グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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今年の世界経済と市場

 新年の株式相場は、世界的にまずまず好調なスタートを切りました。3年前の2008年の大初会では日経平均が600円以上下げるという大暴落を演じ、それが秋に起きるリーマン・ショックの予兆になったことを考えれば、この好調な新年の出だしはとりあえず幸先が良いと言えるのかも知れません。

 とはいえ、世界経済には不確定要因が山積状態です。少々聞き飽きた懸念かも知れませんが、例えば中国の不動産バブルは崩壊するのか?ユーロ加盟国のデフォルトは起こるのか?米国の失業率や不動産融資の焦げ付きは更に悪化するのか?イランや北朝鮮などの地政学リスクはどうなるのか?ウィキリークスは更にセンセーショナルな情報の公開を行うのか?など不安要素を挙げればきりがありません。

 これらの問題のいくつかについては、ほとんどすべての人々の想定を超えるような悪い事態になれば、金融市場にも相当規模のショックを与えることは疑う余地はないのでしょう。しかしながら、このようなイベントに関する人間の予知能力は極めて限られたものであるので、どんなに頭をひねって考えても大した成果は得られそうもありません。

 一方、FRBがドル札を勢い良く印刷しているような状況も手伝って、運用先を求めている資金は世界中にうなっているという現実があります。1,400ドル前後まで上昇している金の価格はその象徴と言えるのかもしれません。

 日本の状況を考えても、1,000兆円に迫ろうとしている国の借金は、今年でないにしても、このままでは個人の金融資産では吸収出来る規模を超えてしまうことは必至の情勢です。そうなれば凄まじい増税か、日銀によるなりふり構わない国債の引き受けぐらいしか想像できず、もし後者であれば円紙幣の価値暴落につながります。

 そういった可能性を念頭に置いた場合に個人の金融資産は何処に置けばよいのか、真剣に考えざるを得ない状況が少しずつ近づいてきている気配が感じられます。

 その場合も、紙の紙幣暴落のヘッジ先として金(ゴールド)に資金が向かうことは、バリュエーションの適正さの判断を別にすれば、方向性としてはとても合理的ではあります。

 そうはいっても、金やその他のコモディティーは金融資産の受け皿としては器が小さい、さてどうしようと言うのが、現在の金融市場の状況ではないのでしょうか。

 このような複雑で先行きの見通しが不透明な状況で、果たして株式は資金の置き場所としてふさわしいのか?というのは悩ましい問題です。しかし、少なくとも、いつ主要国の自国通貨暴落策が発動されるかわからないような状況下では、国債を買うよりは遥かに理にかなっていると言えるのかも知れません。

 昨年の年末から続いている、債券売り株買いという市場の流れは、そういった市場の深層心理が少しずつ顕現化してきているのではないかと、勝手に考えています。

 そうであるとすれば、株買い債券売りの流れはもう少し続きそうな気もするのですが、今年の相場はどうなるのでしょうか・・・。
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来年は日本株がいよいよ上昇か?

 今年の株式相場もあと数日で大納会を迎えますが、どうやら昨年末とほとんど代わり映えしない水準で終わる可能性が高そうです。

 相場を詳しく見ていない人からすれば、「まだ日本株は冴えない」という印象を与えたかも知れませんが、詳しく中身をみると、なかなか面白ことに気がつきます。

 まず、株ではないのですがリートが最後の3カ月で大幅に上昇しています。9月までは少し上昇してもすぐに押し戻されてしまうような状態が続いていたのですが、日銀がリートを購入すると発表したのをきっかけに、3ヵ月間ほぼ一本調子に近い上昇となりました。

リート


 年末にかけて、上昇したのはリートだけではありません。リートに少し遅れてジャスダックやマザース、さらに少し遅れて東証二部の株も、定規で直線を引いたようなチャートを描いて上昇しました。

 リートや小型株の上昇は、リーマン・ショック以来凍りついて銀行預金などの安全資産に避難していた個人の金融資産が、ようやく、少しずつではありますがリスク資産に向かい始めたことを示唆しているように思えます。

 リートの配当利回りの魅力については、筆者はことあるごとに触れて来たつもりです。最近の価格の大幅上昇で利回りはだいぶ低下しましたが、それでもリートは4.5%の利回りがあります。

東証二部加重平均の配当利回りは2.14%、東証一部の加重平均でも1.97%あって、引き続き1%台そこそこの10年国債の利回りの倍近くはあるわけです。(12月24日現在)。

 日本の株と世界の主要株の比較でいえば、PER(株価収益率)は米国の最も主要な指標であるS&P500よりもやや低く、DAXなど欧州株よりはやや高めという状況です。

 今の日本の株価のバリュエーションで特に低いのが、PBR(純資産倍率)で、東証一部は1.13倍で歴史的な低水準圏にいますが、二部に至っては0.65倍と株価が純資産価値を遥かに下回っている状況です。

 個人的にも東証二部のいくつかの銘柄を詳しく見続けているものがありますが、例えばトップ・メーカーの下請けという地味な業態で、リーマン・ショック後の荒波のなかでも、地道な努力でコツコツ利益を出し続けている企業があります。そうした会社の株価が、解散価値の1/3程度しかないといった状況が珍しくないのです。

 そういう株を見ると、今の市場の評価は恐らく正当なものではなく、社長さんは「こんなにひどい評価しかされないのであれば上場などしなければ良かった」と嘆いている姿が目に浮かびそうです。

 ただし、市場もいつまでも、このような企業を放置することはないでしょう。行き場のない金融資産はうなるほどあるのです。

 このような企業の株価に必要なのは、きっかけだけで、何らかのきっかけで価格の上昇が始まれば、市場は割安に放置された株の存在に気が付いて、突然状況が変わるものです。

 そのような突然の状況の変化による見直し買いは、過去3カ月にリートの市場で起こったことであり、それが他の資産クラスでも起こる予兆は高まってきているように思えます。

 来年は、楽しみな年になりそうな気がします。

FT紙のゴールドマンCDS取引疑惑の記事

昨日のFT紙に、2007年にゴールドマンがモーゲージ証券(MBS)関連のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のショート・スクィーズを引き起こして、空売りしている投資家を痛めつけ(kill)ようとした疑惑があるという記事がありました。

ショート・スクィーズというのは、価格を押し上げて、空売りしている人たちがパニック的に買い戻すことを誘発させる状況のことで、その買い戻しによって価格は更に上昇します。

FT紙の記事はやや事実関係が混乱していて、CDSのショート・スクィーズを仕掛けてCDSを「人為的に安い価格」で買おうとしたと書いてありましたが、これは誤解を生む書き方です。正確にはMBSの価格をスクィーズして押し上げCDSの価格を押し下げようとした、ということだと思われます。CDSを買うのはMBSの「保険」を買うのと同じことで、MBSの価格が上がれば、その保険であるCDSの価格は下がるという、少しややこしいい関係にあるのです。

ショート・スクィーズはショート(空売り)が出来る市場ではしばしば見かける光景で、日本の株式市場でもときどき発生しています。

ゴールドマンなどウォール街の金融機関やヘッジ・ファンドなどは、いろいろな市場で常にショート・スクィーズで儲けるチャンスをうかがっています。そのようにかなり日常的な行為なのですが、中にはかなり悪質なケースがあって、「市場操作」の疑義が浮上する事もあるのでしょう。

この記事のケースは米上院が問題にしているらしいのですが、現実的には「市場操作」の立証はなかなか容易なことではなさそうです。



リートの次はどこに資金が向かう?

 Jリートの価格が堅調です。東証リート指数は10月に、長い間の壁だった1,000を突破すると、そのまま一気に先週末には1,100直前まで上昇しました。

 オフィス賃料市場は低迷が続き、空室率は上昇傾向で、賃料の値下げ合戦さえしばしば耳にするような全く対照的な状況でしから、リート市場の絶好調ぶりには、少々違和感を覚える方もいるかも知れません。

 個人的な見解ですが、リーマン・ショック以来長いこと放置され続けてきたリートの利回りの魅力に対する見直しが、ようやく入ったのだと思います。

 直接的なきっかけとしては、10月初旬に日銀が発表した包括的金融緩和措置によって、長期債の利回りの低下を促しただけでなく、日銀自身が金融政策の一環としてリートを買入オペの対象に組み入れることを決めたことです。

 特に10年国債の1%割れの状態がしばらく続いてしまったことに象徴されるような長期金利の低下は、ボディーブローのように効いて、利回りの高いリートに機関投資家の資金を向かわせたような気がします。

 年初には、リートによっては10%近い利回りを得ることが可能だったわけですから、運用難の機関投資家としては、リートに目が行くのは時間の問題だったのかも知れません。

 さて、最近の株式市場を見ていると、このような運用難の資金が次に向かう先として、リートほどではないにしろ債券に比べて大幅に利回りの高い株式に注目が集まったとしても、全く不思議はありません。

 例えば一部の小型株の中には、リーマン・ショックによって、大きく下落したまま、目立った水準訂正が行われていないものも目立つように思えます。

 リーマン・ショックから2年以上が経過しました。あのときはほとんどすべての産業が巻き込まれた大混乱になったわけですが、最近の好調な企業業績をみれば、やはりリーマン・ショックは「金融界の暴走の問題」だったことが、だんだん明らかになってきているようにも思えます。

 世界経済は引き続き大きな不確定性の雲に覆われているのですが、株式市場の動きは少々楽しみな部分もあります。

なぜ為替介入第一撃は上手くいったのか?

 6年半ぶりの為替介入は、とりあえず最初の数日はうまくいったようです。

 英FT紙は、今回の日本政府の為替介入によって一部のヘッジ・ファンドが大
きな損失を被ったと報道しています。実名を挙げているのは、「アルゴリズム取
引」で有名な、英マン・グループのファンドなどです。

 マン・グループは、コンピュータのアルゴリズムで、市場のトレンドに追従
する「トレンド・フォロー型」の代表的なファンドとして有名です。

 トレンド・フォロー型のファンドは、トレンドがあるかどうかを人間が判断
するわけでなく、コンピュータのアルゴリズムが感知します。つまり、どうし
てそのトレンドが出来たかということには一切関係なしで、とにかく市場にト
レンドが生まれた時にその流れに乗るという戦略なのです。

 円の為替相場については6月初旬から先週の介入まで、明確なトレンドがあ
って対ドルでは10円以上も円高が進みました。こういったケースでは、トレン
ド・フォロー型のファンドにとっては絶好の稼ぎ時であり、マン・グループな
どはこのトレンドに乗って円買いのポジションを膨らませて来たと思われます。

 今回、6月からの円高トレンドが、日本政府の介入によって、突然崩れた為に、
トレンド・フォロー型のファンドは、これまでの貯めて来た利益を大きく吐き
出すことになったのです。

 こうして見ると、6年半ぶりの介入が、意外に上手くいったように見えるのは、
久しぶりの介入によるサプライズ効果とともに、市場参加者のなかに、トレン
ド・フォロー型のファンドの存在感が増したことも一因であるのかもしれませ
ん。

 介入をきっかけに始まった円安傾向が、もしもうしばらく続くのであれば、
トレンド・フォロー型のファンドは円買いポジションから円安ポジションに転
換する可能性もあります。こういったファンドの存在は、一旦トレンドが発生
した場合はそのトレンドを一層強める効果があるのです。

 そうなった場合、この6年半ぶりの為替介入は、予想外の大きな効果をもた
らす可能性はゼロではありません。

 ただし、絶対にしてはいけないことは、今回もし偶然に予想外の円安トレン
ドになったとしても「国が為替相場をコントロール出来る」と勘違いをしてし
まうことです。

 介入第一撃が予想外に効果があったのは、単なる偶然であって、日本政府の
「英知」が要因ではないからです。

 逆に、もし第一撃の介入効果が早期に剥落して、再び円高トレンドに戻って
しまった場合は、二回目以降の介入を行ってもサプライズ効果は薄く、もはや
トレンドを変えることは出来ないでしょう。その場合に介入を続けると「泥沼
化」するのが目に見えています。

  いずれにしても、為替の介入は、上手くいった最初の一回限りにするのが
賢明であると思われます。

不思議の国の為替相場

 市場というものは元来論理的ではありませんが、最近の円の為替相場ほど不
思議な状況はなかなかないかもしれません。

 日本の政治の混迷や、世界経済の先行きの雲行きが怪しくなって、日本の輸
出産業がダメージを受けると言う観測が高まるほど、市場は「円買いを浴びせ
る」からです。

 政界が混乱して必要な施策が実行されそうもなかったり、輸出企業が苦境に
立たされたり、国力の低下が懸念されるならば、内外の投資家は通貨に対する
「売りを浴びせる」のがごく自然の姿です。

 実際、90年代のアジア危機や、ロシア危機、それに最近のユーロもそうです
が、経済が危機に陥れば通貨は大幅に下落するのが普通です。

 しかし、近年の円相場では、「日本の政治が混迷しているぞ!」、「株が低迷し
て景気が悪くなるぞ」といって、ガイジンだけでなく国内の投資家も日本円を
競って買いにくるわけですから、これはかなりわけの分からない状況です。

 野党の党首などからは「政府がきちっとした対応が出ないから円高になる」
という声が聞かれます。「きちっとした対応」というのが単に為替介入の事だけ
を指すならその意味は通じなくもありませんが、現政権のいろいろな分野での
無策ぶりは長期的には非常に立派な円安政策であり、本当は「円安論者」の方々
には大いに誉めたたえられてしかるべきです。

 前回、70円台の超円高を記録したのは1995年4月のことですが、当時日本は
阪神大震災のあとで、バブルの傷跡から抜けきっていないことが次第に明らか
になってきた時期でした。

 この時の円高は、結局長続きせず、その後日本経済は山一証券や長銀の破綻
などの時期に向かうことになり、金利の低さもあり長期的な円安相場となまし
た。1998年の8月には150円近い円安になります。(ただし、98年の秋には、
円売りのポジションを膨らませ過ぎたヘッジファンドのポジション解消で、再
び急激な円高になりますが・・・)

 こうして考えると、本当に日本の先行きに全く希望が持てないのであるとす
れば、現在円買いをしているガイジンたちが、いつまでも、魅力も金利もない
円を保持したままでいるとは思えません。

 したがって、最近の為替を動かしているドライバーは、どんな理不尽な材料
でも利用してしまおうという一部の市場参加者の思惑だけで、所詮一時的な材
料であるだけのような気がします。

 そして、マスコミや政治家が「円高、円高」と大騒ぎすればするほど、市場
の術中にはまることになります。

好業績なのに下がり続ける株価

 日経平均株価がとうとう8800円近くまで下げました。

 企業は、この円高の環境にもかからず、立派な業績をたたきだしているので
すが、投資家は株価に良い材料にはあまり関心がない状況のようです。

 この結果、東証一部加重平均の予想平均配当利回りは2.17%で、これは、10
年国債利回りの2.4倍近い高利回りです。

 最近企業は、業績見通しをかなり慎重に、控えめに示す傾向がありますから、
経営環境が著しく悪化しない限り、実際には配当利回りはもっと高くなりそう
です。

 企業の業績の割に冴えない株価という状況は、グローバルな現象で、NYダウ
平均の予想配当利回りは約3%で、こちらも2.5%を割り込んだ米国10年債利回
りを遥かに上回っています。

 個別の企業を見ても、世界的な優良企業でも驚くほど高い配当のもの数多く
あります。(もちろん、配当り利回りだけで投資の判断をすることはお勧めしま
せんが)。

 ダウの利回りが10年債の利回りを逆転するのは、リーマン・ショック直後以
来の出来ごとで、それ以前は1920年まで記録がないそうです。

 この現象には、「株価が割安」という見方と「債券がバブル」という両方の見
方があります。おそらく、その両方なのでしょう。いずれにしても、世界経済
の先行きに関して、非常に悲観的な見方が投資家の心理を支配していることは
間違いないのでしょう。

 世界経済が大きく落ち込み、企業は将来、大幅な減益を余儀なくされるとい
うのが、現在市場が織り込んでいるメイン・シナリオなのでしょう。

 ただし、リーマン・ショック直後は、パニック的な状況の中で、人々は大恐
慌の再来を本気で心配したわけですから、今回の株価と債券の利回り逆転は、
少々度を越した心配であるようにも見えます。

 英FT紙は、歴史的に見れば、利回り逆転の時期に株を買った投資家は、相場
の大底のタイミングをつかんだと指摘しつつ、残念ながら、時代が変わったの
かもしれないという見方も示しています。

 どうやら、世界の投資家から「夢」とか「希望」という概念が、かなり希薄
になっている状況であるようです。ただ、過剰な「夢」は「バブル」を生むリス
クもはらむわけですから、過小の「夢」というのも健全さを保つ上で悪くない
ことなのかも知れません。

 投資家の「夢」を膨らませるには、企業が今後も好調な収益を出し続けるこ
とが大前提です。そういう視点で、今回のグローバルな利回り逆転状況を、も
う少し状況を見守ることにしましょう。

ロシアの森林火災と小麦価格

 この夏のロシアの記録的な猛暑は、記録的な森林火災をもたらし、首都モス
クワでも近郊の森林火災の煙を避けるために、軍隊用の本格的なガスマスクを
着けて街中を歩いている人までいました。

 こんな大袈裟なガスマスクを一部の市民が持っているということもビックリ
ですが、ロシア政府の情報統制ぶりも相変わらずスゴイようです。

 森林火災は、24年前のチェルノブイリ原発事故で放射性物質に汚染された地
域に広がっていて、汚染物質が火災によって空中に舞い上がり、再びまき散ら
される懸念が高まっています。

 しかし、ロシアのテレビは本当に懸念される現場の状況や映像は一切放送し
ないで、代わりにプーチン首相自身が水を積んだ小型飛行機の操縦をして、森
林火災の現場に水を「爆撃」する様子などを放送しています。
 
 水爆弾が「見事に命中!」などとはしゃいでいる映像を見ると、いくら「管
理された民主主義」のロシア国民であっても、こんな時代錯誤の演出が通用す
るのか?と疑問に思ってしまいます。
 
 さて、その管理民主主義国家(ロシア政府はこれを「主権民主主義」と呼ん
でいます)は、先日、年内の小麦の輸出の停止を決めました。
 
 これによって小麦の国際価格は、シカゴの先物価格が、1ブッシェル(日本の
米の一俵のようなもの)5ドル近辺で推移していた価格が、一時8ドル以上まで
跳ね上がりました。(現在7ドル台前半)
 
 小麦の価格と言えば、2007年から2008年前半にかけて、世界的な商品価格の
急上昇に加えて、豪州の干ばつなどもあって2年間に3倍以上も跳ね上がりま
した。近所のパン屋が何度も値上げを繰り返していたことを覚えています。(そ
ういえば、パンは値上がりしたままだ・・・)
 
 12日、米国農務省(USDA)はロシアの干ばつの影響もあって、2010-11年の
世界の小麦の生産見通しを一か月前の見通しより2.3%引き下げました。英FT紙
では、小麦価格の上昇に米国の農家が喜んでいると報道しています。
 
 さて、小麦価格がさらに上昇するような展開になるかどかうかは分かりませ
んが、農産物を含めた資源の産出量が、新興国の消費の急拡大が続く現状にあ
って、不測の事態に対応できるほど十分なものではないことは間違いなさそう
です。
 
 この問題はリーマン・ショックによって忘れかけていましたが、今年のロシ
アの干ばつ問題は、将来の農産物不足への懸念を思い出すきっかけになりまし
た。

1%割れした10年国債利回り

 先週は、10年の日本国債の利回りが2003年8月以来の1%を割り込む局面が
ありました。

 2003年といえば、世界的にデフレに対する心配が高まり、6月には米国の10
年債利回りが3.1%付近まで下がる局面がありました。現在の米国債の利回りは
もっと低いのですが、当時はこの水準でも十分に「驚くべき利回りの低さ」で
あると感じられたものです。

 その時、日本国債10年物の利回りは、日中ベースで0.43%まで低下しました。

 この日本国債市場の雰囲気とすれば、「驚くべき利回りの低さ」という次元を
遥かかに超えて、何か債券とは別の商品を取引しているような感覚であったよ
うな気がします。

 今回の国債利回りの低下も世界的な現象で、米国10年債の利回りは3%を割り
込んでも、まだ下がり続ける気配を見せています。

 7年前の金利低下の時もそうでしたが、金利低下はジリジリ長い時間をかけて
起こります。

 前回は2002年の11月に10年債の利回りが1%を割れて、その後少しずつ、あ
とからチャートを見ると定規で直線を引いたように一定のペースで、利回りが
低下しました。

 最初はあまりにも低すぎる利回りに、それなりの抵抗があるのですが、金利
低下がジリジリと長期間続いていくうちに、利回りに対する「常識的な感覚」
が次第に失われていきます。

 後から思えば、10年で0.43%の利回りなど、それ以上の金利の低下余地と、
逆に金利上昇してしまった場合のリスクを比較すれば、全く考えられないよう
な事です。しかし、長い時間をかけて浸透した「感覚のマヒ」によって、この
ような事態が発生したわけです。

 ちなみに、7年前の金利低下局面では、2003年6月末から米国債利回りの急
上昇が起きて、日本国債の利回りもパニック的な上昇に直面します。

 6月に0.43%まで付けた利回りが、9月の初旬には1.7%近くにまで到達します。
(ちなみにこの時の金利上昇は「VaRショック」と呼ばれます)

 日本の国債等(国債と財投債)の発行残高は、7年前には600兆円を少し超え
た程度だったのが、現在は850兆円前後にまで増加しています。

 250兆円の発行額増加ということもまた、「感覚のマヒ」無しには、受け入れ
ることが出来ない数字です。

 これだけ、発行額が増えているということは、利回り急騰が起こった場合の
痛みが、その分だけ大きくなっているということです。

 さて、国債利回りがこれからどのような推移をたどるのか分かりませんが、7
年前の経験では「感覚のマヒ」が蔓延すれば、あとで手痛いしっぺ返しが起こ
ることを学びました。

 今回は、市場参加者の金利に対する常識的な感覚、それから政治家と国民の
国債発行額に対する常識がマヒしないことを祈っています。

減少傾向にある金の採掘量

 不安定な株式市場を横目に、金の相場は高値安定が続いています。

 しかし、今の金の価格は採掘者にとっても十二分に魅力的な水準であるはず
なのに、実は世界の金の採掘量は2001年頃をピークに減少傾向が続いています。

 金の生産量は80年代から90年代には大きく増加しましたが、その後、今世
紀に入ると伸び悩んでいるのです。

 特に、かつての金の最大の産出国であった南アフリカでは、70年代をピーク
に採掘量が減っていて現在はピークの4分の1程度にまで落ち込んでいます。

 オーストラリアや北米大陸では、生産はまだそこまでは激しく落ち込んでい
ませんが、減少傾向が続いています。
 
 これは、過去100年以上の採掘活動によって、比較的採掘が容易な浅い深度
にある鉱床にある金が掘りつくされ、現在は採掘が容易でない深い深度の鉱床
しか残っていないことが大きな要因です。

 その上、先進国では環境問題、労働環境、安全性に対する、配慮がますます
必要になり、採掘を増やすことが容易ではなくなって来ているようです。

 一方で、中国などのアジア諸国や、ロシア、ペルーなどといった国々では金
の採掘を増やしています。
 
 その結果、中国は、2008年から南アを抜いて世界最大の金産出国になってい
ます。

 ただしこのような新興国の金鉱山も、採算性や安全性の面などさまざまな問
題を抱えていて、金の採掘は、簡単な事ではないようです。

 日本も13世紀マルコ・ポーロの時代には「黄金の国ジパング」と呼ばれたわ
けですが、現在は金生産国としての面影はあとかたもありません。

 江戸時代に佐渡の金鉱などを掘りつくしてしまったからです。

 金鉱の寿命は短い場合は数年程度という場合もあり、次から次へと新しい鉱
山を開発しないと、生産量は維持できないようです。

 そう遠くない将来に、金は掘りつくされてしまい、あとは既に採掘されて地
上にあるさまざまな形の金を再利用するしかないという説もあるようです。

 地上の金と言えば、世界中にいろいろな「埋蔵金」伝説もあり、どこに大量
の金が隠されていても不思議な状況ではないのです。

 しかし、いつまでも「伝説」が伝説以上のものでなく、実際に大量の埋蔵金
の発見というニュースがないのであれば、最近の金の生産量頭打ちの状況が、
金の相場にとって好材料になっていくことは間違いないようです。
 

中国の日本国債購入

 5月の中国からの日本国債購入額が7300億円に上ることが分かりました。今
年1月から4月までの購入額が5400億円に上ったことが話題になったのがつい
一週間ほど前のことですから、中国からの日本国債購入が急激に加速している
可能性があります。

 これは財務省の国際収支統計によるもので、「中国からの」という意味は必ず
しも中国政府に限ったものでなく、民間の投資資金なども含みます。

 中国の昨年末の外貨準備高は日本の2倍以上の2.4兆ドル(210兆円ほど)で
すから、4月までの5000億円以上の日本国債を購入したというニュースは外貨
準備のほんの一部を日本円に回しただけなのかと思い、それほど重大なことで
あるとは考えませんでした。

 しかし、5月にも7000億以上の国債を購入したとなると、何か大きな異変が
起きている可能性もあります。

 中国はこれまでもドル偏重になりがちなこと嫌い、そして恐らくドルの先行
きを懸念して、外貨準備の多様化を図っています。IMFのSDR(バスケット通貨)
建ての債券を購入したり、ユーロへの投資を増やしたりしてきました。

 5月の初旬には、ギリシャ問題でユーロが急激な下落をしています。

 ユーロの暴落は、中国にいっそうの通貨の分散をさせることの必要性を認識
させることになったことは、間違いないでしょう。

 それと、中国の日本経済に対する見方も少しポジティブになってきているの
かも知れません。

 さらに中国は、6月19日には人民元の切り上げ再開を発表しています。人民
元のドルペック制は人民銀行がドルを買い続けることで維持してきましたから、
今後はドルの購入ペースは落ちることが予想されます。

 いろいろな意味で、中国が日本国債を購入することは、少なくとも円資産が
外貨準備のある一定の割合に達するまでは不思議なことではありません。

 それが、ギリシャ問題をきっかけに始まったということなのかも知れません。

 10年で1%ちょっとしか利回りがない国債には、海外の投資家は見向きもしな
いと思っていましたが、思わぬところから買い手が現れたわけです。

 先月日銀が発表した統計によれば、3月末の国債や財投債の発行残高834兆円
対して、海外の政府や投資家が保有する分はたったの47兆円、割合でいうと5%
ちょっとに過ぎません。

 仮に中国が、数十兆単位で日本国債を買ったところで、全体の割合からすれ
ばさほど大きくないのですが、もしそうなった場合は国債市場の関係者は「い
つ中国からの巨額の売りが入って、相場が崩れるのか」ということにビクビク
することになるのでしょう。

 とにかく、何か新しい展開になることは間違いなさそうです。

米GSE債の安全性

 米国の住宅金融機関ファニーメイやフレディマックのような米政府が支援す
る法人のことをGSE(Government Sponsored Enterprises)と呼びます。

 今回の金融危機は、米国の住宅ローンの問題から火の手が上がった事もあっ
て、リーマン・ショックの2か月前の2008年7月にはファニーやフレディなど
の経営不安が急速に高まりました。

 GSEの債券は、長いこと「暗黙の政府保証」があると考えられ米国債に匹敵す
る信用力があると信じられてきた上に、米国債より利回りが高かったため、外
国政府を含めてグローバルな投資家に人気の高い債券でした。複数の邦銀も兆
円単位の投資をしてきました。

 そんなGSEが深刻な危機に見舞われたわけですから、1年8カ月前にはそれら
の邦銀の経営者は肝を冷やしたわけです。

 しかし米国政府も、さすがにGSEの危機を放置するわけにいかず、リーマン・
ショックの1週間ほど前に、ポールソン前財務長官はファニーとフレディを政
府の管理下に置くと発表しました。

 この措置によって、GSEに対する不安は一旦峠を越えて、半年ほどするとGSE
の債券に投資家が戻ってきました。

 しかしながら、GSEの問題はこの措置によって根本的に解決したわけではあり
ませんでした。米政府は、2つのGSEを管理下に置いただけであって、それら
の債務に対して明確に保証をしたわけでありませんから。

 米国政府としては、明確に「保証」をすると、自らの債務が急速に膨らんで、
見た目の財政状況が大幅に悪化してしまうことになります。

 ポールソン前長官を引き継いだガイトナー長官は、「GSEは安全、大丈夫」と
世界中で無責任なことを言って回り、各国の投資家を安心させようとしてきま
した。保証をしているわけではないのに、「事実上の保証」という印象を与えよ
うとしてきたわけです。

 そして、これまでのところこのやり方で何とかワークしていましたが、最近
この問題が再び大きな問題に浮上する懸念が感じられるようになってきました。

 先週、いつまでもたっても改善の兆しが見えないGSEの経営状況に対して、
下院金融委員会の委員であるスコット・ガレット議員が1.6兆ドルにも及ぶフ
ァニーとフレディの負債が法的には米国政府の債務になってないにもかかわら
ず、暗に保証があるかのような振りをしている問題をガイトナー長官に問い詰
めました。

 ガレット議員の執拗な質問に長官は「GSEの債務は政府の債務ではない」と認
めさせられたものの、「我々はこれらの機関が、過去および将来に渡って
債務を履行するのに十分なリソースを持っていることを示さなければならな
い」といった曖昧な表現を繰り返すだけで逃げました。

 ガイトナー長官は相変わらずですね。

 さて、米国財政のさらなる悪化は確実な状況で、仮にそれが手に負えない事
態にまでなってしまった場合には真っ先に切り捨てられる可能性があるのは、
明確な保証のないGSEの債務でしょう。

 そう考えると現在のGSE債務に対する安心感は非常に危ういものであると言
えそうです。

 ガレット議員は、さらにガイトナー長官にGSEの債務問題に関する追及をす
る構えを見せており、この問題に対する世の中の意識もこれから高まっていく
ことになるかも知れません。

 まだ大量にGSEの債券を抱える投資家に、再び眠れない夜が訪れるのも、そ
れほど遠い将来ではないかもしれません。
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