グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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世界規模の金融バブル崩壊現象

 皆様お久しぶりです。本日からブログ復活です。

 筆者にしては珍しく、メルマガを書いている時間もないほど忙しかった夏が過ぎ、最近は少し余裕が出て来ましたが、気がついてみると世の中が大きく動いていました。

筆者が本業で忙しかった理由は、国内外の金融機関が、目先の業績改善のためにまた、担当者が巨額のボーナス獲得に目が眩み暴走して引き起こした事件を検証するような仕事を、なぜか立て続けに依頼されたからです。

そのような事件の検証作業を続けて強く感じたことは、リーマンショック前の数年間の金融界は、目の前にぶら下がったボーナスというニンジンに食らいつく為には、相当ひどいデタラメもためらわなかった人達が、地球上のあちこちに現れた時代であったということです。

もちろん金融界の大多数の方々はそうした不届き行為に直接的に関与しているわけではないのでしょうが。しかしながら、個々の具体的な事例を見ていくと、カネ中心で何でもありの病気がここまでひどい症状を引き起こすのかと驚かされます。

サブプライム住宅ローンの証券化に対するデタラメなどは、金融危機の引き金を引いたのと、規模が大きかったことから、その具体的な手口が本や報道で広く暴露されました。しかし、サブプライム・ローンの問題はそうした時流のなかで、たまたま世間に広く知られることになった現象の一つに過ぎず、他にも表面化しない無数の事例があるのでしょう。

先月中旬、全国銀行協会の永易会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は金融ADR(紛争解決制度)の和解あっせん手続きの申立件数が今年4~6月は115件に達したことを明らかにしたと報道されています。金融ADRは、金融商品の販売などに関するトラブルを裁判外で対処するためにちょうど1年前にスタートした制度です。

 大手を中心とする国内のいくつかの銀行は、リーマンショック前の時期を中心にかなりリスクの高い為替デリバティブ取引を、銀行にとって非常に有利な条件で取引先の中小企業などに販売し大きな社会問題になっています。
 こうした背景からADRの申請件数が、制度発足後急増を続けているのです。

 国内の金融機関でもこのような暴走があったわけですが、日本の金融機関の場合は個人のボーナス獲得というよりは、組織全体の業績改善に対する焦りが、常識的な感覚を鈍らせてしまったのでしょう。

 それにくらべると、個人の業績がそのままダイレクトに個人のボーナスに反映される海外の金融機関のデタラメは国内の金融機関とはけた違いであったのかもしれません。ウォール街の金融機関は、最近洪水のような訴訟に見舞われていますが、先月米住宅金融局(FHFA)が17の金融機関対して2,000億ドル(約15兆円)の住宅ローン担保証券に関する訴訟を起こして、その訴訟規模に対するどよめきを生みました。

 筆者はこの訴訟の明細に関する知識はなく、これから訴訟がどういう展開になるのか全く見当もつきませんが、少なくともこうした規模のデタラメがどこかで本当に行われていても全く不思議でない時流に、数年前のウォール街があったことは疑っていません。

数週間前にウォール街で始まったデモは日に日に規模を拡大し、著名な投資家ソロス氏までが、この抗議運動に理解を示していると伝えられています。

 今年の夏以降、ロンドン、アテネで起きている暴動は、ウォール街に対するデモのように金融界をターゲットにしたものではありませんが、現在の欧州の厳しい経済的混乱の遠因をつくるのに金融のレバレッジ機能が大きな役割を果たしたことは否定できないし、それはデモに参加している多くの人々が感じていることでもあるでしょう。

 筆者自身も長年、金融市場やデリバティブに関連する仕事で生きて来ました。こうした金融の役割は社会にとって必要で役に立つ機能であるとは信じていますが、金融はしばしば暴走し、社会に甚大な影響を与えてしまうようです。

 どうしたら、金融市場やデリバティブ商品がこのような負の側面を弱めて、社会に本当に定着させることが出来るのか。これは、金融界の課題でもあり、筆者自身の課題でもあります。
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ヘッジファンドのインサイダー取引疑惑

北朝鮮が韓国の島を砲撃した日の夜、米国時間では株が大きく下落しましたが、その原因は、この砲撃ではなく、複数の高名な大手のヘッジファンドを巻き込んだインサイダー取引疑惑が浮上したからです。

 投資家に情報を提供する「エキスパート・ネットワーク会社」と呼ばれる業界に対して米国SEC(証券取引委員会)が3年間に渡って続けて来た調査が最終局面を迎え、いよいよ大手ヘッジファンドにFBIなどの直接捜査が入るというステージに来たというのです。

 捜査を受けたり事情を聴取されたりしているファンドは、大手のSACキャピタル・アドバイザーと、SACの元運用担当者が設立したファンド、さらにシタデルの旗艦ファンドの一つであるウェリントン・マネジメントの名前も挙げられています。

 「エキスパート・ネットワーク会社」とは聞きなれない言葉ですが、ヘッジファンドなどの投資家に対して、情報提供などのコンサルタント・サービスを行う業態のことで、ここ数年急激に規模を拡大してきました。

ヘッジファンドの儲けに役立つような情報を提供するわけですが、その情報は公開されている情報だけでなく、非公開のものも多く含まれ、ある意味ではもともとインサイダーすれすれの際どい商売であったのかもしれません

今回の捜査で 先週現在実際にFBIに逮捕されたのは、カリフォルニア州のプライマリー・グローバル・グループというエキスパート・ネットワーク会社の台湾系の幹部一人ですが、米国のヘッジファンド業界は、このニュースに震え上がっているようです。

 米国のインサイダー取引事件としては、2年間にシリコン・バレーのハイテク企業に関するインサイダー情報を収集し、それを使って運用していたスリランカ出身の有名なファンド・マネージャー、Raj Rajaratnam氏が逮捕されたことが大きな出来事でした。

 筆者も間接的に大手ヘッジファンドの関係者に聞いたことがありますが、どんなに優秀な運用担当者でも、コンスタントに結果を出し続ける為には、競争相手に勝る情報を入手することが極めて重要で、その為には大変なコストと労力を惜しまないそうです。

 そういった情報収集力は、資金力と市場に対する影響力の大きな大手ほど強く、もともと強いファンドがより強くなり易いという傾向に拍車をかけているという一面もあるようです。市場の現実の姿は一部の経済学者のいう、完全競争、完全情報共有という仮定とまったく異なるわけです。

 当然のことながら、ファンドがそのように収拾する情報には、一般に公開されていないものばかりで、インサイダー取引と疑われても不思議でないものも少なくないのでしょう。

 ただし、一般的にはそれを証明することは容易ではないために、捜査当局に摘発されることは稀にしかないのです。そういう意味では、今回のSECの足掛け3年の捜査は賞讃に価するもので、最終的にはどれだけ大きな成果を得られるのか、大いに関心のあるところです。

米住宅金融の手続き不備問題

 2年前に、世界中の経済を大混乱に導いた直接的な原因は、米国の住宅ローン
市場に蔓延した、目先の手数料に目がくらんだずさんなローンの組成でした。

 モーゲージ・オリジネーターと呼ばれる住宅ローンの最初の貸し手は、すぐ
に証券化商品の担保資産として、そのローンを売却してしまうために、いい加
減なローンを量産してしまったのです。

 たとえば、借り手の状態をきちんと把握しなかったり、ひどい場合はウソを
ついて書類の形式を整えたり、そういった輩達が、あちこちにはびこっていた
わけです。

 このような、米国の住宅ローンのいい加減な組成が、最初に表面化したのは
2007年夏の、パリバ・ショックと呼ばれる混乱ですが、それから3年経った今
でも、2005年から2007年の住宅ブームの負の遺産が、亡霊のように影を落とし
ています。

 ずさんな証券化によって造成された住宅バブルがはじけた今、米国の住宅市
場は、記録的な「差し押さえ」ブームに転じましたが、バブル期のモーゲージ
関係者の仕事ぶりは事務的処理という面でもずさんなもので、差し押さえに大
きな支障が出始めています。

 今月に入って、差し押さえ手続きに不備があるのではないかという疑惑が急
に拡大し、一部の金融機関が差し押さえを自主的に停止したり、全面的に停止
するように政府に要請する動きがあったりしました。この疑惑はさらに広がり
を見せています。
 
 NYタイムズ紙などの報道によれば、手続きの不備には大きく分けると2つの
パターンがあるようです。一つは、ローンの組成から転売に至る手続きの間に
どこかで問題があり、不完全な書類や、書類自体が紛失してしまったというも
のです。
 
 米国にはMERS(Mortgage Electronic Registration System)という、住宅所
有記録の追跡(トラック)サービスを行う最大規模の会社がありますが、記録
を紛失するなどの不備が報道されています。
 
 もう一つのパターンは、差し押さえ手続き自体の不備で、本来手続きは州ご
とに異なるのに、その違いをロクに確認しないで盲目的にサインをしまくった
というものです。こちらはロボットのようにサインだけする担当者を雇って手
続きを処理したという意味で“Robo-Signing”問題と呼ばれています。
 
 この米住宅ローン市場のあらたな火種は、少しずつ広がりを見せています。
先日、世界最大の債券ファンドであるピムコは、バンク・オブ・アメリカなど
に対し、書類の不備を理由に証券化商品の買取を要請しました。

 Robo-Signingの問題に関しては、解決は時間の問題であると見る楽観的な向
きもあるようですが、米住宅金融に関する最近のあらたな懸念は注意してもよ
いでしょう。

 思い出せば、サブプライム問題が表面化し始めた時、バーナンキFRB議長な
どはリーマン・ショックが起こるまでは「大した問題ではない」と事態の過小
評価を続けて、危機への初動が大きく遅れました。

 米金融当局は「インフレ・ターゲット」という魔法の杖で、問題を一気に解
決してしまおうなどと考えるより、経済のミクロな部分に蔓延した「ずさんさ」
という病巣を地道に取り除くことも大事なような気がします。

振興銀行問題で解明すべき点

 振興銀行の突然の破綻については、(一部を除いて)どのメディアでも、初め
てペイオフが実施されことに関する説明や、預金者のインタビューで溢れてい
ました。それはそれで大事なことかもしれませんが、この事件に関して、他に
も報道すべき重大な事が沢山あります。

 その一つは「なぜ、振興銀行が突然巨額の債務超過になったのか?」、あるい
は「なぜ巨額の債務超過が今まで隠され続けて来たのか?」という本質的な疑
問です。

 報道によると、金融庁は昨年6月から今年3月までの約9カ月にも及ぶ異例
の検査を行ったとされています。その検査を経て今年5月に発表された2010年
3月期の決算では、計上された赤字はたったの51億円で、振興銀行が保有する
4,235億円の債権中、3,980億円が「正常債権」に分類されています。
 
 ところが状況が一変して、振興銀行が破綻に至ったのは、9月10日の金融庁
の発表によれば「その財産をもって債務を完済することができない状況にある」
という預金保険法に基づいた申し出があって処分されたからです。

 同じ日、金融庁は「金融担当大臣談話」として「近年、貸金業者からの債権
買取を増加させるとともに、親密な大口与信先に対する急激な業容拡大を図る
という特異なビジネスモデルの下で、それに見合った十分な与信審査管理を行
わなかった結果、多額の追加引当金が必要となったものである」と説明し、6月
末には1,870億円の債務超過であることを明らかにしました。

 振興銀行の3月末決算では、資本金など純資産が274億円ありましたから、
たったの3カ月で、保有債権の約半分である2,141億円もの引当金を積んだこ
とになります。実体的には3月末に「正常債権」と分類されていた債権のほと
んどが、突然「破綻先または実質破綻先」などに分類されたということなので
しょう。

 担当大臣談話等や一部の報道から推察すると、「親密な大口与信先」を活用し
た取引などを、5月に解任された木村前会長のあとを引き継いだ新しい経営陣が
(内部の特別調査委員会を通じて)、これまでの判断を突然覆して、不良債権で
あると認めたと考えられます。

 14日、自見金融担当大臣は、振興銀行の2010年3月決算は「粉飾に近い」と
発言、今後は預金保険機構が木村前会長など前経営陣の責任を刑事・民事で追
及していくだろうと、コメントしています。

 もし、今回巨額の引当金を積んだ債権の資産分類方法が正当なものであれば、
「粉飾に近い」どころの話ではなく、世にも醜い「飛ばし」行為です。ごく一
部のメディアは、振興銀行が「中小企業振興ネットワーク」という多数の「親
密な大口与信先」を使って巧みに「飛ばし」を行ってきたと伝えています。

 そうだとすると疑問なのは、金融庁が異例の長期の検査にもかかわらず、な
ぜこのような不正を解明し、2010年3月期の「粉飾決算」発表を阻止すること
が出来なかったのかということです。

 振興銀行が3月決算を発表した時の金融担当大臣は亀井氏です。亀井氏は、
振興銀行の問題解明に積極的な姿勢を見せていたようにも見えますが、何らか
の政治的な配慮があって、一気に全容を解明することを躊躇したのでしょうか。

 今回の事件、直接的な責任を問わるべきなのは、つい最近まで世の中の「粉
飾」や「飛ばし」に関して激しく糾弾を続けながら自身でこのような醜い銀行
経営を行って来た木村氏や他の旧経営陣なのでしょうが、それを助長してきた
のは日本の政権であり、木村氏を持ち上げ続けたマスコミであり、ひいてはそ
れを許してきた日本国民と言えるかもしれません。

 そういう意味では、振興銀行の事件は、ある意味で現代日本社会全体が生ん
だ病巣と言えるかもしれません。自身の病気と向き合うためにも、振興銀行の
事件の全容解明は、是非徹底的に進めてほしいものです。

振興銀行破綻の意味すること

金曜日の、振興銀行破綻のニュースには驚きました。

 破綻すること自体は、破綻した商工ローン大手SFCGから買い取った貸出債権
の二重譲渡問題や、5月の木村剛前会長の逮捕などという状況から事前に十分予
想されたことですが、問題は債務超過の額です。

 預金量が6,000億円弱、資本金124億円の銀行が、6月末決算で突然1,870億
円の債務超過に陥ったというのですから、貸出のほとんどが不良債権化してい
たことになります。

 SFCGから購入したローンは700億円と報道されていますから、今回明らかに
なった債務超過の規模は、SFCG問題があろうとなかろうと、もともと不良債権
だらけだったことが分かります。

 木村前会長の逮捕は、昨年6月から9カ月間に及んだ異例の長さの金融庁検
査に対する検査妨害の容疑ということですから、今回突然、不良資産の償却(?)
をして巨額の損失を計上したということは、これまでの決算で実質的に大規模
な粉飾が組織的に行われていた可能性が高そうです。(このことは、今後次第に
明らかになっていくことでしょう)

 振興銀行問題でさらに驚かされるのは、木村前会長の経歴と人物です。2002
年に当時の竹中金融担当相が招集した金融庁金融分野緊急対応プロジェクト・
チームに参加し、その後振興銀行の予備免許を申請するまで、金融庁顧問とい
うポジションにいました。

 金融庁顧問という立場でありながら、振興銀行設立を推進し、巨額なコンサ
ルタント料までもらっていたと報道されていますから、これはどう見ても「利
益相反」状態です。

 櫻井はこれまで、木村氏の著作に関心をもったことはなかったのですが、こ
の頃の木村氏は日本の金融機関を厳しく糾弾し、「小説ペイオフ」や不良債権問
題に関連する「粉飾答弁」、「新しい金融検査と内部監査」などという本を出版
しているようです。(今度読んでみます)。

 こういった木村氏の過去の言動と、今回振興銀行を舞台にして起こった出来
ごとのギャップはあまりにも大きく、同じ人間の行動とはとても信じられませ
ん。(これも、詳しいことは今後明らかになるので、現時点で断定はできません
が・・)

 日本の金融界、ひいては日本の社会全体にとって不幸なことは、このような
無残な事件が実際に起こってしまったわけで、少なくとも21世紀の最初の数年
間は、木村氏の言葉に政治家やマスコミが踊らされて、それが現実の重要な政
策として多くの人々の人生を変えた可能性があることです。

 今回の出来ごとで、明らかになったことは、現代日本社会のリーダー選別能
力に大きな問題があるということではないでしょうか。端的に言うと、われわ
れは「人を見る目がない」ということです。

 少なくとも、マスコミが作り上げた「有名人」を、安易に重要なポストに就
けてしまうという人材発掘方法は、大いに問題がありそうに思えます。

 今後数年間の日本の進む道を決める、民主党の代表選の結果が出るのは、も
うまもなくですが、見識にもモラルにも欠けるマスコミと日本全体が運命を共
にするのは、そろそろこのあたりで止めにしたいものです。

ヘッジ・ファンド業界は衰退に向かうのか?

 最近、ヘッジ・ファンド業界の元気のなさが、いろいろなところで話題にな
っています。

 ヘッジ・ファンド業界の成績は、リーマン・ショックがあった2008年が業界
全体でマイナス19%(HFリサーチ社の統計)と散々であったものの、昨年はパ
ニック相場の揺り戻しで、2008年にやられた半分以上を取り戻しました。

 しかし今年に入ると、ゼロ近辺を行ったり来たりしているだけで、ほとんど
動く気配はありません。

  先月の半ばに、かつてジョージ・ソロス氏の右腕として活躍した著名投資
家スタンレー・ドラッケンミラー氏が、最近の自身のファンドのパフォーマン
スに「満足出来ない」として引退を表明しました。

 企業の目先の業績の割には、株式市場の出来高が少なく冴えない動きを続け
ているのも、低調なヘッジ・ファンドの活動に一因があるのではという解釈も
あります。

 市場に活力が失われると、収益を上げるチャンスが減り、そうすると更に個々
のファンドの活動が鈍り、ファンドによってはあきらめてファンド自体を閉鎖
してしまうという動きにさえつながります。今は、このような悪循環で、市場
の活動まで鈍るという更なる悪循環に入っているように見えます。

 先日の英FT紙は、このような市場環境を招いたのはヘッジ・ファンド自身で
あるかもしれないと思わせる記事を書いています。過去10年間にIT技術を駆
使してコンピュータが自動的に取引を執行するアルゴリズム取引が膨張した結
果、例えば株と債券の相関が増して、相関係数は3倍以上に増えたそうです。
 
 アルゴリズム取引で相場の動き方が変わると、伝統的なアプローチで取引し
ていたトレーダーはそれに対処することが難しくなり、ドラッケンミラー氏の
ように、ついには店のシャッターを閉めるところも出てくるというのです。
 
 英エコノミスト誌では、規制強化の動きが、ヘッジ・ファンドの行動を制約
し伝統的なファンドとの違いが小さくなってきていると書いています。
 
 規制の結果、小さなファンドの経営は困難になる一方で、大きなファンドも
慎重な運用姿勢となり「大きくなったが、安全で退屈な」(エコノミスト誌のコ
ラムの題名)運用をするようになって来ているからです。

 ヘッジ・ファンド業界は、かつて年率10%程度の利益を目標にしていましたが、
それが15%、20%と目標を引き上げることによって、大きく成長してきました。

 最近の市場環境や当局からの規制によって、「20%の目標利益」という旗を掲
げ続けることが難しくなったのであれば、これまでヘッジ・ファンドをヘッジ・
ファンドたらしめてきたアイデンティティが失われることになるのは間違いな
さそうです。

ウォール街の利害関係者懐柔策

 ゴールドマンを筆頭とするウォール街証券会社の行状暴露は、一つの社会現
象といっても良い状況になってきました。

 ゴールドマンについては、先月SEC(米証券取引委員会)が詐欺的な行為で投
資家に値下がりが見込まれる債券を売りつけたと告発したばかりです。自分は
逆のポジションをとって大儲けをしていました。
 
 先週にはモルガン・スタンレーがほぼ同様の容疑で米検察当局の捜査を受け
ているという報道がありました。

 そして先日、今度はクオモNY州司法長官がウォール街と格付け会社の怪しげ
な関係を追及し始めました。

 今回の危機の震源地となった米国のサブプライム・ローンの証券化に際して、
ゴールドマンなどウォール街の8つの金融機関が格付会社に誤解を招く情報を
提供して、高い格付けを取得した疑いです。

 クオモ氏はさらに、これらの金融機関が格付け会社出身者を証券化商品組成
の担当者として採用して、前職の格付け会社との関係を利用して、金融機関に
有利な格付けの取得をしてきた疑いをもっているそうです。

 格付け会社の社員に限らず、ゴールドマンなどの億単位の報酬は夢のような
事なのです。
 
 ウォール街に高給で引き抜かれた格付け会社の元社員は、かつての同僚たち
に働きかけて、格付けを粉飾するのが役割です。
 
 格付け会社の社員にしても、上手い具合にウォール街の要求を満足させるこ
とができれば、今度は自分が高給で雇ってもらえるかもしれないので、非常に
強いインセンティブが働きます。

 これは、金融監督当局の担当者も同様で、ウォール街に恩を売ったり、ウォ
ール街に都合のよい方向に当局を動かす役割について「使える人間だ」と思わ
せれば、安月給の身から一転してプロ野球選手並みの報酬が得られるのです。

 プロ野球選手の場合は、その報酬にふさわしい能力があるかどうかは一目了
然ですが、証券マンの場合は一部の仕事を除いて、そんなことはほとんど判別
不能です。

 フツウの人間を高い給料で雇用すること自体は違法な行為ではないので、「雇
ってあげるかもしれない」とほのめかすことは、非常に強力な懐柔手段となり
ます。

 ウォール街の巨額の収益は、相場の先を読み取る天才的なトレーダーが揃っ
ているからではなく、あらゆる手段を使って利害関係者を手なずけて、自分に
とって有利なゲームに持ち込むことによって達成されているのです。

 ポンコツ債券を売り込む投資家についても担当者個人を懐柔する手段はいく
らでもあるでしょう。

 そう考えていくと、サブプライム危機の大きな原因が、ウォール街の巨額の
報酬にあることは間違いのないように思われます。この問題を放置すれば、ま
たいつか必ず大きな歪みを発生させ危機を生むことになるのでしょう。

SECのゴールドマン訴追

 先週、米証券取引委員会(SEC)はようやく重い腰を上げて、サブプライム商
品の販売に関してゴールドマン(GS)の従業員を訴追しました。

 80年代から90年代初めに700以上のS&L(貯蓄貸付組合)が倒産した危機の
場合は多くのS&L経営者が投獄させられました。しかし今回の危機の方がはる
かに大きな経済への損失でありにもかかわらず、ほとんど誰も罪に問われてい
ません。

 まず、4月16日のSECのプレス・リリースから事実関係を簡単に整理してみ
ます。

 問題の取引は2007年4月にGSのFabrice Tourre氏が中心になって組成した
アバカス2007-AC1という、サブプライム住宅ローンを寄せ集めて作ったCDO(債
務担保証券)です。(実際はシンセティックCDOと呼ばれるタイプです)。

 当時、ポールソンという大手のヘッジ・ファンドは、サブプライム・ローン
の空売りに興味を持っていました。(ちなみにこのポールソン社は、サブプライ
ム危機によって莫大な利益を上げたことで非常に有名なファンドです)。

 SECの指摘は以下のようなものです。このGSの従業員はポールソン社が値下
がりすると信じて選定した住宅ローンのプール(集合)をわざわざ使ってCDO
を組成しました。

 一方投資家には第三者が選定したような情報を与えるだけで、ポールソン社
の空売りの意向とプール選定のプロセスについてCDOの投資家に知らせません
でした。(実際はもう少し複雑な部分もあるのですがここでは省略します)。

 そして、今回の訴追は、投資家に虚偽の表示(misstate)と重要な事実の隠
匿をしたという容疑で訴追したのです。

 少し解説しますと、サブプライム・ローンを売りたい人(=ポールソン社)
と、買いたい人(=CDOの投資家)がいて、GSはその両者を仲介することによ
って、サブプライム・ローンのリスクを取ることなく、(恐らく)巨額の手数料
を稼いでいたようです。

 今回問題になっているのは、GSが有力なヘッジ・ファンドとぐるになって、
腐りかけたサブプライム・ローンを、あたかもヒカピカの商品のように思わせ
て買わせ損失を与えたということです。

 このような取引をする場合、本来証券会社は中立的な立場で利益相反を避け
なければならないにもかかわらず、重要な情報を投資家に偽ったり隠したりし
て、投資家に被害を与えたという容疑です。

 実際問題とすれば、「客を騙して腐れポジションを引き取らせる」行為はウォ
ール街の証券会社も、日本の証券会社も同様にほとんど日常茶飯事と言っても
よいのではないでしょうか。

 ただし、その行為の規模や悪質さに関しては多少の違いもあるかもしれませ
ん。

 今回のアクションは、「投資家保護」というSECの使命を果たすという意味で
は評価してもよいと思われますが、いくつか疑問や懸念があります。

 今回訴追されたFabric Tourreは30そこそこのバイス・プレジデントですが、
この肩書きは日本の大手企業では「係長」か「主任」ぐらいのポジションです。
要は「ザコ」なのです。

 こんなザコの行為を追及することで、もっと大きな不正を見逃してしまうこ
とにならないか、というのが疑問です。

 それから今回のケースは、スキームはやや複雑な部分もあり、SECの訴追自体
がやや正確さに欠けるという指摘も出ています。

 これできちんと立証できるかどうかが懸念です。

 是非とも、単なるトカゲの尻尾切りに終わらせてほしくないと思います。

明らかになりつつあるリーマン破綻の経緯

 先日公表された、リーマン破綻に関する調査報告書の内容が次第に波紋を広
げています。

 これは米国の連邦裁判所からの依頼を受けて、アントン・パルカス氏がまと
めたレポートですが、なにしろ2200ページもの分量があるので、詳しい内容が
伝わってくるのに少し時間がかかっているようです。

 このレポートが11日に発表されて以来、英FT紙は連日のようにこの関連の
報道をしています。そして残念ながら、その内容は詳しく読めば読むほど「醜
さ」が増していくようです。

 パンカス・レポートでは、リーマンが社内で「レポ105」と呼んでいた簿外取
引を通じて500億ドル(約4.5兆円)もの資産を隠していると指摘しています。

 レポとは、債券を担保に短期の資金調達を行う取引のことです。この取引を
正しく会計処理すれば「担保付の借り入れ」のはずなのですが、どうやらリー
マンはこれを「売却」であるかのように見せ掛けていたようです。

 「レポ105」を通じて、バランスシートを実際より健全であると見せかけるこ
とによって格付会社からの格下げを回避していました。

 FT紙によれば、このような怪しい会計処理にリーガル・オピニオンを与えて
くれる法律事務所は米国には見当たらず、英国のリンクレイターズを使ったそ
うです。そして英国の大手監査法人アーネスト・ヤングがこの処理を容認しま
した。

 これは米国と英国の会計ルールが多少異なることを利用したものですが、こ
のように、自分に都合のよい意見が得られるまで外部の意見を求めたり、自分
の都合のよい場所で訴訟を起こすことをフォーラム・ショッピングと呼ぶのだ
そうです。

 これが完全に違法な行為と断定できるかどうかはまだ分からないようですが、
少なくとも、法の抜け穴を狙った悪質な脱法行為であることは間違いありませ
ん。

 2001年に複雑なストラクチャーで粉飾を重ねたエンロンが破綻したことで米
国ではSOX法(Sarbanes-Oxley Act)が制定され、経営者に財務諸表の正確性
について個人保証させるような対応をしました。

 SOX法対応には、日本企業も含めて関係者の膨大なお金とエネルギーが消費さ
れましたが、リーマンの実態を見る限り、どうやらそれは弁護士やコンサルタ
ント達の懐を潤しただけに過ぎなかったようです。

 エンロンの会計監査をしたアンダーセンは解体されましたが、今回のアーネ
スト・ヤングも、厳しい批判にさらされそうです。

 さらに一昨日のNYタイムズの報道では、このレポートによってリーマンを監
督する立場にあった当時ガイトナー総裁率いるNY地区連銀やSECがリーマン破
綻の遥かに以前からリーマン監督の為のスタッフを常駐させていて、このよう
な会計操作を容易に把握できる状態であったことが明らかになったと伝えてい
ます。

 マードフ・ファンドの事件と同様に、当局は賢明に「見て見ぬ振り」をした
のでしょうか?もしかすると「粉飾」のアドバイスをしていたかも知れません。

 そうであるとすれば、リーマンの経営者達より遥かに罪が重いように思えま
す。

 ガイトナー氏のウォール街への献身ぶりは、いまさらながら驚き呆れますが、
こんな人物をいまだに財務長官を務めさせているオバマ大統領もどうかしてい
ます。

 先週、「粉飾」の疑いが報道された時にはリーマンは「第二のエンロン」かと
思いましたが、監督当局が「粉飾」を手厚くほう助したとすれば、これはもっ
とひどい話かもしれません。

 不正が起きないようにどんなにルールを厳しく設定しても、人間の心が「腐
って」いれば何の役にも立たないようです。

ゴールドマンによるギリシャの債務隠し

ゴールドマンが、ギリシャの債務隠しに加担していたという情報は、しばら
く前から一部のブログなどで発信されていましたが、先日はとうとう大メディ
アのNYタイムズでも取り上げられる事態となりました。

 さて、本題に入る前に、ユーロ圏(通貨ユーロ加入国)に加入する条件を簡
単に説明しておきます。

 欧州の通貨統合は90年代前半に発効したマーストリヒト条約によって、イン
フレ率や国家財政状況、金利などの条件が課されました。財政については、財
政赤字がGDP対比で3%以内、国家の債務残高はGDPの60%以内というなかなか
厳しい条件です。

 当時、櫻井はロンドンに在住していたのですが、90年代後半になるまでは、
長年放漫財政を続けていたイタリアやギリシャといった国々が、この厳しいハ
ードルをクリアできるとは、とても思えませんでした。特にギリシャなどは問
題外という印象でした。

 しかし、ユーロ発足の1999年の期日が近づくと、なぜかイタリアの財政は急
速に改善し条件をクリア、その2年後の2001年にはギリシャまでマーストリヒ
ト条約の条件をパスしてユーロ圏加入を果たしたのです。

 これは、おそらくその5年前には、ほとんど想像することさえ難しいような
出来事でした。

 しかしそれから10年、今明らかにされつつあることは、ギリシャの財政が短
期間に急速に改善したことはやはりフィクションに過ぎず、実際にはインチキ
をしてマーストリヒト条約の条件をクリアしていたという事実です。

 そして、そのインチキをサポートしてがっぽりと儲けたのがゴールドマンを
はじめとするいくつかの投資銀行であったというのです。

 その手口は、通貨スワップというデリバティブ取引を行って、実際にはギリ
シャは資金の借り入れを行っているのと同等な経済効果があるにもかかわらず、
「借り入れでなく短なるデリバティブ取引だ」と見せかけるものです。

 櫻井は、長年デリバティブズのトレーダーをやっていたのでよく分かります
が、デリバティブズをこのような目的につかうのは一部の人々の間で極めてポ
ピュラーなやり方でした。特に難しいことでもありません。

 おそらくゴールドマンなどにとっては、多数の国々がマーストヒリト条約の
クリアに苦しんでいたこの時期は、絶好のビジネスチャンスとなり大儲けをし
たことでしょう。

 投資銀行の過去の巨額の収益の裏には、このようなカラクリがあったのです。

 「インチキ」と書きましたが、実際は法律的には問題はない行為です。しか
し、この行為はマーストリヒト条約の意図した精神からは明確に乖離している
ことは議論の余地が無いことですし、他のユーロ圏諸国の立場からすれば問題
外の行為でしょう。

 ゴールドマンもギリシャももちろんそれを十分認識していたはずです。

 さて、NYタイムズの記事で暴露されている驚くべき事実は、ゴールマンの10
年前の行動だけでなく、今から3ヶ月ほど前の昨年11月にも同様の提案を、統
計を大幅修正して巨額の債務残高の事実を認めたばかりのギリシャに行ったと
いうことです。

 過去1年間ほどは、ゴールドマンの行動は世間からさまざまな批判を浴びて
きましたが、どうやら何も反省は無かったようです。

 一方でギリシャのデタラメ振りも大問題です。
 この問題の事実関係が確認されれば、ドイツなどはギリシャ救済の意欲を一
段と低下させることになるでしょう。

 ギリシャのユーロ離脱の可能性というのは、意外に早い時期に浮上してくる
かもしれません。

ゴールドマン「神の仕事」の実態

 昨年末、NYタイムズ紙は“Banks Bundled Bad Debt,Bet Against It and Won”
という記事を載せました。

 ゴールドマンやドイツ銀行、モルガン・スタンレーといった金融機関が顧客
に将来下落が予見されるモーゲージ債権を束ねてCDOという証券化債券に仕立
て上げて顧客に販売し、自分たちは顧客と反対サイドのポジションをとって大
儲けをしてきたということを暴露した記事です。

 記事はウォール街の金融機関の中でも、とりわけゴールドマン・サックスに
焦点を当てて、多数の実名を挙げてそのやり口を詳細に説明しています。

 ご記憶の方も多いかと思いますが2007年の後半、サブプライム問題の表面化
によってサブプライム・ローンに関連するモーゲージ債券の価格が急落した際
に、ゴールドマンは他の金融機関が大きな損失を出す中でただ一人記録的な収
益を計上して関係者の賞讃の声を集めました。

 当時は、ゴールドマンがサブプライム・モーゲージの危機を予見してABXと
呼ばれるインデックスやAIGなどとのクレデリ取引を使って、収益を生んだも
のと考えられていました。

 これらの取引は大手の金融機関同士取引が主体なので、ゴールドマンが儲け
て他の金融機関が損をするという構図であると誤解され、他社を出し抜いたゴ
ールドマンに賞讃の声が上がったのです。

 しかしNYタイムズの記事で暴露されたのは、ゴールドマンは市場での取引だ
けでなく自分の顧客に大量のCDOを販売することによって、サブプライム・ロ
ーン市場が崩壊した場合に大儲け出来るポジションを積み上げてきたというの
です。

 さらに顧客に悪い持ち値を押しつけるために、一部のトレーダーは格付け会
社に働きかけてCDOの格付けを引き上げる働きかけをしてきたといった証言な
ど、数々の悪行も紹介されています。

 記事ではTetsuya Ishikawa(日本人?)という元ゴールドマンのセールスマ
ンが昨年4月に出版した”How I Caused the Credit Crunch”という本で「市
場が崩壊した債券を購入した顧客たちを、バンカーたちは見捨てた」ことを綴
った本であると紹介し、Ishikawa氏の「われわれは自分たちを守るために、他
人を傷つけ続けなければならなかった」というコメントも付け加えています。
(Ishikawa氏がBBCから受けた本に関するインタビューはYou Tubeで見ること
が出来ます)

 このような批判に対しゴールドマン・サイドでは「投資家が自分たちでこれ
らの商品に殺到したのであり、われわれはそれを止めようがなかった」と説明
しています。

 この記事の話題は「世界潮流」1月8日号で紹介されていますが、編集人の倉
都は「これが金融帝国リアリズムの裏側の世界だ」として、先日ゴールドマン
CEOのブランクフェインCEOが「我々は神の仕事をしている」と述べたことは、
「まさにこうした神業であった」と皮肉っています。
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