グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本の財政問題(その2):2009年の民主党の歳出削減策

 最近民主党内では、2009年のマニュフェストを巡って、「原点に戻れ」「戻らない」の議論が盛んですが、そのマニュフェストでは、いったいどんな歳出削減案だったのか、もう一度振り返ってみます。

 2009年マニュフェストでは、207兆円の総予算を一般・特別会計と別の切り口でブレークダウンしています。(下表参照、「削減額」というのは民主党が示した数字です)
民主党歳出削減

 注意しなければいけないのは、この民主党の項目分けは、一般会計と特別会計の合体はされてはいますが、用途別の項目をきれいに集約しているわけではありません。例えば、公共事業費は補助金のなかにも含まれているし、地方自治体の人件費、庁費等や公共事業費などの一部は補助金の中の地方交付税から間接的に支払われています。

 さてこれらの支出項目のうち、国債発行残高とともに膨張を続ける借金返済等を除外すると、残りの中で最大の支出項目は「補助金」です。補助金には使途を特定しない「一般補助金」と、使途を特定した「特定補助金」があります。「一般補助金」の代表は地方交付税で、一方「特定補助金」は老人医療や生活保護などの社会保障費や、文教・科学振興費、それに公共事業に対する補助金も含まれます。「事業仕分」で問題になった独立行政法人などに対する支出は、この補助金という形や、公共事業などの契約受注という形で行われる部分が大きいのです。

 使途を特定した「特定補助金」は、役所用語では「国庫補助負担金」という名前ですが、簡単に「国庫支出金」と呼ばれることもあります。

特定補助金が官僚と族議員とその他利益誘導集団が絡んだ利益誘導政治に陥り易いという指摘は従前からあり、小泉内閣時代のいわゆる「三位一体改革」によって補助金の削除努力が始まりました。しかし特定補助金を「ひもつき補助金」として激しい攻撃の対象としたのは小沢氏が党首時代の民主党であり、2009年のマニュフェストはその路線が色濃く反映されています。マニュフェストの4つ目の約束には「地域主権の確立」を挙げ、「国のひもつき補助金(社会保障費、義務教育関係は除く)」は廃止するとしています。

ちなみに平成21年度の「特定補助金」の明細は以下の通りです。
総額:19.5兆円
社会保障関係:12.9兆円(うち老人医療4.3兆円、市町村国保2.2兆円など)
文教・科学振興関係:2.0兆円(うち義務教育費1.7兆円)
公共事業関係:3.9兆円
その他:0.7兆円

マニュフェストでは庁費等、委託費、施設費、補助金の4項目から6.1兆円の歳出削減をするというプランでしたが、その大部分は「特定(ひもつき)補助金」、特に公共事業費の削減による予算の見直しという考え方であったようでした。しかしながら、ひもつき補助金のなかでも、実際には手がつけられない社会保障や義務教育費だけで全体の3/4近くを占めており、民主党の6.1兆円の削減と言う主張はこの部分だけではやや無理があったようにも見えます。この規模のムダの削減のためには、地方公務員人件費の大幅削減など地方交付金などを含めた他の項目などにも目を向けないと厳しかったのかも知れません。

 最近、自民党は地方公務員の人件費削減策を売り物にし出しているのですが、それは2009年の民主党マニュフェストを批判する中でみつけた欠点を、自分の政策としたのかもしれません。そういう意味では、2009年の民主党マニュフェストは、各政党が歳出削減策を競い合うきっかきにはなったのかも知れません。

日本の財政事情(その1)
スポンサーサイト

日本の財政事情(その1):「207兆円の国の総予算」とは何か?

 今から約1年半前の2009年7月、当時の鳩山民主党が発表したマニュフェストは、今読み返しても日本の財政のムダの削減という姿勢に関して画期的な内容でした。5つの公約の最初には「税金は、官僚と一部政治家のものではありません。国民の税金を国民の手に戻します」として国総予算207兆円を全面組み替えるとうたっています。

 ところで、メディアでは、国の予算は今年度92兆円程度の一般予算のことばかりですが、この総予算207兆円というのはどういうことなのでしょうか?

 実はこの数字は国の一般会計(21年度で88.5兆円)だけでなくネットの特別会計(21年度予算169兆円)を加味した予算額です。この年の一般会計は一般歳出51.7兆円、国債費20.2兆円、地方交付税16.6兆円。一方特別会計は、グロスでは355兆円あるが、特別会計内のダブルカウントをネットすると169.4兆円になり、その明細は以下の通りです。
   国債償還・利払い79.5兆円
   社会保障給付費52.6兆円
   地方交付税等17.8兆円
   財投債発行9.5兆円
   その他10.0兆円

 特別会計を含めた数字を見せられると正直その大きさにびっくりします。小泉内閣時代の塩川財務相が「母屋でおかゆを食って節約している時に離れですき焼きを食っている」と発言したのは、この特別会計の問題です。

 一般会計と特別会計の間にもダブルカウントが存在します。例えば、この年の地方交付税は一般会計が16.6兆円、特別会計(交付税及び譲渡税配布金特別会計)では17.8兆円の支出となっているが、一般会計の資金は一旦特別会計に繰入られる仕組みであるため、一般会計分はまるまるダブルカウントになっています。

 このようなダブルカウントを一般会計サイドでネットすると88.5兆円でなく37.1兆円という数字になります。37.1兆円に特別会計の169.4兆円を足すと206.5兆円になり、これが2009年民主党マニュフェストに掲げられた「国の総予算207兆円」のことなのです。


日本の名目GDPはずっーと500兆円前後

 第4四半期のGDPが発表され、2010年暦年の日本の名目GDPは479.2兆円であったことが分かりました。90年代前半から、20年近くに渡って名目GDPはずーっと500兆円前後で、一番高かったのは1997年の515.7兆円でした。名目GDPの推移:グラフ

 昨年1年間の平均のドル円レートは約87.75円に上昇したので、ドルベースのGDPは約5.46兆ドルに増加し1995年を抜いて過去最高となりました。現在の円高状況が継続すれば、今年の平均レートはもっと円高になるので、ドルベースのGDPはさらに上昇することが見込まれます。

 日本の人口は1億2776万人ですから、一人当たりのドルベースGDPは約42,700ドル前後です。2009年は一人当たり名目GDPは世界で17位だったのですが、円高の影響で欧州諸国をごぼう抜きしたと思われ、昨年は大いに順位を上げると予想されます。(90年代から2000年には、5回3位を記録しています。)

 円建てのGDPが20年も500兆円前後で固まったままの一方で、円高は進んで、一人当たりのドルベースGDPでは、世界でなんとかそこそこのポジションを維持しているという数字は、過去20年の日本の実情を非常によく反映していると思います。


個人の資産はやがて国に巻き上げられる

1日、IMFのストロス・カーン専務理事(サルコジ大統領の後釜の有力候補)は「日本は緊急に財政問題に取り組む必要がある」と発言しました。先日のS&Pによる格下げと併せて、海外からの警告が続いているわけです。

IMFは日本に対してだけでなく、世界中の国々に年中「早く財政健全化せよ」と叫びまくっているわけですし、IMFの言う通りの行動をとった新興国が悲惨な結果を招いた例は枚挙に暇がないので、日本の国民も政治家も気にも留めないかも知れません。

でも、そろそろこうした警告がバカにできない状況が迫ってきています。

日本の財政状態の問題に対する考え方は大きく言うと2つに分かれているのではないでしょうか。一つはIMFのように「このままでは日本は本当に破綻するぞ」というものと、もうひとつは、日本国債の95%前後は国内で消化され、しかもずっと経常黒字が続いているのだから大丈夫というものです。

過去20年の日本の資金循環を細かく見てみると、個人と企業部門が資産を増やし、さらに借金を減らし続けたことで、国がどんなに浪費を続けて借金を重ねても、国内でその借金を消化することができたことが分かります。しかも経常黒字体質が続いているので、海外から借金を作るどころか、逆に巨額の海外投資資産を持っています。

後者の議論は、だいたいそういった事実がベースとなっているわけで、日本は少なくともかつてのアルゼンチンや最近のギリシャのような形で危機に陥る可能性は低そうです。

そうは言っても、国や地方が個人や企業からお金を借り続ける状況には、いつか終わりが来ます。何故ならば、個人や企業の余剰資金には限りがあるからです。

「日本が破綻する」と警告する方々はそういうポイントを重視しているのかも知れません。ただし、破綻するといってもアルゼンチンやギリシャのようなコースは辿らないとすると、いったいどうなるか?

ここが難しいわけです。

しかしながら、筆者の意見としては、結局は簡単なことであると思います。国や地方がもうこれ以上国内からお金を借りることが出来なければ「強硬手段」に訴えて、国民から無理やり奪い取るしか方法がないわけです。これは、確かにIMFの管理下に入るような新興国の古典的な破綻ではないかもしれせん。

「強硬手段」の具体策はいろいろ考えられます。例えば国民が買えなくなった国債を無理やり日銀に引き受けさせ通貨円の価値を下落させ、これまでの借金を帳消しにするパターン。(この方法は高インフレを伴います)

 もうひとつは、増税だけでなく、年金給付の削減、さらにはフランスのような富裕税を設けて国の借金返済にあてる方法などです。

過去20年間に渡って、個人や企業の資産が銀行預金や保険という形を経由して国債にシフトし続けて来たのですが、それを無理やりにでも逆流させなければならない時がいずれにしても来るわけです。

 この逆流の痛みを和らげるには、国や地方の無駄な歳出を削減させ、逆流の流れを穏やかにすることなのですが、現政権は誰に丸め込まれたのか知りませんが、歳出削減に対する意欲はすっかり失ってしまったようです。

 これまでも、何度か書いてきましたが、国と地方(これを別々に考えてはいけません)の歳出の最大の項目は人件費です。

 特に個人的に公務員に恨みがあるわけではありませが、これは国民全員の問題で他人事ではないのです。いったいどうすれば国民は資産を奪われる前に、もう少し危機感を持つことが出来るのでしょうか。

日本国債の格下げ: 政治家達の本当にすべきこと

 格付け機関のS&Pは日本国債の格付けを「AA」から「AAマイナス」に引き下げました。
格付け機関の判断は、公平でも客観的でもない場合も多いですが、今回の日本に対する判断は特に驚きもなく、妥当な判断と言えるかも知れません。どう見ても、与野党含めた今の日本の政治家達には、危機的な財政問題を解決する危機感も能力も無さそうにみえるからです。

 日本国債は大部分が日本の金融機関に保有され、バランスシートの大部分が日本国債で占められる金融機関と日本政府は運命共同体とも呼べる状況にあるので、少々格付けが下がったところで金融機関は慌てて売却したりしません。(いや、正確には売却できません)。ですから、これまで同じ「AA」の格付けだったスペイン国債の利回りが5%以上あっても、日本政府はその1/4以下の金利支払いで済んでいるのです。

 しかしながら、どんなに国債発行額を膨らませても、国債金利が上昇しないことが、逆に日本政府の危機感を薄くさせているのかも知れません。

 菅首相は、1年半前に選挙で勝った時のマニュフェストに完全に逆行した行動ばかりで選挙民を愚弄しているだけでなく、財務省の言いなりの形での増税路線を突き進もうとしています。

 財政状況に危機感を持つこと自体は誤りではありませんせんが、財政再建の基本は1に公務員の人件費削減などの歳出カット、そして2番目が消費税上げなどの増税、最後に社会保障の削減というのがあるべき手順です。これはギリシャもアイルランドも英国もみな同じコースをたどっています。

 どうして日本の政治家達は、国と地方を合わせた税金(と借金)の大半を使っている「公務員の人件費削減」を言い出せないのでしょうか。公務員の人件費について
 
 そして菅首相が、それをアピールすべきなのは、何を言っても批判しかされないことが分かっている野党の党首ではなく、国民です。「現在の日本の財政を考慮すれば、地方を含めた公務員の処遇と人員の削減と消費税上げをセットでするしかない」と真摯に国民を説得するのが、現在の日本の首相が真っ先に果たさなければいけない責務だと思います。これは、政権を担当しているのが民主党であろうと自民党であろうと共産党であろうと変わらない責務です。

 本当にやるべきことを率直に国民に伝えずに、官僚の書いた官僚に都合のよい政策ばかりを代弁するのであれば、仮にその中の一部に本当に必要な政策が含まれているとしても、国民の理解は永遠に得られないでしょう。悪いのは国民ではなく、自分の議席の心配や、つまらない内ゲバにばかりエネルギーを使って、日本に本当に必要な施策を取らない政治家たちです。

 繰り返しますと、与党であろうと野党であろうと、今一番すべきことは、まず(特に地方の)公務員の人件費大幅削減、さらに消費税上げ、それでもダメなら社会保障にメスを入れるしかないことを(毎日CMで流すなどをして)国民に理解させて、そのうえでそれを実行することです。

 現在の政治の機能マヒが続けば、国債金利の逆襲が始まるのは、実は思ったほど遠くない将来かも知れません。



日本の名目GDP

 昨日中国のGDPが発表され、昨年のGDPが日本を抜いて世界第2位になることが確実な情勢になりました。
この比較は名目GDP(GDPの実数)で比較されます。
 日ごろメディアで登場するGDPは物価変動を調整した「実質GDP」の動きであり、日本の名目GDPを目にする機会はあまりないかと思います。下の表を参考にしてください。ついでにドルベースのGDPと為替レートも表示してあります。
GDP.png

 ちなみに2010年の名目GDPは480兆円前後が見込まれています。
御覧になって分かるように、日本の名目GDPは1997年をピークに、緩やかに減少する傾向が続いています。
(昨年の落ち込みはひどかった・・)
ドル表示GDPでは、為替レート変動影響が非常に大きく、これまでのピークは90円台の円安が進んだ1995年でした。
しかし昨年2010年は大きく円高が進んだ(暦年で86円台)ために、ドル表示の記録は更新しそうです。

 日本の1980年から1995年にかけてのGDPの伸びはすさまじく、15年で5倍になっています。これは、円建ての名目GDPの倍になったのに加えて、為替レートが2.5倍近い円高になったからです。経済が成長し、為替も強くなるというのは今の中国も同じ状況で、こういうときはドル表示のGDPは爆発的に増加するわけです。

日本人には経済成長より大事なものがある

 先週の英FT紙に、”Japan finds there is more to life than growth"という珍しい視点の記事がありました。日本は20年間もデフレ的な状況や低成長から抜け出せないでおり、一般的に海外からは悲惨であるとか、衰退、失敗などと思われていますが、本当にそうなのだろうか?という趣旨の記事です。

 日本は人口増加が頭打ちになっているために、過去20年は米国より大きく経済成長率が劣っているように見えますが、実は国民一人あたりの成長ではほぼ同じであったという数字を挙げています。

 さらにGDP以外の観点では、平均寿命82.17才は米国のそれより4歳以上も高く、5%の失業率は他の主要国の半分程度の水準、それに日本は食べ物がおいしく、清潔で社会的緊張や犯罪も少ない点など、さまざまな優れた点があり、これを日本人自身も認識していると指摘します。もちろん、政府の借金の大きさや自殺率の高さなどを暗い点もあります。

 この記事は最後に、もし政府の仕事が経済の活力を生み出すことであるとすれば、日本政府は大失敗しているけれど、国民の雇用、安全を守り、快適な暮らしで長生きするという意味では、日本は大きな混乱があるわけでないと締めくくっています。

 ブログ管理人も、GDPを大きくすることばかりに目を向けることはひどく視野の狭い考えで、国民の本当の幸せを経済規模やお金と切り離して考えるべきであると考えています。

 ただ残念ながら、現在の日本社会のさまざまな美点が、長年の自民党政権や現在の民主党政権がGDP以外のファクターを強く意識してきた結果でないのは明白です。たとえば管首相は「平成の開国」と称して「TPP参加による成長戦略」などを打ち出していますが、これは日本社会の優れた面を考慮に入れず、日本を欧米型の社会にすることしか考えていない極めて短絡的な発想です。

 この点に関してはFT紙の認識は間違っていて、日本の政治や国家は日本社会独自の美点をむしろ破壊しようとしてきたにもかかわらず、日本にはまだ優れた部分が残っていると言った方がよいでしょう。

 管首相の言う「平成の開国」が日本を米国と同じような社会にするというのであれば、それはまっぴらごめんなことです。「経済成長以外にも大事なことがある」という、ひどく簡単なことに、早く政治も気がついて欲しいものです。

民主党の「子ども手当」詐欺

民主党政権が、3歳以上に対する子ども手当を、選挙の公約の半額である月額
1万3千円に据え置く方針を固めたと報道されています。

 昨年の選挙のマニュフェストでは「子育ての心配をなくしみんなに教育のチ
ャンスをつくります」とうたい、選挙戦略の柱とした公約です。

 公約では、現行の扶養控除を廃止して手当て支給に置きかえるというものだ
ったのですが、実際には扶養控除の廃止だけは公約通り実行し、手当は半額し
か実施されないので、多くの家庭では支給のメリットはほとんどなく、収入の
多い家庭では住民税も考慮すると逆に増税になってしまいます。

 子ども手当自体はもともと議論が分かれるところなのでしょうか、この公約
に賛同して投票した有権者にとっては、これはかなり悪質な詐欺以外の何物で
もありません。

 現在の民主党政権で気になることは、このような行為が有権者に対して、ど
れほど深刻な信頼感の喪失を招くかという判断力さえ持ち併せていないという
ことです。

 54年振りの政権交代は、何ともお粗末な結末になりそうです。

日産にみる日本の製造業の変質

上半期の企業業績は、急速に進行した円高にもかかわらず、好調なものとな
りました。

 例えば、自動車メーカー7社のうち、昨年は4社が営業赤字だったのがこの上
期はすべてが黒字に転じ、日産自動車などは大幅な増収・増益となりました。
電機メーカーも同様で、昨年赤字だった会社の多くが黒字に転換しました。

 為替レートは、ドル/円が3月末の93円台から9月末は83円台へ、ユーロは
126円台から113円台へと大幅に円高に進んだわけですから、円高即輸出企業に
大きなダメージというステレオ・タイプの考え方は、もはや時代遅れなのかも
知れません。

 例えば日産自動車の場合を見てみると、近年は生産・販売ともに新興国にシ
フトしており、各地域で利益を上げるグローバル企業化が進んでいます。

 10年前に36%だった海外での生産比率(台数)が、今年は72%まで上昇する見
込みです。日産が生産する車の全体の3/4近くが既に海外で生産されているわ
けです。生産の7割以上が海外であるという意味ではホンダもほぼ同様の状況
です

 国内の生産はその比率が下がったばかりでなく、生産台数自体も大きく減少
しています。日産の2000年3月期の国内生産台数は130万台(連結)であった
の対して、今年度は114万台に低下する見込みです。

 こうした傾向は、国内で販売される主力商品にも及んでいて、今年の5月、
日産は主力の小型車「マーチ」の国内向けの生産を全面的にタイに移すと発表
し、話題を呼びました。

 日産の国内生産台数の推移をみると、なんとなく、企業が潤っても国内の仕
事が増えないという、日本の閉塞感をそのまま反映しているようで、少々暗い
気持ちになります。

 ただ、一つ補足をすると日本国内の生産は熟練工が必要で付加価値も高い高
級車にシフトしているので、単純に国内の空洞化ということではないようです。

 生産の海外シフトが進んだとはいえ、米国向けの高級車の製造を国内で行っ
ている為に、為替変動のリスク自体はそれなりに残っています。日産は上期に
昨年同期と比べて552億円の為替要因による収入減となりました。
 
 しかしながら、企業の全体像を見る限りは、「日本で物を作り海外に売る会社」
というイメージとはかなりの乖離が生まれていることは間違いないでしょう。
 
 高付加価値製品を除いた部分での産業の空洞化には、いろいろな意見がある
かと思いますが、賃金の高い日本でメーカーが国際的な競争力を維持していく
上では、やむを得ないように思えます。
 
 さて、現在TPP(環太平洋経済連携協定)への参加の是非を巡って議論が沸き
起こっています。菅総理自身はTPP推進を思い付いて所信表明演説で口走って
しまったものの、反対派から大きな抵抗に合っているという構図でしょうか。
 
 この議論でひとつ気になることは、どちらのサイドも30年ぐらい前の日本の
産業の姿をイメージしているように見える事です。
 
 特に菅首相などTPP推進派は、「輸出立国」、「円高は悪」という大昔のイメー
ジをそのまま信じ切って発言しているように見えます。
 
 自分の国の姿形と、いまどの方向に向かって進んでいるのかを適切に把握す
ることが出来ないリーダーの支持率が上がるはずはないですね。

北方領土問題:先送りのつけ

 BSで放送されたロシアのテレビ番組では、メドベージェフ大統領の北方領土
訪問と、それに対する日本側の反応をかなりの時間を割り当てて詳細に放送し
ています。

 これを見て分かることは、大統領がこの問題を、自身の政治的なアピールに
使っている可能性が高いということです。そういう意味では、この問題はロシ
ア政府が言っている「国内的な問題」という説明は間違っていないのかも知れ
ません。

 最近ロシアは、ノルウェーや中国との領土問題については譲歩によって問題
解決をしたのですが、日本に対しては逆のスタンスを取り、それを国内向けに
強力にアピールしてきた理由は分かりません。

 ノルウェーなどとの対応の国内の受けが悪くて、その反動に出たのか、それ
とも日本政府との水面下でのトラブルがあったのか?

 いずれにしても、日本との領土問題がいったん国民向けに強硬姿勢を強くア
ピールとしてしまった以上、ロシアの国内向けにはこの問題の方向転換は難し
くなったということです。

 北方領土問題は、おそらく上手くたちまわればロシアと妥協出来るチャンス
が過去にあったのかもしれませんが、残念ながら結果的には問題を先送りして
きたことが裏目に出そうな気配が強まってきたようです。

 外交というのは、人間関係と同じで、自分の都合ばかりにとらわれず、相手
の状況を見極めて臨機応変に動かないといけないのですね。

渋谷のデモ、大本営発表

先日、ある海外のメディアを見ていたら、大勢の人達が日の丸を掲げてデモ
をしている写真が目に飛び込んで来ました。よく見ると、どうやら先週末に東
京渋谷で、中国に抗議する数千人規模のデモが行われたということです。

 そのニュースは日本のメディアでは見ていなかったことなので、たまたま見
落したのかと思って、ネットで検索してみると、日本の主要なメディアはこの
デモについて全く触れていないことが分かりました。

 このニュース、海外ではそれなりに話題になっているようですが、どうして
肝心の日本でマスコミが報じなかったのでしょうか? その理由は正直なとこ
ろどうでも良いのですが、一つだけはっきりしたことは、どこかに「見えない
大本営」が存在して、その統率によってマスコミがコントロールされているよ
うだということです。(そうでないと今回の事態の説明がつきません)

 日本のマスコミは時として、(例えば小沢氏の事件のように)洪水のような報
道をすることもあるし、今回のように全く無視してしまうこともある。どうや
ら、大本営発表という体質は、戦前のことだけではないようで、今回は「報道
するな」という指令があったのでしょう。

 戦前のニュースは「大本営発表」と初めに堂々と名乗っていた分、まだまし
で、分かり易かったと言えるかもしれません。現在の大本営は一体何者で、何
を意図しているのでしょうか?・・

 日本の住宅は超割安?

 先日、英エコノミスト誌は、世界各国の住宅価格の動向に関して、興味深い
統計を掲載しました。

 各国の過去一年間の住宅価格の上昇率と、住宅価格の割安・割高さについて
です。

 過去一年で、住宅価格が最大に上昇したのはシンガポールで、政府による住
宅ローンの規制緩和の後押しもありなんと40%近い高騰をしていて、香港やオー
ストラリアも20%以上の大幅上昇となっています。

 1997年との価格の比較でマイナスなのは、日本と香港しかありません。日本
はなんと37%も価格が下がっています。

 1997年の香港は英国からの返還が実現した年であり、不動産バブルの絶頂期
だったことを考えれば、世界と比較した日本の住宅の低迷ぶりが際立ったもの
であることが分かります。

 もうひとつ、エコノミスト誌の資料で興味深かった数字は、価格の割高・割
安指標についてです。

 この指標は、長期的なprice-to-rents ratio(価格・賃料レシオ)からの現
在の価格の乖離率を計算したものです。つまり、住宅の賃貸の長期的な平均利
回りと現在の賃貸利回りを比較して、割高・割安を比較するものです。

 FT紙は主要22カ国の数字を比較していますが、この価格賃貸比率で割安と判
断されたのは、日本の▲34.6%、ドイツの▲14.5%、スイスの▲7.0%、それから
米国(全国ベース)の▲6.5%の四カ国だけです。つまり、これらの国々の不動
産利回りだけが、長期的な平均より高いことになります。

 逆に一番割高なのはオーストラリアの61%で、香港とスペインも50%を超えて
います。

 不動産価格22カ国中18カ国で割高にあるという、いわば世界的な不動産バ
ブル的な状況にあって、日本だけは全く例外的な状況にあるわけです。

 賃貸価格からみた日本の不動産の割安さは、J-リートの利回りにも反映され
ており、現在の予想平均利回りは5.5%以上ですが、これは米国のリートの利回
りを上回っています。

 日米の10年債の利回りに、2%近い乖離があることや、住宅ローン金利にはさ
らに大きな乖離があることを考えれば、日本の住宅価格の利回り面での割安振
りはさらに鮮明になります。

 さて、この割安な日本の不動産はいつまで放置されるのでしょうか。

公務員の人件費削減

 日本の消費税引き上げの問題は、予想通り、中長期的な国の姿を真剣に議論
するということでなく、政治家もマスコミも目先の損得と感情に訴えるだけと
いう混とんとした状況になりつつあります。

 マスコミは「目先の視聴率」、政治家は「次の選挙」がすべてに優先し、その
為には「何でもあり」で、長期的な理想を掲げても「食べていけない」という
お国柄では、いたしかたないところでしょうか。

 このような「お国柄」を作ったのは、われわれ国民ひとりひとりの責任でも
あります。

 ところで、国の財政再建の議論をする場合は、どこの国でも歳出削減と増税
の2つの政策がセットです。そのなかでも、普通は「歳出削減」が本当の柱で、
先日の英国の厳しい財政再建策に関してオズボーン財務相は財政赤字削減分の
およそ3/4は歳出削減でカバーすると言っています。

 そして、歳出削減の柱はどの国でも「公務員の人件費削減」です。

 英国では、最近の緊縮政策によって、今後6年間に60万人以上の公務員が職
を失うという予想もあります。

 カリフォルニア州のシュワルツネッカー知事は先日さらに衝撃的な発表を行
いました。カリフォルニア州の職員20万人の給与を、予算が成立するまでの間、
何と国の最低賃金である自給7.25ドルにしろと命じたのです。

 さて、日本の財政問題に話を戻しますと、昨年度の国の税収は約39兆円、国
と地方の税収は36兆円前後が見込まれているようですから、あわせて75兆円
ほどが予想されます。

 一方で、歳出の中に占める人件費ですが、2008年度の数字で、国家公務員が
5.3兆円、地方公務員が24.5兆円で、あわせて30兆円ほどになります。

 これは、表面的な公務員の数字だけで、物件費として扱われる臨時職員や独
立行政法人など準公務員の人件費は入っていないので、(正確な数字は把握でき
ていませんが)実際には、30兆円より遥かに高い税金が直接・間接的に人件費
として支払われています。
 
 このような数字を見ていくと、国民が払う税金のかなりの部分(おそらく半
分前後)が人件費、特に地方自治体の人件費となっていることが分かります。
 
 最近は派手な「事業仕分け」などで独立行政法人の一部は激しい攻撃を受け
ているようです。その手法の是非を議論することはさておき、国全体のあるべ
き財政の姿を議論する上では、一番重要な問題が置き去りにされて、枝葉の問
題ばかりが焦点にされているようにも見えます。
 
 まあ独立行政法人などのデタラメぶりが感情的に許せないというのは、よく
分かりますが・・。
 
 日本の財政再建は、待ったなしの状況です。
 
 政治家もマスコミも国民の感情に訴えて短期的なポイントを稼ごうとするこ
とはほどほどにしておいて、長期的な視点で物事を考えることも必要ではない
でしょうか。
 
 そのためには地方自治体の人件費は、避けては通れない問題ですし、大いに
議論の余地がある問題だと思います。

1450兆円の個人金融資産

 先日、日銀の資金循環統計(速報)が発表され、2010年3月末の個人の金融
資産は1453兆円であることが分かりました。

 個人金融資産が1400兆円とか1500兆円というのは、聞きなれた数字だと思
います。

 1400兆円台を初めて突破したのはIT株ブームに沸いていた1999年末のこと
でした。以来株価の上昇や下落に伴って、一時的に1300兆円台に落ち込んだり、
1500兆円台を突破する局面もありましたが、過去10年以上に渡っておおむね
1400兆円台を推移してきました。(過去最高は2007年6月末の1555兆円)

 言い方を変えると、10年以上ほとんど増えていないとも言えます。

 1453兆円のうち現金・預金が792兆円(約55%)、株式・出資金は103兆円で
たったの7%に過ぎません。あと大きいものでは、年金・保険準備金が393兆円
です。

 これは、米国の個人金融資産の3割以上が株で、年金や投信として間接的に
所有している分も含めると資産の半分以上が株であるのとは対照的です。

 最近はあまり聞かれなくなりましたが「貯蓄から投資へ」という掛け声にも
かかわらず、リスク資産の代表格である株式への個人の投資は全く進んでいな
かったことになるわけです。

 とはいえ、実際には個人の株式投資がある程度進んだ時期があります。2006
年1月のライブドア・ショックの前後までの国内新興株のブーム時と、2007年
夏のサブプライム・ショックの直前までは、個人の株式・出資金の資産額は現
在の倍の200兆円前後まで残高が積み上がっていました。

 今から振り返れば、金融危機は個人の株式投資にやはり大打撃だったようで
す。

 株式保有のピークである2007年6月末から、株価の底値である2009年3月
末までに、個人の株式保有額は60%も減少しています。60%の減少は株価の下落
だけでは説明がつかないので、大きな金額が株から預金等に流出したのでしょ
う。

 一方で、株式の配当利回りは個人の株離れとともに急上昇して、2009年の3
月には東証の加重平均の配当利回りは3%まで上昇しました。これは株式保有額
がピークを付けた2007年6月の3倍の利回りです。(現在の利回りは2%弱です)

 90年代末までは、10年国債の金利と、株の配当利回りでは圧倒的に国債の利
回りの方が上でした。

 現在は、株式はかなりの好利回りであるにもかかわらず、個人投資家を引き
付ける魅力に欠けているようです。

 痛い目にあった、個人の金融資産が再び株にもどるのかどうかは、企業が好
調な業績を出し続けて、株式が誰の目にも魅力的な資産クラスになるかどうか
にかかっているのでしょうか。

官房機密費と日本のマスコミ

 少し前の英エコノミスト誌に興味深い記事があったので簡単にご紹介します。

 記事は“If You pay more than peanuts”という題名で、日光東照宮の「見
ざる、聞かざる、言わざる」をひっかけた”you may get wise monkeys: the
Japanese press ignores a juicy story”という副題が付いています。(wise
monkeyは東照宮のサルの彫刻のことです)

 「日本のマスコミは美味しいネタを無視して、見ざる、聞かざる、言わざる
を決め込んでいる」といった感じでしょうか。

 「美味しいネタ」というのは、官房機密費のことで、歴代の内閣は何十年に
も渡って官房機密費を引き出して、政治的便宜の為に使い、その中にはテレビ
のジャーナリストやテレビの解説者に流れているものもあるそうです。

 官房機密費の存在を初めて明らかにしたのが鳩山内閣で、昨年9月から3月
までの間に3億6千万円を使ったそうです。

 麻生内閣に至っては、総選挙の2日前になって2億5千万円を引き出したそ
うですが、平野官房長官は「国益」の為に、当面はこれらの資金の使途を開示
しないと発言しているそうです。

 それから、90年代に官房長官を務めた、野中広務氏は、官房機密費から毎月
最大で7000万円を支出して、その中には首相に対する1000万円や他の自民党
の幹部たちに対する1000万円が含まれ、それ以外にもマスコミや野党議員にも
ばら撒かれ、一部は彼らの北朝鮮訪問時に散財されたと告白したそうです。

 野中氏はこの事実について「秘密を墓場まで持って行きたくなかった」と語
ったそうです。

 エコノミスト誌は、「埋蔵金」のような秘密口座の存在を明らかにすることを
約束している現政権までもが、このような真っ黒な裏金を使っていることは驚
くべきことだが、それと同じぐらい驚くべきことは、ほとんどの主要のマス・
メディアがだんまりを決め込んでいることと言っています。

 そういえば、この問題に関する記事は、一部のマスコミ以外はほとんど見か
けないような気がします。

 こういう問題にどのように対応するかによって、そのメディアの基本的なス
タンスが分かるのかも知れませんね。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。