グローバルな金融経済の動向を、ユニークな視点を交えてお伝えいたします。

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ジョージ・フリードマンに学ぶ地政学の今

 オバマ大統領はアジア歴訪の日程を終えて帰国の途につきましたが、この
一週間は、世界が再び地政学の時代に戻ったことを、強く認識させられまし
た。
 
 アジアの人々の関心は、東アジアや南シナ海の安全保障に関するオバマの
スタンスにありましたが、欧米のメディアは遠くアジアを歴訪中のアメリカ
の大統領がウクライナ問題にどう対応するのかが気になって仕方がない様子
でした。地政学的な緊張が高まれば、地球の裏側に近い場所での緊張より、
身近な地域での緊張への関心が高まるのが当然です。

 事態の進展のスピードにばらつきがあるものの、欧州とアジアの両方の主
要国間で地政学的な緊張感が同時進行的に高まるのは、第二次大戦以降では
初めての事態ではないでしょうか。地球上の別の遠く離れた場所で一見バラ
バラに動いているように見える出来事が、実は緊密に連動してやがて大きな
うねりに成長して、しばしばその時代の人々を翻弄するようになるというの
が歴史の教えるところであり、しばらくの間は世界の出来事から目が離せな
くなりそうです。

 このような地政学復活の時代に、大変に参考になる本があります。「影の
CIA」とも呼ばれるアメリカの民間情報機関を経営するジョージ・フリードマ
ンの「激動予測(The Next Decade)」(早川書房、2011年)です。日本では
同じ著者の「100年予測」の方が売れて有名ですが、現在の世界の地政学的
状況を包括的に理解するにはこの「激動予測」が最適です。100年予測がや
やSF的な空想も含めた「予測」の書であるのに対し、「The Next Decade」は
予測の書というよりは、むしろ「地政学の現状」の書であり、アメリカが現
在とるべき戦略を示した本であるからです。

 たとえば、ウクライナの情勢については、ウクライナやベラルーシといっ
て国がロシアにとってどれだけ重要な地域であるか、そしてソ連崩壊以来の
アメリカによるロシア封じ込め戦略があり、ロシアはその巻き返しを狙って
いたことを考慮すれば、「ロシアの再浮上」のタイミングで現在のような脅威
が生まれるのは当然のこととして予見されています。
 しかしながら、フリードマンの長期的な視点では、ロシアは人口問題など
のよって弱体化する運命にあり単独でアメリカを脅かすようなリスクはない
と見ているようです。そしてアメリカが心配しなければならないのは、現在
ウクライナで起きていることとは逆に、ロシアがドイツと接近していくこと
であり、それによって欧州のパワーバランスが崩れ、アメリカが欧州から切
り離されることだとしています。
 
 一方、われわれに関心が高い日本と中国のパワーバランスの問題について
ですが、結論から言えば、フリードマンは、ロシアと同様に中国の長期的な
見通しについては懐疑的に見ているようです。これは、中国の経済成長は必
然的にやがて鈍化して、その結果人民解放軍の不満などさまざまな国内問題
に対応せざるを得ないという考え方に基づいています。
 フリードマンがアメリカの本当の脅威になると考えているのは中国でなく
日本であり、日本はやがて「静かで控えめな姿をかなぐり捨てる」という考
え方をもっているようです。ただアメリカの脅威という形に至るのは10年や
20年といった時間軸ではなく、もっと先の話であり、アメリカはそれに備え
て日本と友好的なスタンスを保ち、一方で中国が分裂しないように万全の手
を打つ必要があるとしています。(ちなみに「100年予測」では2050年に日
本が再びアメリカに奇襲攻撃を仕掛けると予測しています。)

 さてフリードマンがこの本を書いてから3年が経過している現時点におい
て、少なくとも表面的には中国のパワーがますます増大しているように見え
る一方で、中国国内のさまざま矛盾はその内部で着実に膨らみ続けているよ
うにも見えます。そうした状況下、中国は対外的には好戦的な姿勢を見せ続
けるために、日本を始めとする周辺国は偶発的なリスクとその延長上にある
より大きなリスクが高まったと捉えて、必然的にそうしたリスクに備えるた
めの準備を進めます。
 一方でオバマ大統領をリーダーとするアメリカが、リップサービスはとも
かくとして、本気で日本や他の同盟国の利益を守るかどうか疑がわしく思わ
れる状況であれば、日本が戦後70年間続けていた受動的な姿勢からの変貌を
始めるのはある意味で自然の流れのような気がします。そういう意味では、
安倍首相は時代の流れの追い風に恵まれた政治家なのかもしれません。

 この先のアジアや欧州の歴史がフリードマンの描いたシナリオ通りに進ん
でいくかどうかは分かりませんが、個人的には、現時点では少なくともひと
つの有力なシナリオのひとつであり、常に頭の片隅において置く価値があり
そうに思われます。ただし、日本がアメリカにもう一度力で挑戦するところ
まで行き着くのは勘弁してほしいものですが・・・。
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ギリシャを巡る報道とギリシャ国民の利益

 今月の半ばぐらいから、ギリシャのユーロ離脱の可能性が突然高まって来たかのような報道がされていて、驚いている方も多いのではないでしょうか。
ついこの間までは多くのメディアでユーロ離脱などという選択肢はないという政治家や学者のコメントばかり報道してきたのに、最近になって突然(ユーロ導入前のギリシャの通貨)ドラクマ復活の準備を進めるロンドンの金融機関のディーリングルームの様子を報道しだしたりするわけですから、その変化の速さに驚かされる方がいても無理はありません。

個人的には、以前に南米などで国家がデフォルトした事例について時間をかけて研究した経験から、通貨の大幅の切り下げによって意外なほど早く経済の活気を取り戻すことができることを知っていたので、危機が発生した当初から、ユーロから離れると言う道も一つの選択肢ではあると思っていました。

 たしか10日程前の英FT紙の記事に、ギリシャ国民にとってこれからだらだらと10年かそれ以上の期間に渡って続くかもしれない緊縮財政を強いられるよりは、当初の痛みが大きくてもユーロを離れる選択肢を検討すべきであるという趣旨の記事があり、次のようなドイツの諺でしめくくっています。「恐怖に満ちた終わりの方が終わりのない恐怖よりまし」であると。

 ただし、このFT紙の「ギリシャはユーロを離脱すべき」と言う率直な意見は、まだまだFTの他の記事を含めたメディアのなかでは少数意見で、これまでの2年半はほとんどすべてのメディアにおいて「ギリシャ国民はユーロを離脱したらとんでもない目に会う」というトーン一色で、これらの報道からはなんとか離脱を思いとどまらせようという意図が感じられます。

 しかし、良く考えてみれば、ギリシャがユーロを離脱した上でデフォルトした場合、銀行などが持っているギリシャの国債がほぼ完全に紙切れになり、さらにスペインなどに飛び火してしまうと、銀行や企業の投資が想像もつかないほど大損するわけですが、被害を被るのは主として欧州主要国の銀行を中心とする産業界です。したがって、欧州の産業界にとってみると、「生かさず殺さず」でもよいからギリシャにユーロ圏にとどまってほしいという強い期待があるわけです。

 大メディアは各国の利権複合体の一部であって、その意向に沿った方向に動くと言うことも世の東西を問わぬことですから、報道などに「ユーロから離脱すれば大変な目に会う」というアピールが強かったことも、当然何らかの作為が働いていると考えたほうが良いでしょう。そして、おそらくギリシャの国民自身もそういった報道に誘導されてきたのではないでしょうか。

 「ギリシャの国民の80%はユーロ圏にとどまることを望んでいる」という報道もそうした意図を感じる報道です。そもそもそんなに多くの国民がユーロ圏にとどまることを、強く望んでいるのならユーロ圏からの離脱の可能性の高い政党には投票するはずはないのですが、実際の選挙ではそれとは逆の方向に向かいつつあるようです。

もちろん、ギリシャ国民にも、ユーロを離脱してしまうと、自分の保有している金融資産が弱い通貨に不利な交換レートで交換させられてしまう可能性など、離脱にはいろいろ心配事があるのは事実でしょう。

 しかしながら、ギリシャがユーロ圏にとどまっている限り、「お札を刷る」権限がない一方で、重税や低い公共サービスに失望した有能な国民がユーロ札の詰まったかばんを抱えて自由に他のユーロ圏諸国に脱出することが出来るという、ユーロの矛盾した制度のままで経済の再生が可能なのか。何よりも、ユーロ圏離脱という選択肢の持つ意味が、国民に公平に伝えられてきたのかは、とても疑問に感じます。

 そうはいっても、ギリシャの政治家や官僚にはユーロ圏をスムーズに離脱する実務能力がなさそうであることも一方の事実であります。危機発生から2年半、危機を克服するどころか国民の痛みが増し続けてしまったギリシャ。これまで、欧州の銀行などの痛みに配慮して、ユーロ圏離脱の選択肢を先送りしたことで、結果として関係者全員の痛みが増しただけだったのですが、もしこのまま、半永久的に「生かさず殺さず」の事態が続けば、それは「鎖につながれたプロメテウス」のようでもあり、本当に現代版のギリシャ悲劇と呼べるかも知れません。

オバマ大統領の選挙資金

 今年はアメリカの大統領選挙の年で、共和党の予備選挙も例によって事前の予想が何度も覆され有力候補が入れ替わり登場するような状況になっています。

 大統領選といえば、前回2008年の大統領選を思い出してみると、当時のオバマ候補はスマートで人々の心をくすぐる演説を行う清潔感あふれるイメージの人物であったことは間違いありません。しかしその一方で、オバマ候補は7億5千万ドルという史上空前の選挙資金を集めていました。

筆者はブッシュ大統領に対する嫌悪感の強さもあってオバマ氏のイメージの良さに期待してしまった人間の一人なのですが、オバマ氏の空前の選挙資金とのギャップにはどうもしっくりきませんでした。

当時は、オバマ氏は5ドル、10ドルといった小口の献金をネットで集めてこれだけ巨額な資金に膨れ上がったといった報道が中心でした。オバマ氏は確かに小口の献金も相当な量を集めたのですが、実際には多国籍企業やウォール街などから集めた資金が大部分で、200ドル未満の献金は全体の1/4に過ぎなかったことが後日判明し、メディアでは小さな扱いしかされませんでしたが、一部で大きな関心を呼びました。

アメリカでは表向きは企業や団体からの直接の献金は規制されていますが、企業経営者が政治活動委員会(PAC)を組織して自発的に献金することは認められ、事実上の企業献金になっているのです。オバマ大統領は、ネットの草の根運動で集金したというイメージを作り上げることに成功したものの、実際にはブッシュ前大統領とほとんど変わらないような企業群からの巨額の資金援助を受けていたのです。

 7億5千万ドルというと、当時の為替レートを110円ぐらいとすると、825億円となります。民主党の小沢元代表の4億円の資金の記載問題が、大問題化されてしまっている状況を考えると、全く想像を絶する世界です。

 アメリカの選挙はどうしてこんなにお金がかかるのか。それは、テレビのコマーシャルを使用するからです。テレビを使った情報戦は近年ますますエスカレートしているようであり、今回の共和党の候補者選びでも、各候補者が巨額の資金を使ってライバルの中傷合戦をするという非常に醜悪な状況になっているようです。

 それまで無名候補であったオバマ氏が、最右翼と言われ続けたヒラリー・クリントン氏に民主党の代表選びで勝利し、一気に大統領にまで上り詰めたのは、大量のコマーシャルを使ったイメージ戦略の勝利と言われています。オバマ氏に献金した企業も、彼のルックスや話術が「使える」と判断した結果、それほどの資金が集まったのでしょう。

前回はジャーナリストの堤未果氏が岩波新書から出した「貧困大国アメリカ」(2006年)をご紹介しましたが、堤氏は2010年1月にその続編となる「貧困大国アメリカⅡ」を出しています。そこでは、オバマ大統領が進めた医療改革で、結局は製薬会社と医療保険会社がますます利益を上げる一方で、中流以下のアメリカ人が一歩間違えるとすぐにホームレスにまで転落してしまう社会であることなどを描いています。

堤氏はオバマ政権発足直後から、オバマ政権の本質を見抜いていたようで、就任後間もなく書いたこの本で、消費者運動で著名な弁護士の次のような言葉を引用しています。「耳ざわりのいいスローガンよりも、七億五〇〇〇万ドルの選挙資金の出所をチェックすれば、就任後の彼の方向性がブッシュ政権の継続になることは火を見るより明らかだ、小口献金は四分の一に過ぎない。見なければならないのは、残り四分の三を占める大口献金リストの方だ」。

 今年のアメリカの大統領選挙、このような視点からのチェックは不可欠かもしれません。

アメリカは変われるのか?(TPP問題に関連して)

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 新年早々なのですが、また筆者の本業が多忙になりつつあり、しばらくの間はブログの更新が不規則になりそうなので、ご連絡しておきます。

 さて、年初に見たブルームバーグ(web版)に印象深いコラムが有りました。数年前まで競ってウォール街への就職を希望していた米国東海岸アイビーリーグの名門校の学生たちの間でウォール街への反乱が起こっているというのです。(「1%層が怒れる若者を説き伏せるための戦略的提言-ルイス」ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LWY2YI1A1I4H01.html

 数年前までウォール街の採用担当者達が簡単に手なずけることが出来た若者達の中から、今や金融機関の悪事のリストを読み上げるものや、「金融機関で働くことが名誉なこと」と言うこれまでのカルチャーを変えると宣言する若者達が現れたというのです。

 99%の人々の反乱は昨年夏からOWS運動として広がったわけですが、この記事によればこれまで「1%の富裕層の卵」だった若者達からも、あまり行儀のよいやり方でなく富を独占する1%層への攻撃が始まったわけです。

 50年代、60年代に日本人が憧れを抱き続けたアメリカの豊かな中産階級がどうして99%の「非裕福層」に落ちぶれてしまったのか。9.11事件を目の当たりにしたことで米国野村証券の職を辞してジャーナリストになった堤未果さんが2006年に岩波新書から出した「ルポ 貧困大国アメリカ」はその問題を考える上で大変に参考になる本です。

 この本は2006年に出版されたものですが、そこで描かれているのは、例えば、90年代に締結されたTPPの前身であるNAFTA(北米自由貿易協定)によって農地と職を奪われたメキシコのトウモロコシ農家の人々の末路です。彼らは政府の補助金を得ているアメリカ産トウモロコシによって農地と職を奪われ、その後、職を求めてアメリカに密入国すると言う運命を辿りました。

アメリカのポップコーン工場で働く密入国したメキシコ農民の娘が自分の立場を皮肉って、次のように発言します。「だってメキシコで私の父親を失業に追い込んだのはアメリカのトウモロコシなんですよ、それで今はその娘がポップコーン工場の床をモップがけしているのですから」と。

こうした貧困層の若者や、高騰を続ける学費により学生ローンが払いきれなくなった若者たちが、そうした厳しい状況から脱出するために最終的に行きつく先は軍隊です。彼らはイラクに送られ、それまでとはまた別の厳しい現実に直面することになります。

これはTPP問題を考える上でも非常に重要なのですが、アメリカではほとんどあらゆる分野で「自由化」や「効率化」という名のもとに、民間企業の利益が優先されるシステムが出来上がっています。

医療の自由化によって保険会社は大きな利益を得る一方で、医療費は跳ね上がり一部の大都市では盲腸の手術に200万円以上かかり、病気によって中産階級層の人が簡単に破産に追いやられるケースもあります。その一方で、株式会社化され極度な利益重視のスタンスをとる病院経営によって現場の医師や看護婦などは疲弊し精神的にも肉体的にも追い込まれ、医療過誤も急増します。

アメリカでは戦争遂行も民営化され、イラク戦争において、ハリバートン社はアメリカ人だけでなく第三国からの出稼ぎ労働者を大量にイラクに送り込み潤いました。いわゆる戦争ビジネスです。

大企業が、ロビー活動によって自己の利益に都合のよいように、パートナー国との間のルールを変えてしまおうというTPPは、堤氏がレポートしているようなアメリカを歪んだ社会構造に変えて来た原動力をそのまま「パ-トナー国」に輸出・拡大しようという戦略にしか見えません。


しかしながら、最初にご紹介したブルームバーグのコラムは、アメリカの内部で企業はどんな手段を使っても利益を上げること優先するという、過去数十年の文化に明確な変化が起こり始めている兆しがあることを示しているのかもしれません。

近年のアメリカのビジネス中心の路線が多くの人々の生活をこれほど破壊するのであれば、大きな変化が起こるのは必然と言えるかも知れません。

 昨年はこうした大きな変化というか、人々の心の化学変化が非常に明確になった年でした。そして、今年はその流れが一段と大きなものとなるのでしょう。

ギリシャの現状は日本の若者の未来?

 ギリシャ問題で経営破たんしたデクシア銀行は、日本ではあまり知られていませんでしたが、サブプライム・ショック以前は十分な資本と良質な資産を保有する、非常に優良な銀行であると思われていました。

 ベルギー・フランス系銀行のデクシアは、国や地方自治体、それに公的機関などのローンや債券を保有するのがその役割であり、5年ほど前には、そうした資産は事業法人に対する融資と違って、リスクは極めて限定的であると多くの人達が考えていたからです。

 しかし、サブプライム・ショックが起きたことから状況は一変します。デクシアは本体だけでなく、米国に保有する金融保証保険会社(モノライン)を通じてサブプライム関連の資産を大量に保有したことが発覚したからです。

このサブプライム・ショックに端を発した金融危機が2年前にドバイ・ショックへ、さらにギリシャ問題に飛び火して、欧州の周縁国の債券の価格が大幅に下落を始めたときには、すでにデクシアは実態的にはかなりまずい状況に陥っていたと思われます。

もともと、国や政府機関(ソブリン)部門のリスクをとるというビジネス・モデルであったわけですから、欧州のソブリン危機の拡大の影響に直撃されることは、ほとんど自明のことであったと言えます。

しかしながら、その実態は、トレーディング勘定ではきちんと評価するもの、銀行勘定でもつ債券の時価評価を回避するという、欧州の金融当局がとった方法によって、しばらくのあいだは隠され続けることになります。実際のところ、7月にEU内90行に対して行われたストレス・テストにデクシアは余裕で合格しています。その時点で不合格だったのは8行だけでした。

 どうも欧州の金融当局は、金融機関の危機が拡大することを避けるために、何度も「ストレス・テスト」と称して、はじめから破綻させても世の中にインパクトの少ない金融機関を決めて、それらだけが不合格になるようなテストを行っていたのではないかと言う疑念が湧きます。

 デクシアの経緯をみていると、筆者は1998年に破綻した長銀のことを思い浮かべずにはいられません。長銀もデクシアも、政府の強い肩入れのもとで
普通の銀行とは違うビジネス・モデルを持っていました。
 
どちらも長い間大変に優良な銀行であると信じられていましたが、時代の潮流のなかで手を出した不動産関連のビジネスでつまずき、その後当局が事実上の破綻を隠そうとしましたが、ついに隠しきれなくなって破綻したという運命が、とても似ているように思えるからです。

 バブル崩壊後、日本の当局の問題先送り体質が世界的に非難されました。しかし、こうして見ていくと、官僚や政治家の抜本的な対処能力の欠如は日本だけに限らないようです。

 役人や政治家は基本的には、その時々の自分の置かれた環境のなかで、「現実的」に選択可能な選択肢しか選べないのです。現実的な選択肢のなかから最良の方法を選ぼうとするのは、一握りの良心的な人達だけで、多くの役人や政治家は、選択可能で「自分自身にとって」一番利益のある方法を選ぼうとします。

 はじめから結論ありきの手続きで、自分の利益になる政策を選択する手法は原発行政のなかでも日常茶飯事であったことが次々と明らかになってきています。

 日本や欧州はそうであっても、アメリカは違うという声も聞こえそうですが、決してそんなことはありません。リーマン・ショック後の対応も、対応可能な部分に手を付けただけで、問題の規模が大き過ぎる不動産融資はほとんど手つかずで先送りされているように見えます。

 さて、前置きが非常に長くなってしまったのですが、今回言いたかったことは実は日本の年金問題です。少し前に日本の年金受給開始年齢を70歳まで延長する案を厚労省が出したと報道されています。

 日本の年金制度は、危機発生前のギリシャ政府と同様で、団塊の世代までは永続性のない制度の上で先にお金を浪費している状態です。今、ギリシャで起こっている緊縮財政や暴動は、ほとんど確実に日本の若い世代にふりかかってくるでしょう。

 少し長くなってしまったので、続きはまた後日書くことにします。

ウォール街のデモの仕掛け人

 ウォール街を占領しろ「Occupy Wall Street」という若者達のデモがますます拡大し、毎日のように、「シカゴに伝染」「ワシントンDCに伝染」などと、全米の主要な都市へ拡散する様子が連日のように伝えられています。

 このデモの動きに対しては、「明確な主張がない」「リーダーがいない」などの指摘が主要なメディアから流されています。

 実はメディアが、こうした報道を行うのは、ある背景があるようです。

 9月の中旬に「Occupy Wall Street」運動を最初に企画して人々に呼びかけたのはエストニア出身でカナダ在住のジャーナリスト、カレ・ラースン(Kalle Lasn)氏、69歳です。70年代にカナダに移住する前は東京に在住していました。カナダの非営利雑誌「アドバスターズ」の創業者です。

 9月17日に最初のデモが企画されましたが、そのデモのポスターは、猛牛の上でスリムなバレエダンサーが踊っている絵に「WHAT IS OUR ONE DEMAND?」と書かれた何やら謎めいたものであったからです。
Occupy Wallstreet

 ラースン氏がカナダのオンライン・メディア「The TYEE」のインタビューに応じたものが最近掲載されましたが、このあたりの事情について非常に興味深い説明をしています。

 ラースン氏の言葉はかなり難解な部分もあるのですが、どうやら彼らが目指すことは、自分自身でこの運動の方向性を示すのではなく、運動に賛同する人々が集まり、集まった人々自身がどんなことを要求すべきかを熱心に議論することを促そうとしているようです。

 ラースン氏達の呼びかけは人々のいわば触媒的な役割を果たすもので、人々に「Meme(ミーム)」を植え付けるという表現をしています。ミームとは「文化を形成する様々な情報であり、人間の間で心から心へコピーされる情報(wikipediaより)」だそうです。こうした手法をとることによって、人々の心理のより深い部分に働きかけをしようとしていると語ります。

 要は何か魔法のような目に見えない心理的な伝達力で、人々に化学的な作用を起こさせ、人々が自分たちで新しい道を探すことを期待している、という感じでしょうか。

 そういう意味では、デモがどこに向かうのか、まだまだ魔法の影響を受けた人々の間で議論が始まったばかりであり、そんなに簡単に明確な方向性が見つかっていないのは当たり前の状況なのかも知れません。

 現在、デモはラースン氏の予想を遥かに超える勢いで拡大し、今月15日でには、ヨ―ロッパにおいて、初めてのデモが計画されているそうです。さらに11月3日、4日のG20の会合時には、数百万人規模が集まることもあり得るという期待まであるそうです。

 そうなると、最近中東で起こったような奇跡的な出来事がアメリカにも起こりレジーム(政治形態)が変わるという事態の可能性も否定できないような状況になってきたと、ラーソン氏は考えているようです。

もちろん、アメリカはチュニジアやエジプトなど中東とは状況が全く異なり、残忍な独裁者が支配しているわけではありません。しかしながら、議会へのロビー活動によって権力を振るって来た一部の大企業や組織が、ある意味でアメリカをコントロールし続け牛耳ってきたとも言えます。ラースン氏は、何らかの形でこのレジームを変化(regime change)させなければならないと主張します。

 さて、このウォール街占拠運動が、これからどのような道を歩むのか、どこかで内紛が起きて分裂するのか、それとも雪だるまのように膨れ上がって本当に社会を変えるような地点まで到達するのか、今の時点では何とも言えません。

 しかしながらラースン氏の考え方を読む限り、「Occupy Wall Street」の機運が、少なくとも当面の間は現在のアメリカの一部の金持ちグループが牛耳る企業に支配されている現実に不満を持つ大多数の庶民の心の奥深くを刺激し続けるように感じられます。

 きっと多くの日本人が現時点で想像している以上に大きな機運に発展していく可能性が、高いのではないでしょうか。

世界規模の金融バブル崩壊現象

 皆様お久しぶりです。本日からブログ復活です。

 筆者にしては珍しく、メルマガを書いている時間もないほど忙しかった夏が過ぎ、最近は少し余裕が出て来ましたが、気がついてみると世の中が大きく動いていました。

筆者が本業で忙しかった理由は、国内外の金融機関が、目先の業績改善のためにまた、担当者が巨額のボーナス獲得に目が眩み暴走して引き起こした事件を検証するような仕事を、なぜか立て続けに依頼されたからです。

そのような事件の検証作業を続けて強く感じたことは、リーマンショック前の数年間の金融界は、目の前にぶら下がったボーナスというニンジンに食らいつく為には、相当ひどいデタラメもためらわなかった人達が、地球上のあちこちに現れた時代であったということです。

もちろん金融界の大多数の方々はそうした不届き行為に直接的に関与しているわけではないのでしょうが。しかしながら、個々の具体的な事例を見ていくと、カネ中心で何でもありの病気がここまでひどい症状を引き起こすのかと驚かされます。

サブプライム住宅ローンの証券化に対するデタラメなどは、金融危機の引き金を引いたのと、規模が大きかったことから、その具体的な手口が本や報道で広く暴露されました。しかし、サブプライム・ローンの問題はそうした時流のなかで、たまたま世間に広く知られることになった現象の一つに過ぎず、他にも表面化しない無数の事例があるのでしょう。

先月中旬、全国銀行協会の永易会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は金融ADR(紛争解決制度)の和解あっせん手続きの申立件数が今年4~6月は115件に達したことを明らかにしたと報道されています。金融ADRは、金融商品の販売などに関するトラブルを裁判外で対処するためにちょうど1年前にスタートした制度です。

 大手を中心とする国内のいくつかの銀行は、リーマンショック前の時期を中心にかなりリスクの高い為替デリバティブ取引を、銀行にとって非常に有利な条件で取引先の中小企業などに販売し大きな社会問題になっています。
 こうした背景からADRの申請件数が、制度発足後急増を続けているのです。

 国内の金融機関でもこのような暴走があったわけですが、日本の金融機関の場合は個人のボーナス獲得というよりは、組織全体の業績改善に対する焦りが、常識的な感覚を鈍らせてしまったのでしょう。

 それにくらべると、個人の業績がそのままダイレクトに個人のボーナスに反映される海外の金融機関のデタラメは国内の金融機関とはけた違いであったのかもしれません。ウォール街の金融機関は、最近洪水のような訴訟に見舞われていますが、先月米住宅金融局(FHFA)が17の金融機関対して2,000億ドル(約15兆円)の住宅ローン担保証券に関する訴訟を起こして、その訴訟規模に対するどよめきを生みました。

 筆者はこの訴訟の明細に関する知識はなく、これから訴訟がどういう展開になるのか全く見当もつきませんが、少なくともこうした規模のデタラメがどこかで本当に行われていても全く不思議でない時流に、数年前のウォール街があったことは疑っていません。

数週間前にウォール街で始まったデモは日に日に規模を拡大し、著名な投資家ソロス氏までが、この抗議運動に理解を示していると伝えられています。

 今年の夏以降、ロンドン、アテネで起きている暴動は、ウォール街に対するデモのように金融界をターゲットにしたものではありませんが、現在の欧州の厳しい経済的混乱の遠因をつくるのに金融のレバレッジ機能が大きな役割を果たしたことは否定できないし、それはデモに参加している多くの人々が感じていることでもあるでしょう。

 筆者自身も長年、金融市場やデリバティブに関連する仕事で生きて来ました。こうした金融の役割は社会にとって必要で役に立つ機能であるとは信じていますが、金融はしばしば暴走し、社会に甚大な影響を与えてしまうようです。

 どうしたら、金融市場やデリバティブ商品がこのような負の側面を弱めて、社会に本当に定着させることが出来るのか。これは、金融界の課題でもあり、筆者自身の課題でもあります。
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