういう意味では、ユーロ圏の通貨だけ統合して、政治も経済運営も別々という野心的な試みは、致命的な欠陥を持っていると言えるのかも知れません。

今回のEUによるアイルランド支援は、この致命的な欠陥を放置したまま、すでに走り始めてしまった枠組みの延命措置をしているだけにも見えます。

ユーロが、長期間に渡って継続可能な制度にするためには、このような延命措置でなく、どこかで大手術が必要になる気がしてなりません。

アイルランド問題

 ここ数週間、アイルランドの危機が急速にクローズ・アップされてきていま
す。今回はアイルランドの経済問題について簡単に説明します。

 実は、アイルランドはリーマン・ショック後に真っ先に危機が判明した国で、
危機発生後はユーロ圏の他の諸国の抜け駆けをするように銀行預金の全額保護
策を発表して波紋を呼んだくらいです。

 アイルランドの危機の原因は典型的な不動産バブルとその崩壊にともなう銀
行の不良資産問題という、日本人にとっては非常に分かり易いパターンです。

 ユーロ圏における経済崩壊の先輩であるギリシャの場合と異なり、アイルラ
ンドの危機は政府の放漫財政によるものではなく、アイルランド政府の対応は
素早いものでした。

 第一次大戦後に独立するまで、長年に渡って英国に搾取されっぱなしの貧し
い農業国だったアイルランドは、90年代には法人税の大幅な減税や、IT企業の
積極的な誘致策などが功を奏し、奇跡的な経済発展を遂げました。

 それまでは西欧諸国で最も貧しい国の一つだったアイルランドは、21世紀の
初めには、一人当たりのGDPが世界のトップクラスへと変貌したのです。

 住宅バブルは、そのような経済の大ブームと若年層の多い人口ピラミッドや
東欧からの移民流入いう状況から、ある意味では起こるべくして起きた事態と
言えます。1992年から2006年までに住宅価格は3.5倍近く上昇しました。そし
て、バブルの崩壊はリーマン・ショック以前から少しずつ始まっていました。

 アイルランド政府は、昨年4月に世界に先駆けてバッド・バンクを設立して
銀行の不動産開発関連のすべてのローンを買い取るという大胆な策を発表し、
段階的にこの策を実施してきています。

 しかし、不動産バブルの崩壊の影響は、日本の経験でも分かるように、そん
なに簡単に沈静化させることは出来ません。

 アイルランドにとって不幸だったことは、アイルランドの金融機関の資産規
模がGDPとの対比で大きすぎたことと、そして大手銀行の一つであるアング
ロ・アイリッシュ銀行の傷があまりにも深かった事です。

 アングロ・アイリッシュ銀行は経済のピーク時に無謀な開発案件を数多く手
がけて、アイルランドの銀行救済に投入されている税金のほとんどの部分がア
ングロ・アイリッシュ銀行一行に投入される結果になりました。

 アングロ・アイリッシュ銀行救済に必要な資金が、巨額なものになることが
判明したのが今年の9月初めのことです。その時点から、今回の事態に至るレ
ールは既にはっきり見えていたと言えるかもしれません。

 今回の騒ぎは、金融機関救済によりアイルランドの財政が一段と悪化したこ
とで、ユーロ圏諸国からの救済を要請する必要性に迫られているのではないか
という観測が浮上したことから出発したものです。

 もし、アイルランドに支援が必要であれば、次はポルトガル、そしてスペイ
ンというお決まりのユーロ圏のドミノ倒しの懸念が、市場参加者の間に起こっ
たのです。

英国は一段と監視社会化へ?

 ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、「007」の国である英国は知る
人ぞ知る、監視社会です。

 2005年にロンドンの地下鉄などの爆破事件が起きてから、この傾向は一層加
速し、ロンドン市内はもちろん、英国全土に監視カメラが増設され、その数は
実に400万台を超えるという報道もあります。ロンドンのような大都市に住ん
だり通ったりする人々は、平均すると毎日何百回もカメラで撮影されているの
です。

 このような状態を、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」に出てくる指導
者の名前から「ビッグ・ブラザー化社会」と名付けて皮肉る言い方もあります。

 その英国では、さらに極端な情報管理を与党連立政権が検討しているという
報道が先週ありました。

 報道をしたのは、Telegraph紙で、検討されている法案は、携帯電話会社やネ
ット・サービス・プロバイダーは、すべてのeメールや通話内容、さらにはweb
へのアクセス先の保存までが義務付けられ、当局からの要請があれば、裁判所
の許可を得なくてもそれらの情報を開示しなければならないというものです。

  情報開示の要請が出来るのは、警察だけでなく、地方議会や、金融監督当
局、救急救助当局など653もの公的機関が、この秘密情報にアクセスできると
いうのです。

 別の新聞では、英政府はこのような「国家スパイ」と言える状態にするため
に、予算をこれまでの17倍も増加させるプランを報道しています。

 野党の幹部はこのような「国家スパイ」によって、国民が国に「奴隷化」さ
せられるといって反対しています。確かに、携帯のメールなどはともかく、通
話の内容や、どのwebへアクセスしたかもすべて記録されるというのは、相当
なプライバシー侵害ですね。

 この、信じられないような監視社会構築のプランは、「テロ抑制」という名目
で議論されているのですが、野党幹部は「目的を大きく逸脱している」と批判
していると報道されています。(膨大な数の監視カメラの設置を行ったのは、現
野党の労働党だったのですが・・・、どうなっているのでしょう?)

 英国の監視社会化が進んでいるのは、それだけ政府や公的部門に対する国民
の信頼が厚いのでしょうか?もちろん、こういった施策には大反対の国民も多
数いるのでしょうが・・

 しかしながら、国家による情報管理の強化が、もし世界的な流れであるとす
ると、空恐ろしい気がします。毎年のように首相が交代し、検察が勝手に事件
をでっちあげるような日本では、「御上(おかみ)」のやることに、そのような
信頼はとてもおけないからです。
 
 いや、もし仮にその時の政府に信頼があったとしても、人間は必ず間違いを
犯し、腐敗するものです。政府に、すべての個人の交信情報を握るような巨大
な権限は、絶対に渡すべきではありません。
 
 英国の、このプランが最終的に実現されてしまうかどうかはまだ分かりませ
んが、日本で同じような「ビッグ・ブラザース化社会」への動きが起きないよ
うに、しっかりと注意している必要があります

フランスの若者達の反乱

 年金支給開始年齢を60歳から62歳に引き上げる案などの年金制度改革に反
対するストが、フランス全土で拡大しています。先週はその数が350万人とい
った報道までありました。

 年金支給年齢引き上げ案に対するデモというと、退職が視野に入っている年
齢の人々の問題と想像してしまいますが、実際にはそういった世代の人達に混
じって多数の高校生や大学生など非常に若い世代がデモに積極的に参加してい
ます。

 デモに参加する高校生の数は半端なものではなく、フランス全土で数万人の
高校生がデモに参加し、数百の高校で校門閉鎖などの措置が取られたそうです。
先週末には、高校生と警官隊が衝突し、一人の高校生が重症を負うような事態
にまで発展しました。

  盾をもった警官隊と高校生が衝突する映像は、まるで日本の60年代の安保
闘争の時の映像のようです。

  若者たちの懸念は、今でも25歳以下の若者の失業率が25%近くにまで上が
っているのに、高齢者の退職年齢が上昇すれば、若者に回ってくる仕事がさら
に少なくなることです。さらに、自分たちがリタイアする頃までに定年が何歳
にまで引き上がっているのか分からないという心配もあります。

 実は、フランスの若者が反乱を起こすのは今回が初めての事ではなく、4年前
にも、政府が26歳以下の若者に雇用後最初の2年間は自由に解雇出来る雇用制
度変更を試みましたが、若者達の猛烈な反対にあってとん挫したという経緯が
あります。

 数十年前に作られた主要国の年金制度は、長寿化や少子化、それに運用利回
りの低下などで、設定当初の見込が大きく外れて事実上の破綻が視野に入って
きています。そして、どこの国でも、既得権者である中高年層の権利を奪うこ
とは難しく、若者にこの制度破綻のツケを押し付けようとしています。

 日本でも、若年層の失業率は、全体の2倍近い水準まで上昇し、彼らがリタ
イアする頃には年金や医療保険制度が破綻することは十二分に想定できるよう
な状況になってきています。

 しかしながら、いまのところ日本の若者は、フランスの若者のような「実力
行使」という手段を使って自分たちの利益をアピールするという事態にまでは
至っていません。

 ただし、現在進行中の世代間格差拡大の流れが逆転する見込みは、今のとこ
ろ全くなく、やがては世代間闘争が激化するのは必至の情勢のように思われま
す。

 特に過激な行動を煽るつもりもないのですが、若者が「割を食わされている」
ことを、デモなどによって自分の親たちの世代に伝えることも、実は大事な事
かも知れないという気がします。そうでなければ、恵まれた世代の人々は、い
つまでたっても自分たちが恵まれていることに気がつかないかもしれません。

 世の中には、もともと恵まれた人々がさらに過剰な権益を主張する身勝手な
デモやストも存在します。しかし、今の若者たちが、自分たちの世代に負担ば
かり押し付ける親たちの世代にちょっとした反乱を起こしたとしても、それは
十分な理由があるように思えます。

 フランスの高校生の反乱を見て、そんな風に感じました。

アイスランド化するアイルランド

 先週、アイルランド政府は既に国有化されている主要銀行に対する追加の資
本注入を発表しました。

 今回新たに注入する額は、何とGDPの20%相当分の巨額です。これによって今
年のアイルランド政府の財政赤字は、GDPの32%という想像を絶する規模になり
ます。

 財政破綻が懸念されるギリシャでさえ、今年の財政赤字は8%、日本は10%弱
であるという状況を考えれば、アイルランドの赤字幅がいかに大きいかが分か
ります。

 アイルランドの銀行の資産悪化の原因は、バブルの崩壊による不動産価格の
下落が止まらず、不動産関連融資に対する引き当てが増え続けるという構図で
す。これはかつて日本も経験した道ですが、アイルランドの場合、驚くべきこ
とに、たった一つの銀行がほとんどの不良資産を生みだしています。

 その銀行の名前は、アングロ・アイリッシュ銀行。同行は、元経営者が強力
に不動産関連融資を推し進めた結果、1997年から2007年までに驚異的なペース
で融資を拡大しました。そして、結果的にそのほとんどが不良資産化してしま
ったのです。元会長は現在逮捕され警察の取り調べを受けています。

 アイルランド政府がアングロ・アイリッシュ銀行支援に投入する資金は
最悪の場合は既に投入済みの資金も合わせると合計500億ユーロ(6兆円弱)を
超える額に達し、これはアイルランド全体のGDPの30%を超えます。

 同じ比率を、日本のGDPに適用すると、銀行一つに150兆円を投入するよう
なものです。もし、こんなことが起これば、日本でもほとんど暴動に近い騒ぎ
になるでしょう。

 アイルランドの不良資産問題の実態が明らかになったことで、アイルランド
国債の価格は大きく下落し、今ではユーロ圏ではギリシャに次ぐ高い利回りに
なりました。

 こうしてアイルランドは豚(PIGS)比べ競争においてギリシャに追従する一
番手に浮上したわけですが、一握りの銀行経営者の暴走が国家の財政を破綻さ
せようとしているという構図では、リーマン・ショック直後に主要銀行が軒並
みデフォルトしたアイスランドのケースに近いのかもしれません。
 
 そのアイスランドでは、先週、議会が前首相を金融機関の暴走を知りながら
何も手を打たなかった職務怠慢という嫌疑で弾劾裁判にかける議決をしました。
 
 アイスランドとアイルランドの違いは、通貨同盟に参加したかどうかで、ユ
ーロに加入していなかったアイスランドは通貨クローナが大幅に暴落(現在は
対ユーロで危機前の約1/3)しました。
 
 通貨の暴落は短期的には大きな痛みを伴いますが、長期的には輸出競争力強
化という形で、国の経済の立て直しの大きな力となります。

 その点については、アイルランド、ギリシャ同様に「ユーロの呪縛」に捕ら
われているのかもしれません。 

懸念が残る欧州の銀行

 欧州諸国の信用不安は、初夏にはスペインやポルトガルに対してまで懸念が
高まる局面もありましたが、最近はギリシャなど一部の国を除いて、やや落ち
着きを見せる方向に動いています。

 しかしながら、欧州の信用不安の「核」となっている、金融機関への不安は
まだまだ払拭されたとは言い難い状況のようです。

 先日のWSJ紙は欧州の金融機関が、7月下旬に実施されたストレステストにお
いて、保有するソブリン債を過小に申告し、一部の銀行ではその規模が数十億
ユーロにのぼると報じています。

 欧州の金融機関は10年前の単一通貨導入に前後して、為替リスクがなくなっ
た(と思われた)ことで、ユーロ圏各国の国債の保有を急速に増やしました。

 ギリシャが、最近まで放漫な財政支出を続けることが出来たのは、ユーロ圏
の銀行がギリシャの国債をドイツ国債とほとんど変わらない低い利回りで、ど
んどん買い続けてくれたからです。

 欧州の金融機関の安易な国債保有は、ギリシャ国債に限らず、スペイン、ポ
ルトガル、アイルランド、イタリアなど各国の国債に及んだために、欧州のソ
ブリン・リスクは金融システムのリスクとして、欧州全体に波及する恐れがあ
ります。

 逆に言うと、金融機関がそれだけ巨額のエクスポージャーを抱えているから
こそ、市場においてスペインなどに対する懸念が、国債価格下落という形で増
幅され易くなっているのです。

 懸念が残る欧州の金融機関ですが、懸念の大きさは国によってまちまちで、
先日のFT紙では、金融機関が「生きている」(フランス、イタリア)、「死にか
けている」(ドイツの州立銀行、スペインの貯蓄銀行、ギリシャ)、「既に死んで
いる」(アイルランド)という色分けをしていました。

 ただし一番悪いアイルランドでは、危機直後から国有化の方策を打ち出し、
既に銀行問題に対処済みであり、スペインも貯蓄銀行の統廃合に向けて動き出
しています。

 FT紙は最も大きな問題が残ったままなのは実はドイツであり、ドイツの銀行
は資本の量と質の両方を改善させる必要があるという格付け機関フィッチのコ
メントを紹介しています。

 そして、こうした背景があるためか、ドイツは現在BIS(国際決済銀行)が中
心となり、来週にも取りまとめ案の発表が予定される「バーゼル3」の規制強
化に最も強硬に反対していると指摘しています。

 製造業の世界においては、その底力を世界に見せつけているドイツですが、
(日本と同様に)金融業は本質的に適性に欠ける部分があるのかもしれません。

好調なドイツ経済


 株の動きを見ていると、主要国の景気は全く冴えないように思えて来ますが、
実際には国によって状況はまちまちです。

 例えば、米国景気は、個人消費も企業活動ともに下向きで懸念は高まってい
ますが、ドイツの経済は「絶好調」に近い雰囲気さえあります。

 先日発表された、ドイツの第2四半期のGDPは第1四半期に比べて2.2%で、
年率に換算すると中国やインド並みの9%以上の成長という数字になり、これは
東西ドイツ統一後最高の水準です。

 ユーロ圏諸国は全般に緊縮財政を行っていて、隣国のフランスは来年の成長
見通しの下方修正を発表しているような状況なのに、緊縮財政の先頭を走って
いたドイツ一国だけは例外的に好調に成長しているのです。  

 主な要因はユーロ安で、新興国向けの輸出が好調であることですが、この結
果、ドイツの製造業の景況感は絶好調です。
 
 通貨ユーロが割高で、域外での輸出拡大が難しい状況の時はユーロ圏内への
輸出で食いつなぎ、ユーロ圏が不調になるとそれに伴うユーロ安を武器に域外
への輸入にドライブをかけるわけですから、ドイツにとって通貨同盟はこれま
でのところ、とても上手い具合に機能しているようです。
 
 もちろん、ユーロ圏の他の国に危機が起こると、ドイツにその尻拭いの請求
書が回ってくるという、ドイツにとってはマイナスの面もありますが、最近の
好調なドイツ経済は、ユーロ圏というシステムが意外に強靭な面があるかもし
れないと思わせるものです。

 話は変わりますが、ドイツ製造業の強さは、単に為替レートだけの問題では
ありません。

 それを示すデータは日本にもあります。昨年の日本のブランド別の輸入車で
はドイツ車の独壇場で、1位フォルクスワーゲン、2位メルセデス・ベンツ、3
位BMW、4位アウディといった具合です。その次は日本メーカーの逆輸入ブラン
ドが入ってくる状況で、日本人は日本車かドイツ車しか買っていないといって
も、言い過ぎではありません。

 品質にうるさい日本人がこれだけ評価しているわけですから、その品質の魅
力がどれだけ大きいかが分かります。

 ドイツは貿易黒字のGDPに対する割合が中国並みに高く、その輸出依存症の
体質は、米国のエコノミストなど一部から強い批判を受けている状況ですが、
品質を高めて競争力を維持する姿は、日本にとっても一つの参考になるのでは
ないでしょうか。

スペインとポルトガルの問題

 5月のギリシャの財政危機拡大以降、欧州の問題国として注目が集まっている
のは、ワールドカップで見事に優勝を果たしたスペインと、その隣国のポルト
ガルです。

 先週、格付け会社ムーディーズはポルトガルの格付けを2段階引き下げて「A1」
としました。

 このイベリア半島の両国の財政問題は、「ギリシャの次はどこだ」という議論
が始まると、必ずといってよいほど登場するのですが、実は公的債務の水準自
体はそれほど高いわけではありません。

 これは昨年末時点の推計値ですが、GDPに対する公的債務の水準は、ギリシャ
113%に対して、スペインは53%、ポルトガルは77%に過ぎません。日本の同じ数
字が200%近いわけですから、全く比較になりません。

 他のユーロ圏諸国でも、イタリアは115%もの債務があるわけですから、スペ
インやポルトガルの国民はどうして自分達ばかりが攻撃されるのか、と反発し
たくもなるでしょう。

 では、スペインとポルトガル経済のどこが問題なのでしょうか。

 その一つは、目先の財政赤字の水準で、スペインの昨年の赤字は11%を超えて
いて、ポルトガルも10%近い水準でした。これに対してイタリアの同じ数字は
5%程度です。

 このような事情もあって、最近、両国政府は国民の反発を覚悟の上で厳しい
歳出削減策を実施しているのです。

 もうひとつのスペイン経済の弱みは、高い失業率で、3年前は8%台だった失
業率は、今や20%近くにまで接近しています。ポルトガルの失業率も10%を突破
し、さらに悪化する勢いです。

 さらに、スペインでは、住宅バブルに加担した地域金融機関などに対する懸
念が高まっています。 

 このように、スペインやポルトガル経済には、確かに、さまざまな問題を抱
えているのですが、実は、現在何よりも問題なのは、ユーロ圏諸国の国債持合
いの構図です。

 通貨ユーロが導入された後、欧州の金融機関や投資家は、為替リスクが無く
なったことを背景に、ユーロ圏各国の国債に対する投資を積み上げて来ました。
 
 現在のスペインやポルトガル問題の本質は、これらの国々の国債を大量に抱
える欧州の金融機関の安定性が揺らいでいるという問題であり、もしスペイン
などに危機が起きれば、欧州の金融システム全体が大きく揺らいでしまうと言
う心配が高まっているのです。
 
 そういう事情があって、スペインやポルトガルにはこれ以上、大量の国債を
発行しなくても、経済がまわるようにしろというプレッシャーがかかっている
わけです。

 欧州のソブリン危機は、確かに債券の発行体であるソブリンの問題であるこ
とは間違いないのですが、それ以上に、買い手の金融機関や投資家の問題であ
ると言った方が良さそうです。

仏英の不動産価格上昇

 フランスの不動産価格が上昇しています。

 欧州経済はギリシャやスペインの財政問題などで不安定な状況が続いている
こと考えると、にわかには信じがたいことなのですが、フランスの不動産価格
は、リーマン・ショック前につけた2008年の史上最高値に迫る勢いだそうです。

 今年前半の半年間で、単位面積あたりの平均価格は8.3%も上昇し、特にパリ
では10%以上値上がりし、過去1年間では15%もの上昇幅です。

 この不動産価格の回復傾向はフランスだけの事ではなく、バブル期の日本並
みの住宅バブルの崩壊が心配された英国でも住宅価格は上昇傾向にあります。
先日発表されたハリファックス住宅価格指数は、前の月よりは少し下がったも
のの、前年比で6.3%の上昇となっています。

 ロンドンの高級住宅の価格は先月前年比20%上昇したという調査結果もあり
ます。

 スコットランド出身の歴史学者ニーアル・ファーガソン氏が2年ほど前に出
版して話題になった「マネーの進化論」では、「家ほど安全なものはない」と題
した一つの章で、不動産が英語圏諸国においていかに人気のある投資対象であ
るかを説明しています。(もちろんフランスは英語圏ではありませんが・・)

 土地も建物も「動かない」資産という安心感があり、投資をするならば不動産
に勝るものはないということが、英語圏では昔から万人が認める真理のような
状況であるというのです。

 その結果、大人であればどんなに経済オンチでも不動産の今後の見通しに関
して一家言持っているといいます。

 実はファーガソン氏自身は、このような不動産に対する信仰を、すぐに崩れ
る「トランプ札の家」に似ているのではないか、という懐疑的な意味で書いて
いるのですが、欧州ではまだまだ「動かない資産」に対する信頼は揺るいでい
ないようです。

 それに、仏英の不動産価格上昇の背景には、リーマン・ショックによって生
まれた人々の金融資産に対する根強い不信感もあるように思えます。

 金利は低いし、株式市場は乱高下が続いています。また金などの貴金属は既
に大きく値上がりしていて資産の大部分を投入するような安心感はないとすれ
ば、お金が不動産に向かうことは理解出来ないことではありません。

 ただ日本の経験からすれば、大きな経済ショックの後にあわてて不動産を買
う必要はなかったとういう歴史の教訓もあります。

 さて、これから展開は、日本の崩壊した「不動産神話」が数十年ぶりに復活
するような日が来るのか、それとも欧州の不動産神話が完全に崩壊することに
なるのか、なかなか興味深いところです。

失われつつあるユーロの信頼

 ユーロ安が止まりません。

 このユーロ安の傾向には、もちろん短期的なポジション操作による混乱や、
短期的な投機なども原因の一部であるかもしれませんが、最大の要因は5月10
日に発表されたEU-IMFの7500億ユーロの支援策と、欧州中銀(ECB)による
国債買取り策にあります。

 特にECBの行動は、通貨ユーロの信認を失墜させるのに十分な、ある意味シ
ョッキングな出来事でした。

 これまでECBはインフレの抑制にパラノイア的とも言える情熱を注ぎ、結果
として長期的な通貨の価値も守ってきたドイツ連銀(ブンデス・バンク)の文
化を色濃く受け継いできたと思われていました。

 ブンデス・バンクの伝統からは、中央銀行が紙幣を刷ってデフォルトするか
も知れない欧州周辺国の国債を買うなど考えられない事でした。それは通貨の
信認を失い、通貨価値の下落(つまりインフレ)を招く恐れがあるからです。

 リーマン・ショック後に英国中銀とFRBが国債購入に手を染めた後も、ECBは
その行動を回避してきました。

 しかし、5月の2回目の週末にはサルコジ仏大統領の強硬な要請に屈服して、
瞬く間に国債買取を飲まされてしまいました。

 その瞬間に、ユーロはドイツの拡張版であるという幻想が崩れ去ったのかも
知れません。

 政治家とすれば、自分たちが判断を躊躇している為に「第2のリーマン・シ
ョック」を起こしたと後世に語り継がれることを、何としても回避したかった
のでしょう。

 確かにあの時の株式市場のパニックは、そのリスクが目の前に迫っていると
感じさせるものでした。

 しかしながら、今回のEU首脳やECBの決断は短期的な株式市場の混乱を回避
したのかも知れませんが、長期的な通貨ユーロとECBへのダメージは測り知れ
ないかも知れません。

 歴史にもしは禁物ですが、もし2年前に米当局がリーマンを保護しリーマン・
ショックがなかったとすれば、おそらくあの時の世界経済の混乱はずっと小さ
なもので済んだかも知れません。

 しかし一方で、金融業界の抱える構造的な問題はそのまま放置され、今頃も
っと激しい混乱が起こっていた可能性もあります。
 
 EU首脳とECBはやや拙速に、これまでの自分たちの信条を放棄して「現実的
な対応」をしたわけですが、その結果が吉と出るか凶とでるのか?

 もしかすると、意外に早く結論が出るのかも知れません。

ギリシャ国民の反乱

 ギリシャ問題はとうとうNY株の大パニックに発展しました。

 6日のNYダウの日中の下げ幅は998ドルでこれは過去最大の値幅だそうです。
この急落の原因の一部は先物の誤発注とそれに誘発されたプログラム取引にあ
りますが、それがなくても投資家達が既にパニック状態にあることは間違いな
いでしょう。

 今回の動きで興味深いのは、市場の動きはやはり人間の心理に大きく左右さ
れるように見えることです。

 ギリシャがデフォルトする懸念はずいぶん前から浮上していたわけですし、
先日のEU諸国やIMFの支援表明によって、当面のデフォルトは回避されたばか
りなので、このタイミングで市場がパニックを起こす必要は特にはないのです。

 個人的には、火炎瓶が飛び交い、デモに関係ない人達に死者がでるような事
態にまで発展したギリシャの暴動のテレビ映像が、投資家の心理にパニックを
引き起こしたのではないかと思えます。

 5月2日に発表された、EUとIMFの支援策では、ギリシャが当面必要とする
資金を供給する一方で、ギリシャに対しては年金支給や公務員のボーナスの削
減やVAT(付加価値税)の引き上げなど厳しい財政緊縮策を飲ませました。

 支援を実施したEU諸国や、他のギリシャ国債の投資家の立場かすれば、ギリ
シャ国民がこの要求をおとなしく受け入れて、将来も高い金利をせっせと払い
続けるというのがもっとも理想的なシナリオです。

 しかし、逆にギリシャ国民の立場から考えてみれば、これから非常に長期間
に渡って生活を切り詰めて巨額の借金を返済していくより、いっそのことデフ
ォルトして借金を一旦チャラにしてもらった方がよっぽど良いと考えるかもし
れません。

 確かにギリシャの一部の人達は、これまでEU諸国から借りまくったお金で贅
沢な年金生活をエンジョイしているので、今回の事態は身から出たサビである
ともいえます。しかし他の多くのギリシャの人達にとっては、借金のツケだけ
を払わされることになると感じるのでしょう。

 現在考えられるギリシャ問題の解決策は、緊縮財政かデフォルトしかなさそ
うですが、これは一部のギリシャ人の安逸な借金生活のツケを払うのが、ギリ
シャ国民か投資家かのどちらか一方を選ぶ二者択一の問題であるともいえるわ
けです。

 ギリシャで起こっている暴動の映像は、海外の投資家の自分たちの都合のよ
い甘い期待に対して、強烈な「ノー」を突き付けているとも言えるのでないで
しょうか。

 欧州の有力な銀行のほとんどは、ギリシャ向けの巨額のエクポージャーを保
有していて、米国の銀行は欧州の銀行向けの巨額のエクスポージャーを保有し
ています。

 ギリシャが本当にデフォルトしてしまった場合は、再びリーマン破綻のとき
のような負の連鎖を覚悟する必要があります。

 世界中の投資家が、ギリシャ暴動の映像から、自分たちの甘い期待が実現す
る可能性が実はそれほど大きくないと感じ取ったとしても全く不思議ではあり
ません。

 今回の市場のパニックはそういうことではないでしょうか。

ギリシャとアルゼンチンの類似性

 今回もギリシャの話題を続けます。

 前回書いたように、ギリシャはおそらく当面の資金をEU諸国やIMFから引き
出すことが出来ると思いますが、中長期的には非常に厳しい状況にあります。

 正直なところ、いずれは何らかの債務の減免策(リスケジュール)を要請し
なければならないことはほとんど不可避のように思われます。

 重大な債務削減はデフォルトの一つの形態です。

 ギリシャ政府の債務残高が現在先進国では日本に次ぐ高いグループにいるこ
とから、よく日本との比較がされますが、実際には2001年の12月にデフォル
トを起こしたアルゼンチンとの類似性の方がよほど高いように思われます。

 デフォルトをする数年前までのアルゼンチンは、為替相場をドル・ペック制
にすることで海外から大量の資本投資を呼び込み、慢性的な経常赤字体質にも
かかわらず、好調な経済を維持していました。

 そしてアジア危機やロシア危機などの後でも一見好調な経済が、さらに海外
からの資本流入を呼び込みました。

 ところが強い為替で輸出競争力が落ち景気が低迷し、アルゼンチンへの資本
の流入が停滞し始めると一気に状況は悪化、景気の悪化から資本は流出に転じ
て、これが調達コストの増加という悪循環に陥りデフォルトしました。

 ドルやユーロなどの主要通貨との為替リンクによる資本流入に頼った経済の
拡大は、何かの拍子に資本の流れが逆流し始めた際に一気に悪循環に陥ってし
まう可能性があります。これは97年のアジア危機、98年のロシア危機、最近の
バルト諸国の危機などどれも共通の構図です。

 ギリシャは、ユーロ圏への加盟による為替のリスクからの解放と、ユーロ圏
諸国の後ろ盾による信用力の高まりによる調達コストの低下によって、他のユ
ーロ諸国から金を借りまくりました。
 
 海外からの資本流入が続いている間は、経済成長は非常に順調で、これがさ
らに資本流入を呼び好循環になります。この状態がアルゼンチンでは1998年、
ギリシャでは2007年ぐらいまでの状況です。

 気がついてみると、ギリシャの対外債務は過去数年で急速に増加しました。
増加部分のほとんどは国債増発によるものだったようです。その結果、ギリシ
ャ国債の7割以上は海外に保有してもらうような状況になりました。

 しかし海外の投資家が抱いていた「ユーロ諸国の後ろ盾」という信頼感が単
なる幻想に過ぎないことが分かった途端に、投資家はリスクに見合う高い金利
を要求し始め、ギリシャの調達を難しいものにさせます。

 これは経済のブームと、その後の資本の逆流による危機の典型的なパターン
ですし、GDPの成長だけを見て投資をしてしまう行為の愚かさでもあります。

 海外から借り入れた資金でギリシャの公務員達はキリギリスのような生活を
送っていたのですが、急に金を返せと言われても既に使ってしまいましたし、
労働組合はまだキリギリス生活を続けさせろと主張しています。

 人間は、いったん良い暮らしを味わうと、簡単には昔の厳しい生活には戻れ
ないものです。

 さて、ギリシャの債券はこのあとどのような運命をたどるのでしょうか。

 ちなみに、デフォルトしたアルゼンチン債は元本を70%削減した上で、償還期
日を30年先まで引き延ばされました。

崖っぷちのギリシャ

 以前からこのメルマガではギリシャ問題は自力で財政を立て直すか、デフォ
ルトしかないと言ってきましたが、後者の可能性が予想より少々早い展開で懸
念される事態になってきました。

 ギリシャ政府が先月4.3%の利回りで発行した2年債の利回りは先日14%近く
にも達し、これはもはや資本市場からの調達が不可能になったことを意味しま
す。

 格付け会社S&Pはギリシャの格付けを3段階下げて一気にジャンク級にしま
したが、それはこの利回りにふさわしい格付けです。

 ドイツが簡単にお金を出すことに合意しないことは、ある意味で予想通りの
展開といえますが、投資家達はつい最近までEU諸国が何とかしてくれると甘く
見ていたのでしょう。最近のギリシャ国債の暴落はその反動の部分もあります。

 何度も繰り返しますが、ギリシャがデフォルトを回避するためには、厳しい
歳出削減をする以外に手はないのですが、連日報道されているギリシャの公務
員のストライキの映像を見ていると、民主主義という政治システムの大きな限
界を感じないわけにはいきません。

 国の危機を救うための痛みを国民が受け入れる準備が出来ていないわけで、
ギリシャの政治リーダーは八方塞の状態なのでしょう。

 この構図、どこかの国も似ていますね。

 今月と来月がギリシャの資金調達の当面の山場で、5月19日には85億ユーロ
の国債償還が控えています。それまでに資金調達を行わないと、国債の元本を
支払えない可能性があるのです。

 おそらく、今回に関しては、あまりにも急激な混乱を回避するためにEUとIMF
が当面の資金は工面する可能性が高いと思われます。

 ただし、ギリシャ政府が国民の反対を押し切って大胆な歳出削減を約束する
必要があるでしょうし、そうしなければもはや事態は収拾不能です。
 
 果たしてそれが出来るのでしょうか?

 さて、ここでなぜギリシャがここまで追い込まれたかを考えてみると、もち
ろん根本には放漫財政との問題があるのですが、危機の直接的な原因は資金繰
りの構造的な問題があります。

 企業倒産の場合も全く同様なのですが、デフォルトの直接的な原因の多くは
資金繰りに窮することにあります。逆に言うと資金繰りさえクリアーしてれば、
債務超過であってもなかなか倒産することはありません。

 今年1月に行われたギリシャ国債の競争入札では、引き受け手は約8割が海
外の投資家でした。資金調達の多くを海外に依存しているわけです。

 特にドイツやフランスの金融機関は巨額のギリシャ向け債権を保有している
ようです。

 ギリシャにとって皮肉なことは、通貨ユーロの加入によって為替のリスクか
ら解放され海外投資家らの資金調達が容易になったのですが、今回は逆に海外
投資家依存の大きさが、調達コストを急騰させ危機を拡大させているのです。

 こう考えていくと、最終的にはまずギリシャがユーロを離脱して、その直後
にデフォルトして債務削減というシナリオを考えてしまうのですが、それは欧
州の金融機関にとっては強烈な痛みになりそうですね。

 今回の事態はメルケル首相にとっても八方塞に近いのかも知れません。
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